【長野】おすすめ低山10選
登山初心者でも登りやすく、おすすめなのが標高の低い山=低山。山岳県の長野県には、3000m級の山だけでなく低山もたくさんあります。
長野県内の低山含め、285山340コースをまとめた『信州山歩き地図Ⅰ~Ⅳ』(信濃毎日新聞社)の著者であり、元長野県警察山岳遭難救助隊長の中嶋豊さんに聞いた、長野県のおすすめ低山をまとめてご紹介します。どの山も比較的短時間で登れ、素晴らしい展望を楽しめますよ。
top photo:キムラ タクヤ
北信のおすすめ低山
虫倉山(むしくらやま)・長野市
【標高】1378m
【総歩行時間目安】上り1時間40分、下り1時間10分
【登山口】長野市中条御山里 不動滝 ※冬場は「虫倉山道しるべ」から徒歩プラス片道30分
※不動滝コースの場合
虫倉山は長野市西部の中条地区にそびえる低山で”信州百名山”に指定されています。地域のシンボルとして定着し、中条地区は”むしくらの里”と呼ばれています。登山ルートは5つありますが、初心者でも問題なく登れる「不動滝コース」がおすすめ。登山口には名勝「不動滝」があり、秋には見事な紅葉を見ることができます。
虫倉山の沢にはサンショウウオが生息しているので、沢の石をそっとずらして探してみてください。登山道には東屋などの休憩スポットもいくつかあり、そこからの景色も抜群。登山口から1時半ほどで山頂に到着し、360度のパノラマビューが楽しめます。
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長野県の“低い山”に登ってきた
初心者にもおすすめ!冬の低山登山は想像以上に面白い
登山口から車で20分ほどの所に日帰り入浴ができる温泉施設「やきもち家」があるので、温泉で汗を流すのもおすすめ。かやぶき屋根の古民家を利用した建物が中条地区ののどかな原風景に調和しています。「道の駅中条」では、ササで包んだ「笹おやき」やシカやイノシシなどのジビエを使った加工品などが手に入ります。レストランも併設されているので、登山後の食事やお土産選びに利用できます。
☞やきもち家の詳細はコチラ
☞道の駅中条の詳細はコチラ
雁田山(かりだやま)・小布施町
【標高】759m
【総歩行時間目安】周回3時間30分~4時間
【登山口】小布施町雁田 すべり山登山口
※すべり山登山口⇋岩松院周回コースの場合
山容が“ガン(雁)が羽を広げたように見える”ことが山名の由来となっている低山・雁田山。山の南側の斜面は採石場として削りとられ、遠くからでも目立つ低山です。
スキーやスノーボードのジャンプ練習施設「小布施クエスト」近くにある「すべり山登山口」から山頂までは1時間程度と手軽に低山ハイクが楽しめます。景色を眺めるなら山頂から15分ほどの場所にある展望園地がおすすめ。東屋がある展望園地からは、小布施の町並みや北信五岳(飯綱山、斑尾山、黒姫山、妙高山、戸隠山)、北アルプスの山々など低山とは思えないほど素晴らしい展望が広がります。
途中には「大城」と「小城」からなる山城もあり、当時の面影を残す石垣を見ることができます。
小布施町は、葛飾北斎が最晩年に創作活動を行った地。雁田山の麓にある古寺「岩松院」では、葛飾北斎が死の前年に描いた天井絵「八方睨み鳳凰図」を見ることができます。
“栗の町”としても有名な小布施町は、600年以上前から栗の栽培がされてきました。栗おこわや栗菓子などが町内のさまざまな店で手に入るのでお土産としてもおすすめです。
☞小布施町についてのおすすめ記事はコチラ
鴨ヶ嶽(かもがたけ)・中野市
【標高】688m
【総歩行時間目安】上り1時間、下り45分
【登山口】中野市中野 日本土人形資料館北側
