TOP PHOTO:『仙丈ヶ岳』の稜線を歩く ©伊那市観光協会
記載の情報は記事構成時点のものとなります。最新の情報は、各市町村・現地観光協会等へお問い合わせください。
南アルプスの特長
南北120kmにわたり3,000m級の山々が連なる赤石山脈、通称『南アルプス』。長野県、山梨県、静岡県にまたがる山脈で「日本百名山」として10座が選ばれる。原生的な自然が保たれ、多様な動植物が生息。特に夏場はさまざまな高山植物が咲き、5座が「花の百名山」に選定されている。2014年、自然保護と自然資源を活用した持続可能な経済活動の両立を目指すモデル地域「南アルプスユネスコエコパーク」に登録。
*)長野県では登山ルートの体力度や難易度を評価した「信州 山のグレーディング」を公表しています。1~10段階の体力度(数字が大きくなるほど体力が必要)、A~Eの技術的難易度(Eが最も難易度が高い)、コースタイムなどをまとめたもので、本記事に記載の情報は、「信州 山のグレーディング」や市町村等が発表する資料を参考にしております。
☞信州 山のグレーディング
*)「信州 山のグレーディング」や各市町村等で発表されている体力度・難易度だけでなく、自身の年齢や体力に応じて、無理のない山を選びましょう。
01 甲斐駒ヶ岳(北沢峠)
「南アルプス」北部に聳える、標高2,967mの『甲斐駒ヶ岳』。「日本百名山」の著者・深田久弥氏が「日本十名山を選ぶとしたらこの山は落とさないだろう」と絶賛した山。別名“南アルプスの貴公子”。古くから信仰の対象として崇められ、石仏や鉄剣が点々としている。
「北沢峠」登山口から「仙水峠ルート」「双児山ルート」の2本の登山道が延び、森林限界を超えた先のピーク「駒津峰」で合流。そこから山頂までは岩場の直登ルートか巻き道の摩利支天ルートを選択。岩登り経験が少ない場合は、巻き道が固い。登り切った先には雄大な南アルプス山脈、北アルプス、富士山の絶景が。周辺に「駒ヶ岳神社」の本社が鎮座する。
「北沢峠」登山口までは「戸台パーク」駐車場に車を停め、路線バスに乗り換え約55分。登山口に到着するまで時間を要するため、山小屋への宿泊がおすすめ。登山口付近の「北沢峠こもれび山荘」は、隣の仙丈ヶ岳登山の拠点としても便利。連泊して両方を登る人も多い。宿泊は公式サイトから要予約。
【INFORMATION】
【ルート名称】甲斐駒ヶ岳(北沢峠)
【標高】2,967m
【体力度レベル】3
【難易度レベル】C
【歩行時間(目安)】往復7.2時間
【総歩行距離(目安)】往復6.8km
【山小屋情報】☞北沢峠こもれび山荘
【登山口までのアクセス】中央自動車道「伊那IC」より車で約40分/「戸台パーク駐車場」よりバスで約55分「北沢峠」下車(☞Google Maps ※戸台パーク)
【参考】☞(一社)長野伊那谷観光局公式サイト
【備考】「北沢峠」登山口までの林道はマイカー規制あり。「北沢峠」行きの路線バスは例年6月中旬〜11月中旬のみ運行。伊那市公式サイトで運行日時要確認
02 仙丈ヶ岳(北沢峠)
「甲斐駒ヶ岳」に連なる、標高3,033mの『仙丈ヶ岳』。3つのカール(氷河地形)を有するバラエティに富んだ地形に多くの高山植物が花開く。稜線や山頂からの眺望も抜群。魅力あふれる人気の山だ。「日本百名山」の一つ。国の天然記念物であるライチョウの生息地としても知られる。
「北沢峠」登山口から急勾配の登りが続き、5合目の「大滝ノ頭」で分岐。「小仙丈ヶ岳」方面へ進み、ダケカンバなどの広葉樹が林立する道へ。秋は見事な紅葉のトンネルとなる。森林限界を超え稜線をしばらく行くと見えてくる「藪沢カール」の底には高山植物のお花畑が。山頂まではもうひと踏ん張り。日本一の標高を誇る富士山や次いで標高が高い北岳をはじめとする南アルプス、北・中アルプス、八ヶ岳連峰など、壮大な景色が待っている。
「北沢峠」登山口までは「戸台パーク」駐車場を利用し、路線バスに乗り換えアクセスを。山頂から30分ほどに建つ「仙丈小屋」への宿泊がおすすめ。西側に設けられた展望デッキで飲むビールは格別。宿泊は公式サイトから要予約。2泊以上の行程を組み「甲斐駒ヶ岳」への縦走登山も人気。
【INFORMATION】
【ルート名称】仙丈ヶ岳(北沢峠)
【標高】3,033m
【体力度レベル】3
【難易度レベル】C
【歩行時間(目安)】往復7.6時間
【総歩行距離(目安)】往復9.5km
【山小屋情報】☞仙丈小屋
【登山口までのアクセス】中央自動車道「伊那IC」より車で約40分/「戸台パーク駐車場」よりバスで約55分「北沢峠」下車(☞Google Maps ※戸台パーク)
【参考】☞(一社)長野伊那谷観光局公式サイト
【備考】登山口「北沢峠」までの林道はマイカー規制あり。「北沢峠」行きの路線バスは例年6月中旬〜11月中旬のみ運行。伊那市公式サイトで運行日程要確認
03 奥茶臼山(しらびそ峠)
【INFORMATION】
「日本三百名山」に選定された、標高2,473mの『奥茶臼山』。「しらびそ峠」登山口から「前尾高山」(標高2,089 m)、「尾高山」(標高2,212 m)、「奥尾高山」(標高2,266 m)、「岩本山」(標高2,269 m)を経て、徐々に標高を上げる尾根歩き。「尾高山」まではハイキングコースが整備され、比較的歩きやすい。
