top photo:©(一社)松本市アルプス山岳郷
01【WHAT】上高地ってどんなところ?
長野県松本市にある、日本を代表する山岳景勝地。年間120万人を超える観光客や登山客が、絶景を求めてこの地を訪れます。気ままに散策を楽しんだり、本格的な登山に挑戦したり、宿に泊まって星空を堪能したりと、さまざまなスタイルで大自然を満喫できます。
上高地エリアに入れるのは、例年4月中旬~11月15日。春のオープン時期は県道の上高地公園線の開通日によって前後するため、訪れる際には公式サイトをチェックしましょう。
02【WATCH】何が見られる?
上高地には、雄大な山々をはじめ、美しい池や湿原、川の清流などさまざまな絶景スポットが存在します。その上、天気や訪れる時間帯によってもガラリと表情を変えるため、見飽きることがありません。まずは、はじめての上高地という方にぜひ訪れてほしいスポットやおすすめルートをご紹介します。
河童橋
上高地のシンボルでもある〈河童橋〉。橋の上からは穂高連峰や岳沢、梓川、反対側には焼岳を望める絶好のビューポイントです。上高地バスターミナルからのアクセスもよく、橋周辺は土産物店やレストラン、ホテルが並んでいて観光客でにぎわいます。絶景を眺めながらソフトクリームを食べるのもおすすめ。
穂高連峰
上高地の至るところから望める雄大な山稜が〈穂高連峰〉。見る角度によって違う一面を見せるので、何度も写真におさめたくなることまちがいなし。日本を代表する岩壁がそろう〈穂高連峰〉は、アルピニストの憧れでもあります。
大正池
焼岳と穂高連峰を湖面に美しく映し出す神秘の池〈大正池〉。1915年の焼岳の噴火で泥流が梓川をせきとめてできたこの池は、訪れる時間によってまったく異なる表情を見せます。もちろん晴れた昼間も美しいですが、おすすめは早朝と夜。雨上がりには幻想的な朝もやと、満天の星を楽しめます。上高地に訪れたら一度は見てほしいスポットです。
田代湿原〈田代池〉
大正池から15分ほど歩くと、突然視界が開けて現れる田代湿原〈田代池〉。原生林のなかにぽっかりと空いた湿原に広がる池は、幻想的な雰囲気に包まれています。季節によって四季折々の彩りを楽しめるのもポイント。氷点下になる季節には、霧氷に包まれた木々が美しい銀世界の輝きを見せます。
岳沢湿原
河童橋を渡り、梓川の右岸を明神方面に15分ほど歩くと現れる〈岳沢湿原(だけさわ・しつげん)〉。原生林に囲まれた小さな湿原で、透明感あふれる清らかな湧水は、日が射すほどに青さを増して息を呑む美しさです。そのため、光が射し込む朝方に訪れるのがおすすめ。展望ウッドデッキでぜひ記念写真を。
明神池
針葉樹に囲まれた神秘的な池〈明神池〉。透明感あふれる水面には澄み渡った空が映り、昔は〝鏡池〟と呼ばれていたそう。明神一帯は、明神岳をご神体とした〈穂髙神社〉奥宮の神域で、パワースポットとしても知られています。神聖な空気が漂うこの地には、植物や野鳥の種類も多くゆっくりと散策を楽しめます。
はじめての上高地観光におすすめしたいのが、1時間~2時間ほどの簡単ウォーキングコース。普段着で、無理せずに自然を楽しめます。
1.大正池~河童橋コース(1時間10分程度)
大正池バス停→〈大正池〉→田代湿原〈田代池〉→〈田代橋〉→〈河童橋〉→上高地バスターミナル
交通機関をつかって上高地のエリアに入り、大正池のバス停にて下車。
上流の〈河童橋〉にむかって歩くコース。はじめての上高地という方にもおすすめ。
前方に上高地を代表する山岳美〈穂高連峰〉を眺めながら歩けます。
2.河童橋~明神池コース(2時間程度|行き70分・帰り60分)
上高地バスターミナル→〈河童橋〉→梓川(右岸)→〈岳沢湿原〉→〈明神池〉→梓川(左岸)→上高地バスターミナル
交通機関をつかって上高地のエリアに入り、上高地バスターミナルで下車。
徒歩5分のところにある〈河童橋〉から、梓川の右岸を通って〈明神池〉を目指すコース。
〈明神池〉までは行き帰り徒歩のみなので、もう少ししっかり歩きたいという方におすすめ。
小川のせせらぎを聞きながら木道を歩き続けると、神秘的な明神エリアに。〈明神池〉のほとりには〈穂高神社〉があり、拝観料500円で入れます。帰り道には、〈明神岳〉や対岸にそびえる〈穂高連峰〉を別角度から望めます。
04【HOW 02】人気の楽しみ方は?