鴨ヶ嶽を含む「東山公園」は市民の散歩コースとして親しまれ、登山道も良く整備されています。日本各地の土人形を収蔵展示している「日本土人形資料館」北側にある登山口から、標高500mの「七面山」を経て、1時間程度で登れる低山。
山頂には、戦国時代北信濃の豪族・高梨氏が築いた山城(鴨ヶ嶽城)跡があります。切り開きからは中野市街や山ノ内町の町並みが一望できます。
鴨ヶ岳の北側には標高695mの箱山がそびえ、鴨ヶ嶽と併せて“低山縦走”も可能。3~4時間で周遊できます。
※鴨ヶ嶽城の詳細はコチラ
鴨ヶ嶽は短時間で登れるため、周辺観光と組み合わせるのがおすすめ。東山公園では春は桜、初夏にはアジサイなどが咲き誇り、花の名所としても知られています。中野市にはバラの名所もあり、別名「バラ公園」と呼ばれている「一本木公園」では5月下旬ごろから約3000株のバラが楽しめます。野菜や果物などの農産物の生産が盛んで、市内には果物狩りができるスポットもあります。
☞東山公園の詳細はコチラ
☞一本木公園の詳細はコチラ
東信のおすすめ低山
太郎山(たろうやま)・上田市
【標高】1164m
【総歩行時間目安】上り1時間15分、下り40分
【登山口】上田市山口 表参道口
※表参道コースの場合
太郎山は上田市の北側にそびえる低山。“上田市民の山”として親しまれ、家族連れや遠足など多くの市民が登り、上田市のシンボルとして定着しています。トレッキングコースはいくつかありますが、「表参道コース」と「裏参道コース」がおすすめ。登山道は住民などの手によって丁寧に整備されているので歩きやすく、危険箇所もほとんどありません。
山頂付近には「太郎山神社」が鎮座し、大きな赤い鳥居などが立っています。太郎山神社の裏側を回り込み少し進めば山頂。広くて気持ちの良い山頂からは、上田市街や八ヶ岳連峰、北アルプスなどの山並みを見ることができます。低山ですが天気などの条件が合えば遠く富士山も望むことができます。
登山口は上田市街から近いので、「上田城」を中心に城下町の街歩きなどを楽しむのもおすすめです。飲食店も多く、すりおろしたニンニクが入った醤油ベースのタレを焼き鳥にかけていただくご当地グルメ「美味(おい)だれ焼き鳥」が味わえる店も市内には数十店舗あります。
☞上田城についてのおすすめ記事はコチラ
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独鈷山(とっこさん)・上田市
【標高】1266m
【総歩行時間目安】上り1時間40分、下り1時間20分
【登山口】上田市前山 虚空蔵堂
※不動滝コースの場合
独鈷山は“信州の鎌倉”と呼ばれる塩田平の南にそびえる山で、信州百名山に指定されています。東西に長く、ノコギリの刃のように急峻(きゅうしゅん)な山容をしていますが、比較的短時間で登れ、山頂からの展望が良いことから県外からも登山者が訪れる人気の低山です。
登山道はよく整備され、立て看板もいたるところに設置されています。一部急坂やロープ場がありますが、どのコースから登っても1時間半程度で山頂に到着します。
山頂は360度の展望が楽しめ、槍ヶ岳や穂高連峰などの北アルプスの山並みや美ヶ原方面、浅間山などの景色が楽しめます。
塩田平一帯は、鎌倉時代から室町時代にかけて造られた国宝や重要文化財、県宝などが数多く点在しています。日本最古の温泉地の一つとして知られる別所温泉も登山口から近いため、下山後に外湯めぐりをするのもおすすめです。
※独鈷山は滑りやすい場所や痩せ尾根など一部危険箇所があります。無理な行動はせず、十分注意して登山をしてください。
中信のおすすめ低山
光城山(ひかるじょうやま)・安曇野市
