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残暑におすすめのウォーターアクティビティ!100年以上の歴史を誇る〈天竜川和船下り〉体験

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信州には海こそありませんが、四方を山々に囲まれているため豊かな湖や川に恵まれており、県内各地で水辺のアクティビティを楽しむことができます。

今回ご紹介するのは、諏訪湖を源流とし伊那谷を南北に貫く一級河川・天竜川を和船に乗って下る〈天竜川和船下り〉です。100年以上の歴史をもつこのアクティビティの魅力を、体験レポートを通してご紹介しましょう。

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天竜川沿いの美しい渓谷が〈天竜川和船下り〉の舞台。和船下りに使われる船は、船大工の手によって一艘ずつ作られている

早瀬を下るスリリングな船旅。でもいつもの服装でOK!

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リバーポート時又の入口。トンネル状のゲートがワクワク感を高めてくれる
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ゲートの先にはビーチリゾートのような明るい空間が広がる。施設内にはシャワー・更衣室・売店などがそろう
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施設内の一角には、和船下りの歴史や造船の過程などを学べるミュージアムも
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実物の和船の展示があり、長くて重い櫂を動かす体験ができる。300円でレンタルできる竹笠を被り、船頭気分で写真撮影を楽しむのもおすすめ。竹笠は購入も可能

〈天竜川和船下り〉は、飯田市を拠点に置く『南信州リゾート』が提供しているアクティビティです。早瀬(※)が連なる溪谷『鵞流峡(がりゅうきょう)』がおもなフィールドで、エンジンを搭載しない木造の船に乗り、水流と2人の船頭の漕ぐ力によって弁天港から時又港へ至る約6㎞のコースを下ります。※水の流れが速いところ。

じつは飯田市内には鵞流峡の下流にあるもうひとつの景勝地、『天龍峡』をフィールドとする『天竜ライン下り』もあります。こちらは水流が穏やかで、ダイナミックな景観を落ち着いて鑑賞できるのが特徴。一方〈天竜川和船下り〉は、先述のとおり水流が速いため、水しぶきが舞うスリリングな乗船体験が楽しめます。とはいえ「ずぶ濡れなりたくないな……」という心配もご無用。船にしぶきを除けるためのビニールが備え付けられているので、しっかりガードすればほとんど濡れずに体験を楽しめるのです。

〈天竜川和船下り〉の集合場所は、コースのゴール地点にあり、2023年に完成した爽やかなブルーのコンテナハウスが目印の『リバーポート時又』。受付で申し込みを終えたらバスに乗り込み、上流の『リバーポート弁天』へ向かいます。

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受付を終えたらバスに乗りリバーポート弁天を目指す。道中の車内で案内の方が飯田地域の歴史や文化について教えてくれた

乗船前に〈天竜川和船下り〉の歴史文化をインプット

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リバーポート弁天の入口。昭和レトロな雰囲気に心をくすぐられる

バスに揺られること約15分で、〈天竜川和船下り〉のスタート地点にあるリバーポート弁天に到着。趣深い建物内へ入り、船頭のジュンさんから天竜川和船にまつわるトークが始まりました。

ジュンさんいわく、天竜川の和船下りは、徳川幕府から始まった水運がルーツにあるとのこと。1612年(慶長17年)頃、なんと江戸城の天守閣造営に使われる木材を天竜川に流して江戸まで運んでいたのだとか。以来船による米の運搬が始まり、1893年(明治26年)には定期的な通運がスタート。その2年前に “日本近代登山の父”である英国人宣教師ウォルター・ウェストンが日本アルプスとともに天竜川の舟下りを世界へ紹介したこともきっかけとなり、1917年(大正6年)に始まる遊覧専門の川下りへと発展したそうです。

それから100年以上が経過していますが、当時とほぼ変わらないスタイルで受け継がれている〈天竜川和船下り〉。2020年以降のコロナ禍の影響受けて当時の運営会社が舟下り事業から撤退し、2021年12月以降しばらく運航中止が続いていましたが、南信州リゾートが事業を受け継ぐことで2023年4月にふたたび運航が再開し、今に至るそうです。

〈天竜川和船下り〉のこうした歴史文化の話や伝統の造船技術の話など、約20分間の興味深いトークでロマンを充分にインプットしたら、いよいよ船が待つポートへ向かいます。

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父親も天竜川の船頭だったという、船頭歴17年、船頭&船大工のジュンさん。クイズも交えながら、〈天竜川和船下り〉にまつわるストーリーを楽しくレクチャー
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リバーポート弁天にも実物の和船があり、ジュンさんが操船の仕方を実演してくれた。船の重さは1t、全長は12.7mあり、最大24名が乗り込めるそう

癒しと興奮を味わえる約35分間の船旅

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乗船するには、安全のために水に浸かると自動的に膨らむライフジャケットの着用が必要。船に屋根はないので、帽子など日除けグッズも用意しておこう
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約1時間お世話になったジュンさんに見送られながら出港