ガイドブックを持ちながら自由に散策をするのはもちろんのこと、ほかにもさまざまな楽しみ方があります。事前に知っておくと、上高地で過ごす時間がさらに楽しくなるアイデアをご紹介します。
ガイドウォークで上高地をより深く知る
上高地を知り尽くしたプロガイドがスポットや植物、鳥などについて解説しながら案内をしてくれる「ガイドウォーク」があります。参加するとより深く上高地を知ることができます。上高地ビジターセンターのほか、各ホテルでもガイドウォークを実施。実施時間が異なるので、当日の日程や行きたいスポットに合わせて選びましょう。
大自然のなかでキャンプを楽しむ
国立公園内には、絶景を眺めながら楽しめる3つのキャンプ場があります。初心者におすすめなのは、〈小梨平キャンプ場〉。〈穂高連峰〉を前方に眺められるロケーションながら、バスターミナルから10分とアクセスも良好。お風呂や食堂、キャンプ用品のレンタルなど設備も整っているので、快適にキャンプを楽しめます。
外来入浴でさっぱりする
散策で汗をかいたら、外来入浴で温泉に入るのもおすすめ。〈上高地ルミエスタホテル〉〈 上高地温泉ホテル〉の2か所では、天然温泉が楽しめます。アクセスは、どちらも田代橋・穂高橋から徒歩5分。外来入浴できる場所はほかにもありますが、まずは天然温泉をチェックしてみては。
05【FOOD】どんなグルメが味わえる?
たくさん歩く上高地では、腹ごしらえできるお店を押さえておくのも大切なポイント。ホテルなどの宿泊施設内に、レストランや食事処、喫茶店とさまざまな飲食店があり、どこも予約不要でふらっと立ち寄れます。長野県の名物である山賊焼きやりんごをつかったスイーツ、そばなどが人気。澄んだ空気のなか、絶景を眺めながら楽しむ食事やスイーツは格別です。
上高地食堂
始発のバスで朝早く到着したらここへ。上高地観光センターの2階にある〈上高地食堂〉は、朝7時から営業。信州サーモンや信州豚など地元の食材をつかった種類豊富な定食メニューをお手頃価格で楽しめます。カッパの顔がかわいい、上高地名物のたい焼き風スイーツ「河童焼き」も要チェック!
グリーンポット(上高地西糸屋山荘)
腹ペコになったら、上高地西糸屋山荘の食堂〈グリーンポット〉へ。河童橋から徒歩2分という立地ながら、にぎわいからはなれて静かで穴場的な食堂です。カレーなどの定食メニューの他、山賊焼き定食やおやきセットなど信州らしい食事も楽しめます。カツカレーの大盛は「かなり大盛」なので、おなかいっぱい食べたい方におすすめ!
