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ワクワクあふれる安曇野の大自然! 生き物のスペシャリストが教えるスポット4選

北アルプスのふもと、水と緑の豊かな風景が広がる安曇野市。川や草原、そして森。多くの場所にそれぞれの植生が残り、さまざまな生き物が集まります。今回は「ざんねんないきもの事典」を監修された動物学者の今泉忠明先生をお迎えし、地元の案内人の皆さんと一緒に安曇野市内にある4つの自然体験スポットを散策します。
 
「動物を知ることは、人間を知ることにつながる」という今泉先生に観察のヒントをいただきながら、安曇野市の自然を五感で感じる、ワクワク満載の冒険に出発です!

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長峰山・蝶の森

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さまざまな命が育まれる環境を保つため、シカ除けのネットが張られた草原

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この場所で2本だけ見つかったという貴重なシカの角。大きさや色の違いで身体の大きさが予想できると今泉先生(写真左)

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虫を捕まえる網は、ふわっと下から掬うように動かすと良いそう

安曇野市の東側にある「長峰山(ながみねやま)」。年間通じて多くの登山者が訪れる人気の里山で、標高933mの山頂からは、安曇野の街と北アルプスの山々を見渡せます。「蝶の森」はこの長峰山の中腹に広がるエリアで、約0.3haの草原の周りを、ぐるりと遊歩道が囲っています。

薪になる木を切り出したり、草を刈って畑の肥料にしたり。かつて人々の暮らしと密接に関わっていた里山は、時代の変化とともに足を踏み入れる人が減り、荒れていきました。NPO法人森倶楽部21の森さんは、豊かな里山環境を守り、そこに生きるさまざまな動植物を守ろうと活動する一人です。

森さん「“蝶の森”という名前は、“チョウがたくさんいる森”という意味もありますが、私たちは、チョウの様子やここを訪れるチョウの種類を見て森の状態を把握し、“チョウを指標に森づくりをする”という活動をしています。日本にいる約250種類のうち、長野県には150種ほどが生息していますが、この場所では80種類以上のチョウが確認されています」

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見つけた虫は、図鑑を使ってじっくり観察

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外気温が低い時間帯は、チョウや蛾の仲間は葉にとまって休むことも多いそう

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ハイキングやお花見、星空観察も楽しめる長峰山周辺。登山道や遊歩道が整備されているので親子で挑戦しやすい

この日見つけたのはシジミチョウの仲間の「ウラゴマダラシジミ」や「ミヤマカラスアゲハ」、ヘビの目のような模様がある「ジャノメチョウ」など。他にも木の枝に擬態する「ナナフシモドキ」や「キバネツノトンボ」など、よく目を凝らしてみるとたくさんの生き物が観察できました。

今泉先生「昆虫やチョウは、その種類によって食べる葉が違います。いろんな木や草花があるということは、それだけたくさんの生き物に出会えるチャンスがあるということ。生き物の観察は、どんな小さなことでも疑問を持って、“なぜ?”と考えることでおもしろくなっていきます」

季節や時間帯によっては、野鳥や野ウサギなどたくさんの生き物に出会える可能性がある蝶の森。車でアクセスしやすく、近くにレストランがあるのも子連れに嬉しいポイントです。

Information

住所:安曇野市明科光2573
問い合わせ:特定非営利活動法人 森倶楽部21
長野県安曇野市堀金烏川5123番地16
mail:npomoriclub21@gmail.com
HP:http://mori21.com/
facebook:https://www.facebook.com/morikurabu21

けやきの森自然園

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戦後に植えられたケヤキの林。大正時代は鉄道防備林としてアカシアやアカマツが植えられていた

旧国鉄篠ノ井線の廃線敷に整備された約6kmの遊歩道。地元の有志によって守られてきた場所で、鉄道が通っていた時代のトンネルや踏切、警告灯などが随所に残っています。遊歩道のちょうど真ん中あたりにあるのが、今回訪れた「けやきの森自然園」です。園内はおよそ3万本のケヤキの木が植えられ、一歩足を踏み入れると、さまざまな鳥の声や葉の擦れる音が聞こえてきます。

