発酵カフェレストランを深掘り!
<HAKKO OOSHIKA~Sauce Labo~>
大鹿村を見渡す山上から地域の新基軸となる風を興す
山上約1,500mに位置する大池高原の村有施設に、現代らしいデザイン性のあるカフェレストランがオープン。手掛けたのは、『合同会社風の谷の大鹿』の2人。共に大鹿村出身の30代です。代表社員の松澤莉央さんは、ブルーベリー農家出身。専門学校、製菓店、飲食店で修業を重ね、大鹿村に戻ってきました。長野県職員である北澤 淳さんは、「僕らが子どもの頃と比べると、人口が半減しています」と危機感を抱いていました。共に大鹿村を盛り上げたいと思っていたふたり。タイミングと縁が重なり、一緒に起業することになりました。
レシピ開発を行っている松澤さんは、「大鹿村の伝統野菜である中尾早生大豆(なかおわせだいず)を使用した大鹿味噌など、地域に根付いた発酵文化をカフェレストランが提供することで、気軽に村の特産を知ってもらう機会につながると思いました」。そんな思いがあり、発酵食品をテーマに 「HAKKO」の名前を付けることになったといいます。
店名の“Sauce”には、発酵食品をはじめ地産地消のさまざまな食材の「ソース=Sauce」と、また帰ってきたくなるような、自分軸を戻しに来る場所になって欲しいという「原点・起点・源=Source」という二つの意味が込められています。
こうして、大鹿村の新しい起点となりうる場所が生まれました。山から村に吹き始めた新しい風に、地元の人たちからも「期待している」という声が聞こえています。
〈HAKKO OOSHIKA~Sauce Labo~(はっこう おおしか そーすらぼ)〉
長野県下伊那郡大鹿村鹿塩2459-1。TEL050₋-8883-8368。金、土、日、月曜のみ営業。ランチ 11時~14時30分(L.O.)、カフェ(金土祝前日)11時~16時(L.O.)、カフェ(日月)11時~15時(L.O.)。中央道松川ICから車で約1時間
☞https://www.instagram.com/hakko_ooshika/
Googleマップ
*現在、当施設は冬期休業中です。
循環型の営みを伝える店
<農家カフェBAU>
自家農場の牛肉と地元野菜の料理をセルフビルド(自作)のログハウスで
どこか異国情緒も感じるログハウス。オーナーの紺野香糸さんが、家族や仲間と一緒に11年かけてセルフビルドで作った農家カフェです。大鹿村出身の紺野さんは、東京や関西で暮らし、海外で1年2ヵ月バックパックの旅を経て、大鹿村に戻ってきました。「フランスでオーベルジュを手伝ったり、各国で触れた伝統食材やその土地ならではの料理が印象的でした」。いつしかそんなお店を開くことが夢となり、2020年、念願叶ってお店をオープン。特徴は、食材に弟さんが経営する実家の牛農場の牛肉を使っていること。紺野さんも毎日餌やりを手伝っています。野菜は、自分で栽培し、足りない分は、近所の農家さんから仕入れています。紺野さんは、自ら手をかけた食材と、生産者の人となりがわかる食材を選び、丁寧に調理することで大鹿村ならではの風土を感じる料理を提供しています。
〈農家カフェBAU(バウ)〉
長野県下伊那郡大鹿村大河原1836-1。TEL090-9354-7784。11時30分~15時 ※金、土曜のみ営業。ディナーは予約制。
☞https://bauooshika.wixsite.com/cafe
☞https://www.instagram.com/noukacafe.bau/
Googleマップ
地域の食文化を編む
<するぎ農園 Soba and Dutch Coffee>
移住して20年。大鹿村で出会い感動した里の味を伝え続ける
その昔、『駿木城(するぎじょう)』という山城が建っていた山の中腹、標高1,000mにある食事処。どっしりとした構えの建物には、囲炉裏や縁側があり、ふるさとを訪ねたような安心感を与えてくれます。2003年に神奈川県から移住してきた風間光太郎さんと紀子さん夫婦。この建物に出会ったことをきっかけに2004年に開店した。「大鹿村に来て、何を食べても美味しかった。村の人たちに教えてもらった味を伝えたいと思ってきました」と光太郎さん。自家製と村産のそばをブレンドした手打ちそばを中心に、摘み草や山菜の天ぷら、地大豆の豆腐やおから、鹿肉など、大鹿村の大地の恵みを料理に生かしています。風間夫妻が教えてくれる大鹿村の味に出会いにいきませんか。