【標高】911.7m
【総歩行時間目安】上り1時間、下り40分
【登山口】安曇野市豊科光
光城山の登山口へはJR篠ノ井線「田沢駅」からも徒歩でアクセスでき、車だけでなく電車を利用しても登れる低山。危険箇所がほとんどなく、登山初心者や子どもでも手軽にハイキング感覚で登ることができます。
山頂からは安曇野市街を一望でき、その先に常念岳や餓鬼岳、燕岳などの北アルプスの展望が広がります。山頂にはかつて「光城」という山城が築かれ、城跡のほか“火の守り神”をまつる「古峯神社」があります。
登山道には約1500本の桜が植えられ、例年4月中旬ごろから見頃を迎えます。麓から山頂に向かって開花していく様子は龍が天に昇っていくように見え「登り龍」とも言われています。
▼光城山についてはこちらの記事もおすすめ▼
【長野で低山登山】
桜のお花見登山にもおすすめ
「光城山」「長峰山」に登ってきた
往復2時間程度で登れる低山で、登山の前後に周辺観光を組み合わせるのがおすすめ。例えば、わさび畑を散策しながら、わさびを使ったスイーツやグルメを味わえる「大王わさび農場」や子ども連れにおすすめの絵本の美術館「安曇野ちひろ美術館」など。「穂高神社」は安曇野のパワースポットとして人気です。
☞安曇野エリアの観光スポットについてはコチラ
鷹狩山(たかがりやま)・大町市
【標高】1156m
【総歩行時間目安】上り1時間10分、下り55分
【登山口】大町市大町 大町山岳博物館
江戸時代にタカ(鷹)の幼鳥を捕獲して飼育し、松本藩に献上していたことから名付けられた鷹狩山。地元小学生の遠足でもよく利用されている低山で、JR大糸線「信濃大町駅」から2時間、「山岳博物館」からだと1時間程度と手軽に登れます。
山頂まで舗装道路が通じているので車で行くことでもでき(冬季通行止め)、グリーンシーズンはレストランも営業しています。山頂には展望台が設置され、大町市の町並みと北は白馬岳から南は常念岳まで北アルプスの山並みが一望できます。
日中だけでなく、朝日に染まる北アルプスや夕日、夜景などの景色も人気です。眺望の良さから「恋人の聖地」としてハート型のモニュメントが設置され、プロポーズの名所としても有名です。
☞鷹狩山の詳細はコチラ
登山口にある山岳博物館では、北アルプスを中心とする自然や登山の歴史について学ぶことができます。附属園では北アルプス周辺で見られる動植物が展示・保護され、ニホンカモシカやライチョウなどが飼育されています。
☞大町山岳博物館の詳細はコチラ
南信のおすすめ低山
高烏谷山(たかずやさん)・伊那市/駒ヶ根市
【標高】1331m
【総歩行時間目安】上り1時間、下り50分
【登山口】駒ケ根市 高烏谷神社
※高烏谷神社コースの場合
伊那市と駒ヶ根市の境にある高烏谷山は、伊那谷を挟んで中央アルプスと相対する位置にそびえる低山です。伊那市側から登るコースと駒ヶ根市側から登るコースがあり、伊那市側のコースだと20分ほどで登ることができます。
駒ヶ根市側の登山口にある「高烏谷神社」は1829年に造営されたもので、参道にはアカマツが立ち並び、樹齢300年を超える木もあります。
山頂は小公園のようになっており、高烏谷神社奥宮や石碑、東屋などがあります。伊那谷の町並みを一望でき、その先に中央アルプスの大パノラマが広がります。
☞高烏谷神社の詳細はコチラ
駒ヶ根市のご当地グルメといえば「駒ヶ根ソースかつ丼」。ご飯の上に千切りキャベツを敷き、その上に甘辛味のソースにくぐらせたカツを乗せた丼。ボリューム満点なので登山後の食事にピッタリです。
伊那市側から登った場合は、桜の名所として有名な「高遠城址公園」に寄るのがおすすめ。桜の季節だけでなく、秋の紅葉など四季折々の景色を楽しめます。