フィールドでできる観察は、動物や植物だけに限りません。「木や花の状態、分布している種類に注目すると、広い視点で山全体の姿が見えてくる」と、今泉先生は言います。

今泉先生「水はどうやって流れるのか、土の栄養は足りているのか。それぞれの特徴を重ねて想像すると、生き物も植物も、全てが関係しあって存在していることがわかります。大切なのは自分で体験し、発見すること。山や川には、体験を通じて考えるチャンスがたくさんあります」

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この場所でも蝶を発見。透けた羽に丸い模様が特徴のウスバシロチョウと判明

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廃線直後から整備を行ってきた宝さん(写真左)と安曇野案内人倶楽部の手塚さん(写真右)

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ぬかるんだ地面に残されたイノシシの蹄跡。痕跡から、葉の下のミミズを探したり傾斜を登ったりした彼らの動きが見えてくる

足元を見ながら林を進むと、シカが木の皮を食べた跡やイノシシが駆け上がって地面が擦れた跡、ムササビが葉を食べた跡など、さまざまな動物の痕跡を見つけました。

今泉先生「ムササビがかじった葉っぱは、折るとピタリと合わさります。これはムササビが葉を食べるとき、半分に折って両手で抱えるようにして食べるから。見つけたら、持って帰って植物標本を作ってみても楽しいかもしれません」

駐車場やトイレも整備され、お弁当を持ってのんびり過ごすにも良さそうな静かな環境。新緑の美しさはもちろんですが、廃線敷のサクラが咲く春や、ケヤキが紅葉する秋も見応えがありそうです。

Information

住所:安曇野市明科東川手
HP:https://azuminoguide.com/
問い合わせ:安曇野案内人倶楽部
事務局 手塚博登
e-mail:azuminoannai@gmail.com

国営アルプスあづみの公園 堀金・穂高地区

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クララの葉にとまるオオルリシジミ。シジミチョウの中でも大きめで、はねを広げると3cmほどになるそう

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広い草原を目の前に、虫網を持ってワクワクが止まらない様子の子どもたち

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安曇野の田園風景が守られ復元された公園内。風が吹き抜け、水の流れ落ちる音が心地よい

安曇野市の西側にある「国営アルプスあづみの公園」。
今回訪れた堀金・穂高地区の「田園文化ゾーン」は、日本百名山で安曇野のシンボル・常念岳(じょうねんだけ)を中心としたアルプスの山岳風景を眺めながら、段々に流れ落ちる池、森や草原にも親しめる、自然観察にピッタリの公園です。
屋内施設として、学校風のテーマ展示で学べる「あづみの学校」があり、安曇野の清流にすむ魚たちを水槽ごしに観察できる「理科教室」などが整備され、どんな天気でも楽しめるのが嬉しいところ。季節ごと、さまざまな体験プログラムも実施されています。

取材に訪れた5月末から6月は、ちょうど安曇野市天然記念物のチョウ「オオルリシジミ」が見られる時期。国営アルプスあづみの公園では、絶滅危惧I類に指定されているオオルリシジミを保護しようと、池周辺に食草となる「クララ」を植えています。近づいてよく観察すると、つぼみに小さな卵を見つけることもできます。

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注意してみると、リスやネズミ、イノシシなどが暮らす痕跡がたくさん

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「森のなかでは自分の今いる場所を把握するため、上を見たり景色を見たりすることも大事」と今泉先生。木の上には鳥の姿も発見

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比較的新しいフンを見つけ、先生指導のもと割ってみることに。中心に残る緑色は、サルが食べた新芽と予想

池の脇に延びる「森の小径」に入ると、足元には栗やクルミ、松ぼっくりなど木の実がたくさん落ちています。食べているのはリスや赤ネズミ、イノシシやサルなどの動物たち。殻についた歯形などからどんな動物がどう食べたのか、イメージを膨らませます。

今泉先生「例えばリスは、クルミの殻の合わさったところに歯を差しこんで実を食べます。同じクルミでも、赤ネズミなら丸い穴を開けてそこから殻を割って食べる。途中で放置されている実は、かじってみたけれど美味しくなかったのかもしれない。きれいだな、楽しいな、と何気なく見ている景色にいろんなヒントが隠れています」

