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『長野県プロスポーツ応援ツーリズム』Vol.4「男女2つのチームをもつプロサッカーチーム〈AC長野パルセイロ〉のホーム観戦のススメ」

長野県内には、サッカー、フットサル、バスケットボール、3x3、バレーボール、野球などさまざまな種目のプロスポーツチームがあり、県内各所に各スポーツの選手たちが戦う姿を生で観戦できるホームスタジアムやアリーナがあります。

今回は男女サッカーの〈AC長野パルセイロ〉を紹介します。男子は3部に当たる『明治安田J3リーグ』、女子はトップカテゴリーに当たる『WEリーグ』で戦っています。国内屈指の観戦環境を有するチームの成り立ちから観戦の楽しみ方まで、掘り下げてお届けしましょう。

※この記事は、2024年2月29日時点における情報をもとに制作しています。

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TOP PHOTO:©️2008 PARCEIRO

男子チームはJ2昇格を目指して

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長野Uスタジアムでのホームゲーム。タフでスピーディーな戦いを繰り広げ、勝利に向かって突き進む。©️2008 PARCEIRO

1990年、長野市を中心とした北信地方の高校OBを中心に、『長野エルザSC』が発足しました。2007年には商標登録の関係から新たなクラブ名を公募し、現行の〈AC長野パルセイロ〉に改名。ACは『Athletic Club』の略で、パルセイロはポルトガル語で『パートナー』を意味します。アスレチッククラブと名のあるように、実はサッカーだけでなく、バドミントンクラブアイスホッケーチームもあるんです。

サッカーチームは長野県リーグから北信越リーグ、JFL(日本サッカーリーグ)と階段を上り、2014年にJリーグ入会を果たします。新設されたJ3で2位の成績を残しながらもJ2・J3入れ替え戦に敗れ、1年での昇格はならず。その後もJ2を目指して挑んでいますが、あと一歩のところで逃してきました。今年で11年目のJ3。チームの目標は言わずもがな、悲願のJ2昇格です。

スピーディーに仕掛ける戦い 信州ダービーにも気迫示す

今季のチームを率いるのは、髙木理己監督。昨季途中に就任し、攻守にアグレッシブなサッカーを掲げています。攻撃となれば前線に人数をかけて、スピーディーに仕掛けていきます。守備でも球際での激しいバトルが見られ、エンターテイメント性の高いサッカー。J3リーグのチームを指揮するのは3クラブ目で、同カテゴリーを熟知していることも強みと言えるでしょう。

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チームを率いる髙木理己監督。高校サッカーの名門・市立船橋高校でプレーした。Jクラブでの監督業はガイナーレ鳥取、FC今治に続いて3チーム目。©️2008 PARCEIRO

そんな指揮官が率いるチームで、注目してほしいのは地元出身者たちです。今季は藤森亮志選手、山中麗央選手、小西陽向選手、三田尚希選手、鈴木悠太選手、GKリュウ・ヌグラハ選手の6人。このうち山中選手、小西選手、鈴木選手の3人は、クラブのアカデミー育ち。山中選手はエースナンバーの背番号10を背負い、攻撃の中心として期待されています。

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昨季から背番号10を背負うMF山中麗央選手。地元出身のアカデミー育ちで、橙色の魂を燃やしながら奮闘する。©️2008 PARCEIRO

そしてクラブの象徴的存在と言えるのが、14番の三田尚希選手。在籍5年目のベテランで、ここまで毎年のようにチーム得点王を記録しています。今年はプロキャリア初となるキャプテンに任命され、より一層の責任感を抱いている様子。その左足から描かれる放物線に、ぜひ注目してみてください。

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象徴的な存在とも言えるMF三田尚希。青森山田高校時代は元日本代表MF柴崎岳(鹿島アントラーズ)とチームメイトで、寮も同部屋だった。©️2008 PARCEIRO

一年で最も盛り上がる試合は、なんといっても信州ダービー。松本市にある松本山雅FCと火花を散らします。地域リーグ時代から激闘を繰り広げてきた両者。歴史を紐解けば、それぞれが本拠とする長野市と松本市は、長野県と筑摩県の県庁所在地にありました。しかし第2次府県統合によって筑摩県は長野県に吸収され、長野市が県庁とされたのです。そういった歴史的背景も絡み、このダービーには日本有数のバチバチ感があります。

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盛り上がりを見せる信州ダービー。スタジアムはほぼ満員となり、地域のプライドをかけた試合に大きな声援が飛ぶ。©️2008 PARCEIRO

2022年にJリーグで信州ダービーが初開催。〈AC長野パルセイロ〉のホームゲームには13,244人の大観衆が集い、ホームゲームならびに長野Uスタジアムの最多入場者記録を更新しました。松本でのアウェイゲームにも15,912人が訪れるなど、J3というカテゴリーの範疇を超えています。いまや日本を代表するダービーの一つと言っても過言ではありません。22年〜23年の通算対戦成績は、天皇杯を含めて長野の2勝1分3敗。今年も負けられない戦いとなることは間違いありません。