参加者12名が全員乗り込み、ふたりの船頭が櫂を動かすと、船はスッと水流に乗り川下のほうへ流れ始めました。リバーポート弁天からしばらくは穏やかな流れで、船尾に立つ船頭の鈴木広人さんによる解説を聞きながら、水神様やおしり岩、うさぎ岩など、途中現れるポイントに注目したり、写真を撮ったりする和やかな時間が続きます。そして鵞流峡が始まる南原橋が近づくにつれて、瀬は徐々に速さを増していきました。

「ここからちょっと水がかかるよ~」。ニコニコしながら鈴木さんがそう言った直後、船は激しめの波が立つゾーンへ。ビニールを掴みながら腕をグッと上げて防御態勢を取り、一滴も濡れずに通過することができました。濡れたいような、濡れたくないような……。そんな裏腹な心境の筆者を乗せて、船はコースのハイライトである鵞流峡へ入っていきます。

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船首に立って船を漕ぐ“舳乗り(へのり)”のタケさん。黙々と櫂を動かす様が素敵

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船尾で舵取りを担う“艫乗り(とものり)”の鈴木さんが、陽気なトークで乗客を盛り上げる

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出港してすぐはこのように水上から街の景色を楽しめる

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南原橋手前の早瀬スポットを通過しているところ

ハイライトは鵞流峡から。渓谷美と水しぶきを満喫

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川岸には波に削られたいくつもの岩のアートが

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最後の難所、湯の瀬の予想以上の波の激しさに驚きを隠せない

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川岸から見た湯の瀬のようす。写真からも波の激しさが伝わるはず

つい先ほどまで視界に入っていた人工物はほぼなくなり、あるのは川に削られて丸みを帯びた岩々と、その背後に繁る木々だけ。船頭の鈴木さんが「タケちゃん、ちょっと水の深さを見てみてよ」と言うと、船頭タケさんが長い竹竿を水面に垂直に突き刺しました。このコースでもっとも深いのは水深8mの黒瀬ヶ淵で、その場所を越えた先に最後の難所である湯の瀬がやってきます。

「さあ、濡れたくない人はビニールを用意してね」と言われ、ふたたび防御態勢になる船員一同。ビニール越しに、今回一番の激しい波を見て大興奮!激しい波のなか、船首に立ちビニールなしで漕ぎ続けてくれたタケさんは結構濡れていましたが、筆者含む乗客はほぼ濡れず、乗り込んだときと変わらない状態で船を降りることができました。

“ほぼ濡れずに”と言いましたが、乗船中は水しぶきとともに舞い上がる天然のミストを全身に受けるため、終わったあとも心地よい清涼感が残ります。

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赤い天竜橋を越えれば、ゴールのリバーポート時又は目と鼻の先

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私たちを最後まで安全に運んでくれた、船頭のタケさんと鈴木さん

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下船後、時又の近くにお住まいのおばあさんから手作りの折り紙和船をいただいた。

水量が多い日はラフティングという選択肢も

ここまで実体験をもとに〈天竜川和船下り〉の魅力を伝えてきましたが、このアクティビティにはひとつ難点があります。それは体験当日に晴れていても、水量が多すぎると運航中止になるということ。そこでおすすめしたいのが、南信州リゾートが同じエリアで提供している〈天竜川ラフティング〉です。

ラフティングとはゴムボートに乗って川下りをするアクティビティですが、和船とは異なり波に合わせて弾むので、よりアクティブに鵞流峡の早瀬を楽しむことができます。コースの途中で川に飛び込むこともでき、とくに夏はより気持ちよく、より自然との一体感を味わえるはずです。

こちらは濡れる前提の遊びなのですが、着替えのTシャツや短パンの貸し出しがあり、更衣室やシャワーもあるので、手ぶら&いつもどおりの服装でOK。和船に比べたらアクティブですが初心者向けなので、子どもや高齢の方も参加できます。和船下りを一度経験した人が、次にラフティングに挑戦してみる、という楽しみ方もいいでしょう。

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同じ川の上でも、乗り物が違うだけでまったく違う楽しみ方ができる(写真提供:南信州リゾート)

天竜川という大自然を満喫できる〈天竜川和船下り〉。猛暑の夏はもちろん、紅葉の秋、新緑の春に体験するのもおすすめです。季節ごとに異なる趣を、船の上でぜひ体感してみてください。

〈南信州リゾート 天竜川和船下り〉

運行期間: 3~11月。※〈天竜川ラフティング〉の開催は4~11月
料金: 大人(中学生以上)3,300円、子ども(小学生)1,650円、幼児(1歳以上)1,000円
予約・問い合わせ:南信州リゾート TEL: 0265-49-0075(8:30〜17:00)
https://mr-tenryu.com/


撮影:佐々木健太 取材・文:松元麻希

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