中の湯蕎麦(中の湯温泉旅館)
創業120余年の中の湯温泉旅館で食べられるのは、信州の味・そば。当日挽きたて・打ち立てにこだわった職人手作りのそばは、香りがよく、コシやツヤも段違い。上高地エリアからは少し外れるものの、知る人ぞ知るそばの名店なので、自然のなかでおいしいそばを食べるならここがおすすめ(数量限定のため前日までの予約が必要。繁忙期・週末は提供できない日もあり)。
トワサンク(THE PARKLODGE上高地)
河童橋の近くにある〈THE PARKLODGE上高地〉の食堂に併設されたカフェテリア〈トワサンク〉。ここではお土産としても大人気の「信州完熟りんごのアップルパイ」をはじめ、信州素材をつかったスイーツやドリンクが楽しめます。上高地の風を感じられるオープンテラスもあるので、梓川を眺めながらゆっくりと休憩してみては。
カフェ・ド・コイショ(山のひだや)
ユーモア溢れるネーミングの〈カフェ・ド・コイショ(Cafe' do Koisyo)〉。もともと食事処を営んでいた先々代のおじいさんが「どっこいしょのおじいちゃん」と親しまれていたことに由来するのだそう。人気メニューはオリジナル焙煎ドリップコーヒーと日替わりスイーツ。〈明神池〉のほとり、〈穂高神社〉の近くにあるお洒落なこのカフェで疲れを癒しましょう。
06【STAY】宿はどうしたらいい?
上高地エリアには宿泊施設が充実しており、旅館・ホテル・山荘・ロッヂなどさまざまな宿泊スタイルが選べます。 宿選びに重要なのは、なんといってもロケーション。散策の行程に合わせて、宿泊場所を決めるとよいでしょう。
もちろん快適さや便利さも大事なポイントですが、せっかく上高地に泊まるなら、普段の生活とは違う体験ができる宿を選んでみるのもおすすめです。
朝起きた時に見たい景色で選ぶ
上高地の朝は、一日のなかで最も澄んだ空気と景色を楽しめる時間帯です。そのため、「朝起きた時にどんな景色を見たいか」で選ぶのもおすすめ。〈大正池〉の朝もやや、澄んでより美しく見える〈穂高連峰〉など、見たいスポットに近い宿泊施設を選ぶと、上高地で泊まる醍醐味を味わえます。
あえて不便さを楽しめる場所を選ぶ
上高地の宿泊施設のなかには、バスターミナルから長距離を徒歩で行かなければいけない宿泊施設もあります。ですが、上高地に来たらその不便さも、ぜひ楽しみたいところ。たとえば、徳沢方面はバスが通っていないため、バスターミナルから2時間歩きます。そのぶん喧騒をはなれ、静寂のなかの大自然を楽しめます。
お気に入りの宿を探す
せっかく上高地に来たなら、宿でも思い切り非日常感を味わえるところに泊まるのも良いかもしれません。眺望テラスのあるデラックスな客室で思いっきり贅沢するのもよし。自家発電のため夜9時には消灯する宿でのんびり考えごとに耽るもよし。登山客が多く泊まるロッジで交流を楽しむもよし。自分だけの楽しみ方を見つけましょう。
07【ACCESS】都内からのアクセスは?
都内から上高地に訪れる場合、「車」「公共交通機関」「直行バス」の3つの交通手段があります。
マイカーでの来訪需要が高まっている上高地。しかし、「通年マイカー規制」など上高地ならではのルールもあります。
それぞれのメリットやデメリットを確認しながら、出発前によく計画を立てることがおすすめです。
マイカーで行く
上高地は自然保持のために「通年マイカー規制」をしているため、上高地エリアに車で入ることはできません。 そのため、国道158号線沿いにある沢渡(さわんど)駐車場に駐車し、そこからはバス(通常1時間に2本)またはタクシーに乗り換える必要があります。
沢渡(さわんど)駐車場~上高地バスターミナルまでのバス運賃
大人片道1,300円(往復割引運賃2,400円/大人1名)
※小学生は半額
バスの所要時間は約25分。GWやお盆などの連休はバスが混み合うので、満席の場合は次の便を待ちます。
釜トンネルと上高地トンネルを抜けると一気に標高が上がり、上高地らしさを感じられます。目の前に大正池や穂高連峰がどーんと現れる感動を味わえるのも、このバスの醍醐味です。
公共交通機関で行く
都心からは公共交通機関を利用する場合は、新宿発の特急あずさ、高速バスなどを利用して松本市まで行き、さらにバスや電車を乗り継いで上高地へと向かいます。
しかしJR松本駅から上高地の玄関駅、新島々駅まで続く上高地線は本数が限られていて、季節によってもダイヤが変わります。乗り継ぎの時間も計算しつつ、事前にしっかりと計画を立てましょう。
直行バスで行く
新宿や東京からは、都心と上高地を結ぶ直行バスが1日1~3本程度出ています。 本数は少ないものの、乗り換えをせずに上高地バスターミナルまで連れて行ってくれるので、ラクに移動したいという方にはおすすめです。利用する場合は、必ず事前予約しましょう。
08【STYLE】どんな服装で行くのがいい?