臨場感たっぷりのスタジアム グルメも盛りだくさん

ホームゲームは長野Uスタジアムで行われます。15,491人収容のサッカー専用スタジアム。スタンドとピッチの距離が近く、臨場感があります。四方に屋根がついており、応援が反響して響く上、雨に濡れる心配もありません。クラブカラーであるオレンジと紺に仕立てられたスタンドも色鮮やか。国内有数の観戦環境と言えるでしょう。

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長野Uスタジアムの試合前ピッチ内練習。スタジアムグルメとドリンクを楽しみながらキックオフを待つのも楽しい時間。©️2008 PARCEIRO

スタジアムグルメも豊富にあります。ご当地メニューとしては、『なから』の信州きのこ煮かけそばと、『食パン道 広徳店』のふわふわ牛乳パンがおすすめ。前者はサポーターが集うJR長野駅近くの居酒屋で、後者はスタジアム付近に構える人気の食パン専門店です。ぜひ店舗にも立ち寄ってみてください。

ガッツリと食べたい方には、『酒膳処おお井』のマンガ盛り焼きそばがおすすめ。自家製のニンニクダレを決め手として、器からはみ出るほどの大盛りとなっています。SNS映えすること間違いなしです。そのほかにも地元のお店を中心に、当日しか味わえないグルメが並ぶこともあります。事前にホームページでチェックしておくのも良いかもしれません。

観戦グッズも充実しています。定番と言えるのは、やはりタオルマフラーです。その種類も豊富で、どれを買うか迷ってしまうかも。首にかけておくのはもちろんですが、試合前には“出番”が訪れます。選手入場時に歌われる応援歌『Sky』に合わせて、スタジアム全体がタオルマフラーを振り回します。サポーターの一人になった気分で、力を貸してみてください。

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熱心なサポーターの皆さんが集まる『ゴール裏』と呼ばれるエリア。チャント(応援歌)を歌い、旗を振ったりタオルマフラーを掲げたりしてチームを後押しする。©️2008 PARCEIRO

また、オレンジに光るペンライトもあります。ナイトゲームを盛り上げるには欠かせないグッズです。特にクラブマスコット『ライオー』の形にデザインされたアクリルペンライトは、子どもにも人気。お子さま連れの方は、観戦の記念としても購入するのもありでしょう。

試合前の選手紹介時には、名物MCであるポリさんが登場してサポーターを盛り上げます。信州ダービーの際には、相手側を煽る言動も。とにかくテンションの高いポリさんを見れば、試合に向けた高揚感が増すはず。そして勝利した後は、選手たちがチャントに合わせてシャナナ(ラインダンス)を披露します。お祭り男の杉井颯選手が盛り上げる姿は必見です。

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勝利した後の一幕。選手たちがゴール裏に来て挨拶し、ラインダンスを踊ります。杉井選手は中心的な盛り上げ役。©️2008 PARCEIRO

チケットは当日にスタジアムで購入することも可能ですが、事前に『Jリーグチケット』で抑えておくのがおすすめ。リーグが運営するチケット販売サイトで、当日価格よりも500円オトクに手配できます。初めての方はホーム自由席を購入し、比較的空いているバックスタンド2階で観戦するのが安心です。より応援を近くに感じたい方、または一緒になって応援したい方は、ぜひ1階に行ってみましょう。

序盤に触れたように、チームの目標はなんと言ってもJ2昇格です。J3は年々レベルが上がってきていますが、実力は拮抗しており、どのチームにも昇格の可能性があります。群雄割拠のリーグを勝ち抜けるため、〈AC長野パルセイロ〉は『PRIDE OF NAGANO』というスローガンのもと、長野の誇りを胸に戦い続けています。その姿をぜひ目撃してください。

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©️2008 PARCEIRO

女子チームはさらなる上位進出へ

〈AC長野パルセイロ〉には男子チームだけでなく、女子チームもあります。前身は大原学園JaSRA女子サッカークラブ。 2009シーズン終了後にAC長野パルセイロの女子チームとして移管され、〈AC長野パルセイロ・レディース〉が誕生しました。2015年には『なでしこリーグ2部』で優勝。当時の女子サッカーの最高峰である『なでしこリーグ1部』に昇格したが、2020年に再び2部へと降格します。

しかし5年ぶりの2部リーグを戦う最中、翌年に開幕する日本初の女子プロサッカーリーグ『WEリーグ』への参入が決定。男子チームとともに、女子チームもプロとして活動することになりました。開幕から2シーズンは、いずれも11チーム中7位。2部リーグから参入したことを踏まえれば、十分な健闘と言えるでしょう。

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2021年に開幕した女子プロサッカーリーグへと参入。男子チームと同様にタフな戦いを繰り広げ、2年連続で中位に食い込む。©️WE LEAGUE