〈するぎ農園 Soba and Dutch Coffee(そば あんど だっち こーひー)〉
長野県下伊那郡大鹿村鹿塩1208-7。TEL0265-39-3008。11時~15時。火・水曜休 ※12月~4月上旬は冬季休業。中央道松川ICから車で約1時間。
☞http://www.osk.janis.or.jp/~kindosan/
Googleマップ
*現在、当施設は冬期休業中です。
移住者がつなぐ地域の文化
<南信州大鹿村 塩の里直売所 sol-ka>
大鹿村の魅力が詰まった直売所を繋ぎたくて、移住3年目に事業継承
観光客や地元民から親しまれてきた直売所。特産のブルーベリーや天日干しのはざかけ米、『山塩館』で作られる幻の山塩、野菜や果物など、大鹿村の食べ物の魅力が詰まった場所。2020年、閉店のお知らせを受けました。「直売所は、村の伝統を感じられる場所。どうにか残したいと思いました」。京都府出身の廣庭みのりさんは、地域おこし協力隊として大鹿村に移住。当時は6次産業の加工品開発を担当していました。そして契約終了後に『sol-ka(ソルカ)』を起業し、2021年3月から直売所を継承。「生産者、観光客、地元の人との関係性を繋ぐ場所にしたい」という思いで、人との交流を大切に活動を続けています。
〈南信州大鹿村 塩の里直売所 sol-ka(ソルカ)〉
長野県下伊那郡大鹿村鹿塩364-1。TEL0265-39-2282。9時~16時。木曜休。中央道松川ICから車で約45分。
☞https://shionosato.jp/author/sol-ka2282shionosato/
Googleマップ
撮影:佐々木健太 取材・文:田中聡子
<鹿塩温泉 湯元山塩館>でウェルビーイングな“塩=ソルト”文化に触れる
弘法大師伝説や謎めいた言い伝えの“鹿塩の七不思議”から、“村全体がパワースポット”‟300年以上続く大鹿歌舞伎”など、独特の歴史文化を有する長野県の秘境・大鹿村。中でも“幻の塩”と呼ばれる山塩(やまじお)が、当地文化の基幹となり、温泉や食を媒介に村内外に伝わってきました。今回、山塩を守り、作り続ける発信地を取材。そこで見えてきたのは“ウェルビーイングの聖地”という大鹿村の姿でした。
山から湧き出す太古からの贈り物「山塩」
“世にも珍しい「塩の湯」が湧く温泉旅館”として、温泉通にも知れ渡る<鹿塩温泉 湯元 山塩館>。1日2トン相当の塩分が流れてゆくというその名も塩川沿いに佇む、山に囲まれた隠れ宿です。明治6年に製塩事業で岩塩を掘り始め、明治25年に温泉として開業したとのこと。現在、5代目の平瀬定雄さんは、「2万年以上前の純粋な塩水が、地底7,000mから湧き出ています。海から遠い信州の山の中に湧く温泉なんです」と、唯一無二の温泉旅館を守り、山塩文化を伝えています。
<鹿塩温泉 湯元 山塩館>では、“幻の塩”と呼ばれ、村内だけで流通する山塩を作り続けています。鹿塩温泉の源泉を旅館の敷地内に併設した製塩所で朝から夕方までじっくりと煮込み、塩を精製。熟練を必要とする職人仕事で、井戸から組み上げた塩泉を平釜へ移し、薪を足しながら火加減を見計らう地道な作業。しかし、塩泉からは3%程度しか塩は採れないそう。‟塩じい”の愛称で親しまれる4代目の平瀬長安さんが、「大鹿村へ買いにきてくれる人が増えて、村の活性化につながってほしい」との思いで20年以上に渡り作り続けてきました。
大鹿村の食材を山塩が引き立てる、地産地消の醍醐味
5代目の平瀬定雄さんは、山塩を生かした一皿を自ら腕をふるって提供しています。一番人気は、地元猟師が仕留めた野生鹿をじっくり低温で焼き上げるロティー。ひと口食べると山の香りのような野趣味が広がり、じわりと赤身肉の深い味わいが押し寄せます。そして、粗めに仕上げた山塩の柔らかくて上品な塩味がその旨味を一層引き立ててくれます。定雄さんは、必要以上の手を掛けずに地元食材をその土地で味わってもらうことを信条に、四季折々の山菜やきのこ、野菜、はざかけ米など、滋味あふれる村の食材を取り入れています。