最初のピークは「前尾高山」。原生的な針葉樹の森には、コバイケイソウなどの高山植物やコケ類が生息する。続く「尾高山」は「新・花の百名山」に選定。ヤブレガサをはじめとするお花街道が楽しい。ゴールの『奥茶臼山』は山頂の展望は開けていないものの、5分ほど北に下ったビューポイントから南・中央・北アルプスの山並みや伊那谷が望める。
1泊以上の行程を推奨。付近に山小屋はないが、「しらびそ峠」登山口から徒歩約10分に宿泊施設「しらびそ高原天の川」や「しらびそ高原山岳オートキャンプ場」がある。日帰りの場合は早朝に出発。
【INFORMATION】
【ルート名称】奥茶臼山(しらびそ峠)
【標高】2,473m
【体力度レベル】4
【難易度レベル】B
【歩行時間(目安)】往復8.1時間
【総歩行距離(目安)】往復14.8km
【登山口までのアクセス】中央自動車道「飯田IC」より車で約70分(☞Google Maps ※しらびそ峠)
【備考】「しらびそ峠」登山口へは矢筈トンネル側もしくは下栗の里経由でアクセス ※大鹿村方面から地蔵峠(蛇洞沢林道)通り抜け不可(2024年8月現在)
04 茶臼岳(易老渡)
「南アルプス」南部に位置する標高2,604mの『茶臼岳』。茶碗を伏せたようななだらかな山容から命名されたといわれる。ルートの大部分が樹林帯で、山頂近くで森林限界を迎える。ライチョウの生息地としても有名。「日本三百名山」に選定されている。
南・中央アルプスのパノラマが広がる山頂。天気の良い日は遠くに富士山を望む。山頂から約1km北には高山植物のお花畑が。雪解け後「コイワカガミ」の群落の開花を皮切りに、シナノキンバイやニッコウキスゲ、マツムシソウなど、多種多様な花が咲く。
「易老渡(いろうど)」登山口から「易老岳」(標高2,354m)「仁田岳」(標高2,523m)を経て登頂を目指す。山小屋「茶臼小屋」で1泊するのがおすすめ。隣の「光岳」まで縦走する場合は、2泊以上の行程で。素泊まり限定のため、食事は持参する。
※「易老渡」登山口まで車でのアクセス不可(2024年8月現在)。「芝沢ゲート」駐車場を利用し、徒歩約90分で登山口へ。この間にかかる時間・体力を加味し、余裕を持った行動を。
【INFORMATION】
【ルート名称】茶臼岳(易老渡)
【標高】2,604m
【体力度レベル】6
【難易度レベル】B
【歩行時間(目安)】往復13.6時間
【総歩行距離(目安)】往復15.8km
【山小屋情報】☞茶臼小屋 ※素泊まりのみ
【登山口までのアクセス】中央自動車道「飯田IC」より車で約2時間/「芝沢ゲート」駐車場より徒歩約90分(☞Google Maps ※芝沢ゲート駐車場)
【備考】「芝沢ゲート」から「易老渡」登山口まで、車両進入不可(2024年8月現在)
05 光岳(易老渡)
「日本百名山」の一つ、「南アルプス」最南端の『光岳』(標高2,591m)。“てかりだけ”と読む。山頂の西側に突出する巨大な石灰岩が陽の光により白く光って見えることから名が付いたという。この岩は「光石(てかりいし)」と呼ばれる。
「易老渡」登山口から急勾配の長い尾根道を行く。繁茂する森を抜け「易老岳」を通過し「南アルプス」の主稜線上に出る。景色を楽しみながら「三吉平」「静高平」を経てハイマツの林を抜け、凹地の「センジガ原」へ。木道伝いに進むと、山小屋「光岳小屋」が見えてくる。シラビソが林立する山頂までは約15分。さらに南へ10分ほど進むと「光石」が鎮座するビューポイントにたどり着く。「茶臼岳」と縦走する場合は2泊以上の行程で。「光岳小屋」の宿泊利用は完全予約制。
※「易老渡」登山口まで車でのアクセス不可(2024年8月現在)。「芝沢ゲート」駐車場を利用し、徒歩約90分で登山口へ。この間にかかる時間・体力を加味し、余裕を持った行動を。
【INFORMATION】
【ルート名称】光岳(易老渡)
【標高】2,591m
【体力度レベル】6
【難易度レベル】B
【歩行時間(目安)】往復13.8時間
【総歩行距離(目安)】往復16.4km
【山小屋情報】☞光岳小屋
【登山口までのアクセス】中央自動車道「飯田IC」より車で約2時間/「芝沢ゲート」駐車場より徒歩約90分(☞Google Maps ※芝沢ゲート駐車場)
【備考】「芝沢ゲート」から「易老渡」登山口まで、車両進入不可(2024年8月現在)
登山の注意点
*)登山計画書は万が一の際に迅速な救助活動にもつながります。登山の際は、事前に登山計画書を必ず提出しましょう。登山計画書はインターネットからでも提出可能です。
*)準備不足・体力不足を原因とした遭難が増えています。「信州 山のグレーディング」等を参考に、自分の技術や体力にあった山選びをし、安全第一で登山を楽しみましょう。
*)入山の際は、登山に適した服装と装備で余裕を持った行動をお願いします。
*)記載の体力レベル、難易度、歩行時間等は無雪期・天気良好時の場合です。実際の登山では、体力度、難易度以外に悪天候、残雪、体調、その他偶発的な要因によるさまざまなリスクがあります。それらにも配慮した登山計画を立てましょう。
文:松尾 奈々子
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