新監督の元でアグレッシブに 県内出身者も主力で活躍

そして、3シーズン目となる今季。廣瀬龍新監督を迎え、攻守にアグレッシブなサッカーを貫いています。目標はこれまでの2シーズンで記録した7位を超えること。チーム数が12に増えたことから、決してハードルは低くありませんが、開幕から5試合で2勝2分1敗と好調な滑り出しを見せました。Jリーグと違って昇降格がなく、よりチャレンジングに戦える側面もあります。

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国内外での指導経験が豊富な廣瀬監督。直近ではカンボジア代表の監督を務め、元日本代表FWの本田圭佑GM(ゼネラルマネージャー)と共闘していた。©️2008 PARCEIRO

地元出身者も多数所属しています。伊藤有里彩選手、風間優華選手、中村恵実選手、川船暁海選手、伊藤めぐみ選手、稲村雪乃選手の6人です。このうち川船選手はクラブのアカデミー出身で、高校3年生から飛び級で出場していました。チームを取りまとめるのは、キャプテンの伊藤めぐみ選手。年代別日本代表の経験を持ち、21歳の若さにしてリーダーを任されました。

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諏訪市出身の伊藤めぐみ選手。150cmと小柄ながら、ピッチ上ではキャプテンとして大きな存在感を放つ。©️2008 PARCEIRO

個性豊かな選手たち 女子ならではの見やすさも

ピッチ内外で注目を集める選手もいます。筆頭として挙げられるのは、在籍7年目の三谷沙也加選手。Instagramでの投稿が反響を呼び、たびたびYahoo!ニュースにも取り上げられています。昨夏にはファンクラブも開設。ピッチ外の姿も印象的ですが、ひとたびピッチに立てば“体力お化け”と言われるほどに走り抜きます。そのギャップも彼女の魅力の一つと言えるでしょう。

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三谷選手は最古参の7年目。Instagramのフォロワー数は2万人を超えており、発信力でもチームを牽引する。©️2008 PARCEIRO

また、タイ代表選手が2人いるのも特徴です。今季から加わったタニガーン・デーンダー選手(通称マイ)とナッタワディ・プラムナーク選手(通称エム)。タニガーン・デーンダー選手の兄であるティーラシン・デーンダー選手は、かつてサンフレッチェ広島で活躍しました。昨冬にはタイ国籍選手としてWEリーグ初ゴールを記録。兄妹そろって日本のプロリーグでのタイ国籍初得点者となっています。

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スウェーデンと中国でもプレー経験のあるタニガーン・デーンダー選手。おとなしい性格だが、異国への順応は早い ©️2008 PARCEIRO

試合は男子チームと同じく、長野Uスタジアムを舞台としています。2階席の開放はなく、1階席のみ利用可能です。応援は男女共通のものに加えて、女子チームオリジナルの曲も。ファン層もやや異なり、また違った空気感が流れています。観客数や出店数は少ないですが、その分だけ落ち着いた雰囲気で試合を楽しめることでしょう。

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男子チームと同様、勝利後にはラインダンスで盛り上がる。格上が多いリーグにおいて、一つでも上の順位を目指して戦う。©️2008 PARCEIRO

それはプレーのスピードにも言えることです。男子と比べて女子はスピードがゆったりしており、逆に言えば見やすさがあります。そのためサッカー初心者にも戦術・戦略が把握しやすく、導入にはうってつけ。とはいえ、対戦相手にはなでしこジャパンの選手も所属しており、ハイレベルな攻防が見られます。“トップ3”と称される三菱重工浦和レッズレディース、INAC神戸レオネッサ、日テレ・東京ヴェルディベレーザとの対戦は特に見逃せません。

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小澤寛選手(左)が対峙するのは、三菱重工浦和レッズレディースの安藤梢選手(右)。2011年のワールドカップ優勝メンバー。©️2008 PARCEIRO

男子チームと女子チームの試合が両方楽しめるのは、〈AC長野パルセイロ〉の大きな魅力です。男子は2月下旬から12月上旬まで、女子は11月中旬から5月下旬までとシーズンが異なることから、いずれかがオフシーズンの期間も観戦することができます。土曜日、日曜日と男女とも連続して行われることもあるので、サッカー三昧の週末という選択肢も。週末はぜひ長野Uスタジアムに足を運んでみませんか。

*長野Uスタジアムへのアクセスは、JR長野駅からJR篠ノ井線・しなの鉄道を利用してJR篠ノ井駅下車。試合当日はシャトルバスも運行されています(片道300円・小中学生は150円)。30分ほどで長野Uスタジアムに到着可能です。

〇AC長野パルセイロ公式ウェブサイト
https://parceiro.co.jp/

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©️2008 PARCEIRO


構成:田中 紘夢、松元 麻希 取材・文:田中 紘夢

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