上高地の標高は約1,500m。山に囲まれているので天気の急変が多く、寒暖差も激しいため、服装や持ち物選びは重要です。通年を通して、動きやすく着脱しやすい服装と歩きやすい靴はマスト。サンダルやヒールはケガの原因にもなりますので避けましょう。
朝晩・日中の寒暖差が激しく、小さくたためるフリースやダウンジャケットを持っておくのがおすすめ。夏でも天候や場所によっては肌寒く感じられます。紫外線予防の面でも、ウィンドブレーカーなどの薄くて着脱しやすい羽織りを一枚持っておくと安心です。
上高地を楽しむための必須アイテム
・羽織り
気温差が激しいため、着脱しやすい羽織りを。暑くなったら小さく畳めてリュックにポンと入れられる薄くて軽いタイプがおすすめ
・雨具
折りたたみ傘は必須。さらに、上下セパレートタイプのカッパまたはポンチョがあれば理想
・帽子
上高地は標高が高いため、紫外線が強い。日差しを遮る帽子は必須
・水筒
たくさん歩くので、水分補給はこまめに
もし服装に迷った場合は、上高地インフォメーションセンターや上高地ビジターセンターにお問い合わせを。事前に、上高地の今の気温やおすすめの服装を教えてくれます。
09【TIPS】上高地では野生動物に会える?
上高地エリア内には、猿をはじめ、ツキノワグマやアナグマ、カモシカ、野ウサギ、おこじょ、野鳥などさまざまな野生動物が生息しており、運がいいと遭遇できるかもしれません。
とくに猿は、群れごとに常時食べ物を探しながら渡り歩いているため、かなり高い確率で見られます。
しかし、彼らは野生の動物。エサをあげるのはNGですし、むやみに近づくと威嚇されたり、食べ物を取られたりすることもあります。野生動物であることを忘れず、適切な距離を保ちながら観察を楽しみましょう。
上高地インフォメーションセンターや上高地ビジターセンターでは「野生動物との付き合い方」のアドバイスや情報提供をしています。散策前に知っておくと、より上高地を深く知ることができるかもしれません。
10【PICK UP】上高地の最新ニュース
上高地エリアの最新ニュースをお届けします。
1.少人数制ガイドウォーク
少人数なので質問もしやすく、よりじっくりと散策を楽しめます。
2.野生動物レクチャー「上高地のクマ」
上高地内でツキノワグマに遭遇した時の対処法を教えてくれる講習会。ほぼ毎日上高地ビジターセンターでおこなわれています。入場無料。主に小梨平キャンプ場の宿泊客を対象にしていますが、一般客も参加OK。クマの生態を知ることができるチャンスです。
上高地の最新情報は、公式サイトもぜひチェックしてみてくださいね。
おわりに
はじめての人でも、毎年訪れるリピーターの人でも、マナーを守れば誰でもやさしく受け入れてくれる懐の深い上高地の大自然。せわしない都会の喧噪をはなれ、ひたすらに荘厳で神秘的な景色と対峙した時、何か大切なものに気づくかもしれません。一度訪れればきっと、あなたも上高地の魅力にどっぷりはまってしまうでしょう。
文:むらやま あき