横浜出身の定雄さんは、約30年前に奥さまの実家であった<鹿塩温泉 湯元 山塩館>を継ぐことを見据えて大鹿村に来ました。「今でも、毎日の風景に感動します。大鹿村の資源、資産の価値を伝えていきたいです」と話します。ジビエ文化を広げるべく、自ら村民を対象にジビエ料理や猟の講習を主導したことも。「村のおばあちゃんたちも鹿肉のロティーが焼けるんですよ」と嬉しそうに伝えてくれました。
塩文化が取り巻く大鹿村のウェルビーイング
大鹿村の山塩文化は、建御名方命(たけみなかたのみこと)が見つけたという伝説が残り、太古の昔から伝わるもの。歴史を受け継ぎ、現在も塩を基軸に展開する<鹿塩温泉 湯元 山塩館>の取材から見えてきたのは、地域の土壌や風土の上にこそ、成り立ち広がる文化でした。地域の資源を尊み、活用し、豊かに生きる。ここにあるのは、持続的なウェルビーイング=幸福・健康・社会が満たされている状態そのものでした。ぜひ、その一端を感じに、大鹿村におでかけください。
〈鹿塩温泉 湯元 山塩館(かしおおんせん ゆもと やましおかん)〉
長野県下伊那郡大鹿村鹿塩。TEL0265-39-1010(9時~21時)。中央道松川ICから車で約0分。
☞https://www.yamashio.com/
Googleマップ
撮影:佐々木健太 取材・文:田中聡子
<著者プロフィール>
田中 聡子(Satoko Tanaka)
長野県出身。出版社勤務を経て、2012年独立。京都・大阪で編集者、ライター、ディレクターを経験。2017年冬に夫と2男児とともにUターン。ふるさと伊那谷での暮らしを気に入っている。関心ごとは、家族、庭仕事、森、ダイエット。ローカルメディア『伊那谷ふぃーる』運営。
https://inadani-feel.com
長野県大鹿村の自転車観光がオモシロイ3つの理由
日常だけでなく、旅先の移動手段としても活用されることの多い自転車。旅においては、小回りが利くことも利点のひとつですが、風を全身で感じられること、ほどよく身体を動かせることで、旅の満足感や達成感を高められるのも大きな利点でしょう。長野県大鹿村では、自転車を活用した新しい旅の形を実践できる仕組みが整いつつあります。ここでは、そんな大鹿村の自転車観光の魅力や最新情報を、3つの魅力に絞ってお届けします。
Point1.村内の2つの拠点でe-bikeのレンタルが可能
南アルプスに包まれている大鹿村は、約670~2,000mと標高差があり、起伏に富んでいることが大きな特徴です。そんな大鹿村の〈道の駅 歌舞伎の里大鹿〉で、電動アシスト付きの自転車『E-バイク』をレンタルできる有料サービスが始まっています。
ヘルメットや防具は無料で借りられるうえ、基本的な乗り方を観光協会のスタッフに教わることができるので、初心者や体力に自信がない人でも安心。2023年以降は、村内にある〈南信州大鹿村 塩の里直売所 sol-ka(そるか)〉でもレンタルが始まるので、コース選びの幅がさらに広がること間違いなしです。
〈レンタサイクル〉
スポーツタイプ 4時間2,000円、1日3,500円/マウンテンバイクタイプ 4時間3,500円、1日5,500円/問い合わせ:0265-39-2929(大鹿村観光協会)
*現在、自転車のレンタルは冬期停止中です。
〈道の駅 歌舞伎の里大鹿〉
長野県下伊那郡大鹿村大字大河原389。TEL:0265-39-2929。9時~17時 (観光案内所) 。12月中旬~3月中旬は水曜定休、年末年始定休(観光案内所)。
※道の駅は年末年始定休。
☞https://kabukinosato.com/outline/
Googleマップ
〈南信州大鹿村 塩の里直売所 sol-ka(ソルカ)〉
長野県下伊那郡大鹿村鹿塩364-1。TEL. 0265-39-2282。9時~16時。木曜定休。
☞https://shionosato.jp/
