味が自慢の長野のブドウ
長野県では、古くは江戸時代からブドウが栽培されてきたと言われています。明治には栽培が本格化し、昭和30年代には、メイン品種だったナイアガラやデラウェアといったぶどう畑の片隅で巨峰の栽培が始まりました。雨が少ない長野県の気候や施設栽培の技術の向上から、「ブドウの王様」巨峰の生産量は年々増加していきます。巨峰とリザマートを交配し、平成16(2004)年に品種登録した長野県のオリジナル品種「ナガノパープル」は、黒系大粒ブドウではめずらしく、種なしで皮ごと食べられることから人気品種になりました。
巨峰やナガノパープルと同じく人気なのが、シャインマスカット。その産地として注目を集めているのが、長野県北部の中野市です。多くの生産者さんに技術指導を行うJA中野市営農部の小林哲也さんに、長野県のブドウの魅力をお聞きしました。
「標高差を生かして、4月下旬から12月まで県内の各産地をリレーしながら、長期間出荷できること、そして、それぞれの産地で食味の追求ができていることが、長野県のブドウの魅力です。また、昼間は30℃以上に上がっても、夜間には20℃台まで下がります。ブドウにとっても心地よい、この夜の温度帯が、色づきが良くなり、味がのってくる決め手になっていると思います」
水はけが良く、日当たりの良い傾斜地で、夏から秋にかけて昼夜の寒暖差がある、といったブドウ栽培に適した環境はもちろん、研究熱心で作り手の情報共有が盛んであることも長野県産ブドウのおいしさを支えています。
種なしで皮までおいしい、おすすめ品種
長野県のオリジナル品種であるナガノパープルは、巨峰とリザマートの交配品種。黒くて大きな粒としっかりした甘さが特徴で、粒のすみずみまで黒紫色に色づいたものが糖度が高いと言われています。皮にはシャキっとした食感があり、ジューシーな果肉と調和して、いくつでもおいしく食べられます。抗酸化作用が期待されるポリフェノールや、血圧改善効果が期待されるアミノ酸の一種「GABA」が豊富に含まれることから、機能性食品としても注目を集め始めました。
皮ごと食べられる種なしブドウとして抜群の知名度があるシャインマスカット。安芸津21号と白南の交配種として広島県で開発されましたが、冷涼な長野県の気候と相性が良く、長野県が全国一の出荷量を誇ります。大粒で甘味が強く、さわやかなマスカット香があり、皮も実も適度にひきしまってパクパクと食べられます。果皮の色が黄緑色のものはさっぱりとした甘さ、完熟するほど黄色味を帯びてより一層甘味が増します。
産地で、自宅で、旬のおいしさを味わおう
JA中野市の小林さんは、「今は皮ごと食べられる種なしブドウが人気ですが、巨峰などの歴史ある品種も絶やさず、さまざまなブドウを作り続けていけたら、と思っています」と話してくれました。中野市をはじめ、長野市や須坂市、東御市などで盛んな巨峰、松本市山辺のデラウェア、塩尻市桔梗ヶ原のナイアガラなど、県下各地にその土地の味ともいえるブドウがあります。また、ロザリオビアンコやピオーネ、クイーンニーナといった個性豊かなブドウが、旬の季節の直売所を彩ります。さらには長野県では新しい品種の「クイーンルージュ®︎」の栽培もスタート。皮ごと食べられる種なしの赤系ブドウで、今後のリリースに乞うご期待です(2020年9月現在)。
収穫前後でコツがある、おいしいブドウの見分け方
店頭でブドウを選ぶときは、付け根までしっかり色づいているものがおすすめ。巨峰やナガノパープルなどの黒系ブドウの場合は色が黒に近いほど、マスカットなどの白系の場合は黄色っぽいほど完熟の目安になります。また、果実の表面が白い粉「ブルーム(※)」で覆われており、軸が太くて緑色のものは新鮮な証拠です。
ブドウ狩りの場合は、樹の先端になっているブドウを選びましょう。枝先のほうが日当たりが良く、適度なストレスにより食味が良くなる、と言われています。
走りのハウスブドウを産地直送で贈ったり、食欲の秋にブドウ狩りに出かけたり、それぞれのスタイルで長野県産ブドウを楽しみましょう。
※植物由来の天然成分で、果実を雨露から守り、水分蒸発を防ぐ役目がある。
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