森に入るときはなるべく肌の出ない格好で、虫除けスプレーなどを持参するのも大切です。あちこちで見られるフンや動物の痕跡も、素手で安易に触ったりしないよう注意しながら、写真を撮ったりスケッチをしたり、楽しみ方は無限に広がっていきそうです。

Information

国営アルプスあづみの公園 堀金・穂高管理センター
住所:安曇野市堀金烏川33−4
開園時間:3月1日~10月31日 9:30-17:00/11月1日−2月末日 9:30-16:00
休園日:月曜日・年末年始
入園料:15歳以上450円/65歳以上210円/小中学生・幼児 無料
問い合わせ:0263-71-5511
注:公園内の動植物の採取、持ち帰りは禁止となっています。

烏川渓谷緑地

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国営アルプスあづみの公園の西側に位置する烏川渓谷緑地。ビオトープでは、桟橋の上から静かに水中を観察

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川虫について教えてもらう子どもたち。水中用の虫取り網を持って準備万端

蝶ケ岳や常念岳を源とする烏川(からすがわ)沿いにある「長野県烏川渓谷緑地」。東西に広がる川と林を整備した場所で、森や草原とはまた違う、水辺の生き物に出会うことができるスポットです。
流れが緩やかで浅い水辺に入り、石の裏に暮らしている川虫を探してみました。一般に「川虫」と呼ばれる虫は29種類いますが、それぞれ住める環境や水の質が決まっています。さらに川の流れるスピードや水の温度、深さ、周囲の気温など、さまざまな要素で生息する生き物は変化します。観察をはじめる前には、まず今、自分がどんな場所に立っているのかイメージしてみるのもおすすめです。

今泉先生「烏川渓谷緑地は豊富な水をたたえる北アルプスの麓にあって、長い川のなかでも”上流”と呼ばれる区域です。きっときれいな水に暮らす虫がいるだろう、まずはそんな予測を立ててから、実際の川で答え合わせをしてみると良さそうです」

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川底は足場が悪いので、素足で入らない&走らないよう注意を

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石の上で見つけたカゲロウの仲間。きれいな水に住む虫のひとつ

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ビーカーや試験管がなくても大丈夫。この日は手持ちのビニール袋に入れて虫を観察する様子も

川のなかには大小さまざまな石があり、ゆっくり持ち上げてひっくり返すと、石の裏に川虫の姿を見つけることができます。見つけた虫は透明な容器に入れてじっくり観察。なければビニール袋やバケツでも構いません。
整備された渓谷沿いは歩きやすく、川に入れる場所もたくさんあるため、同じ川でも少し離れた場所では全くちがう生き物が見つかるかもしれません。そんな比較も、烏川渓谷緑地の楽しみのひとつです。

今泉先生「今回見つけたトビケラなどの川虫は、水に溶ける酸素を吸って生きており、多くの酸素を必要とします。山が近くきれいな水には酸素がたっぷり溶けているため、この場所にいるのも納得です。そうしたら次はその虫を食べている魚、その魚を食べにくる生き物。そうやって連想ゲームのように情報をつなげていくと、やっぱり植物や生き物は関係しあって生きていて、人間も自然の一部にいると感じられるように思います」

自然の川は浅瀬でも急に一部が深くなったり、ゴツゴツした石が多かったり。水遊びをするときは必ず大人と一緒に、滑りにくい履物を用意するなど注意して、観察や探検を楽しんでみてください。

Information

住所:安曇野市堀金烏川26
開所時間:8:30-17:15(管理事務所開所)
閉所日:年末年始
入園料及び施設使用料:無料
問い合わせ:0263-73-0203

【利用の際の注意事項】

・野生動物にエサは与えないでください。お弁当の食べ残し等、ゴミは持ち帰りましょう。
・火気等熱源は使用できません。園内禁煙、焚火禁止。
・県都市公園条例により動植物の採取は禁止されています。
・川で遊ぶときは、素足では入らないでください。
・保護者の方はお子様から目を離さないようにお願いいたします。
・危険な場所へは近づかないようにしましょう。
・犬には必ずリードを装着し、フンは持ち帰りましょう。
・かぶれる植物や毒虫対策として、肌の露出は控えましょう。

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