Googleマップ
Point2.車の交通量が少ないため走りやすい
長野県内で、王滝村に次いで2番目に人口密度が低い大鹿村。大鹿村歌舞伎の公演日など特別な日を除けば、道路の交通量はとても少ないため、のびのびとサイクリングを楽しめるのが大きな魅力です。排気ガスも少ないので、清々しい空気を身体いっぱいに取り込みながら、心地よいサイクリングを堪能できます。
Point3.コースが多彩でさまざまなレベルの人が楽しめる
大鹿村は起伏に富んでいて、絶景、土地環境、グルメといったさまざまな切り口において魅力的なスポットが村内に点在し、あらゆるレベルの人がサイクリングを楽しむことができます。なかでもイチオシの3コースを紹介しましょう。
おすすめコース①道の駅 歌舞伎の里大鹿~大西公園~農家カフェBAU(ばう)【走行距離4.8km 獲得標高76m 所要時間 約40分】
道の駅発着で気軽に巡れる、初心者向けコース。大西公園の園内から大鹿村を一望できる。桜が咲き誇る春がとくにおすすめ。大西公園から農家カフェBAUに下り、ひと休憩しよう。(提供:大鹿村村役場、大鹿村観光協会 ※1~3枚目)
〈農家カフェBAU(ばう)〉
長野県下伊那郡大鹿村大河原1836-1。TEL090-9354-7784。11時30分~15時 ※金、土曜のみ営業。ディナーは予約制。
☞https://bauooshika.wixsite.com/cafe
☞https://www.instagram.com/noukacafe.bau/
Googleマップ
おすすめコース②道の駅 歌舞伎の里大鹿~夕立神パノラマ公園【走行距離22.9km 獲得標高926m 所要時間 約120分】
標高1,620mの公園を目指す健脚向けコース。天候に恵まれれば、中央アルプスに沈む夕日を眺められる。展望台入口には、中生代のジュラ紀に造られた噴出物、緑色岩の露頭も。(提供:大鹿村村役場、大鹿村観光協会)
おすすめコース③塩の里直売所~HAKKO OOSHIKA~伝説の大池【走行距離20.8km 獲得標高797m 所要時間 約100分】
こちらも標高約1,500mまで登る健脚コースで、たどり着いた先には、水面に針葉樹の木々が映り込む神秘的な風景が広がる。近くに絶景カフェ〈HAKKO OOSHIKA~Sauce Labo~〉があるので、帰りに立ち寄ろう。(提供:大鹿村村役場、大鹿村観光協会 ※1~3枚目)
〈HAKKO OOSHIKA~Sauce Labo~(はっこう おおしか そーすらぼ)〉
長野県下伊那郡大鹿村鹿塩2459-1。TEL050₋-8883-8368。金、土、日、月曜のみ営業。ランチ 11時~14時30分(L.O.)、カフェ(金土祝前日)11時~16時(L.O.)、カフェ(日月)11時~15時(L.O.)。中央道松川ICから車で約1時間
☞https://www.instagram.com/hakko_ooshika/
Googleマップ
NEWS!来年度からはジオを学べるガイドツアーも実施予定
いま、自転車を楽しむフィールドとして非常に高いポテンシャルをもつ大鹿村では、来年度に向けて、塩の里直売所におけるe-bikeのレンタルサービスや、ジオの解説付きのサイクリングガイドツアーが実施できるよう準備が進められています。ひと味違った体験や感動を求める方は、ぜひご注目ください!
大鹿村観光協会
☞http://ooshika-kanko.com/index.html
☞https://www.instagram.com/ooshikamurakankou/
撮影:佐々木健太、松元麻希 取材・文:松元麻希
<著者プロフィール>
松元 麻希(Maki Matsumoto)
鹿児島県生まれ。転勤族のため、物心ついたときから高校生になるまで、全国を転々とする生活を送る。都内の雑誌出版社で9年間修業した後、フリーランスライターとして独立。2017年にスキー好きが高じて長野県松本市へ移住し、現在は南アルプスと中央アルプスの麓・伊那谷で暮らしながら、アウトドアやグルメを中心としたライター業に励んでいる。
閲覧に基づくおすすめ記事