☞高遠城址公園の詳細はコチラ
風越山(かざこしやま)・飯田市
【標高】1535m
【総歩行時間目安】上り2時間55分、下り1時間30分~2時間
【登山口】飯田市丸山町4丁目 押洞登山口 (ゴルフ練習場が目印)
※押洞コースの場合
飯田市内のほぼ全域から山容を見ることができる風越山は、学校の遠足や家族連れなどで登る人も多く飯田市のシンボルとして愛されている山です。登山ルートは複数ありますが、「かざこし子どのの森公園」を経て山道に入るルートが一般的です。
信州百名山の一つにも指定されている低山で、山頂付近には国の重要文化財に指定されている「白山社奥社本殿」が建っています。
山頂からの展望は望めませんが、1400m付近にある展望台からは眼下に飯田市街や天竜川、遠くに南アルプスの景色が楽しめます。
山腹から山頂付近までは、長野県の天然記念物に指定されている「ベニマンサク」が群生し、秋には鮮やかな紅葉が見られます。
飯田市は焼き肉店が日本一多い街として有名です。市内にはさまざまな焼き肉店がひしめいているので食べ歩きをして自分のお気に入りの店を見つけるのもおすすめです。
飯田市の南北には天竜川が流れ、「天龍峡大橋・そらさんぽ天龍峡」では水面から高さ約80mの場所から四季折々の景色を楽しめます。遊歩道が整備されたエリアもあり、渓谷を歩いたり、舟下りを楽しむこともできます。
霧訪山(きりとうやま)・辰野町/塩尻市
【標高】1305m
【総歩行時間目安】上り1時間30分、下り1時間
【登山口】塩尻市下西条 山ノ神自然園の先
※下西条コースの場合
関東など首都圏の登山者からも人気の霧訪山。塩尻市側と辰野町側からの登山ルートが3つほどありますが、どの登山口へも塩尻インターチェンジから20分程度でアクセスできます。
人気のある下西条コースの登山口は「山ノ神自然園」の先にあり、ミズバショウなどさまざまな花を見て自然園を散策しながら登山口まで歩く人もいます。
登山道は丁寧に整備され危険箇所もほとんどありません。手軽に登れる低山ながら山頂からは360度のパノラマビューが広がります。松本、伊那、諏訪地域が一望でき、南北アルプスや御嶽山、八ヶ岳などの山々を望めます。4月末から5月は、山頂に咲くオキナグサが見頃を迎えます。
塩尻市の桔梗ケ原は長野県産ワインの先進地として知られています。今では桔梗ケ原にとどまらず数多くのワイナリーが市内にありますのでお土産にもおすすめ。
辰野町は「ホタルの里」と呼ばれ、初夏には幻想的に光る多数のホタルを見られるスポットがあります。ホタルが生息できるほどの清流と豊かな自然が広がっています。
☞塩尻のワインについてのおすすめ記事はコチラ
まとめ
今回は、長野県でおすすめの低山をご紹介しました。どの山も比較的短時間で登ることができ、素晴らしい展望が広がります。ただし、「低山だから」という油断は禁物。どんな山へ行く場合でも登山の基本装備はしっかり準備して安全登山を楽しみましょう。中嶋さんに聞いた低山登山の注意点や持ち物・レイヤリングのポイントをコチラの記事にまとめていますので是非参考にしてください。
※記載したコースタイムは無積雪の場合です。凍結や積雪がある際はアイゼンなどの滑り止めの携行と時間に余裕を持った登山計画を立ててください。
※行政・関連機関が発信する最新情報を入手したうえで登山計画を立て、安全登山をしましょう。
取材:編集部(みやざわ ちえ)
参考文献:中嶋豊著「信州山歩き地図Ⅰ~Ⅳ」(信濃毎日新聞社)
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