心をリセットしてくれる、ハイエンドなグランピング体験『八ヶ岳PRIVATE WOODS NADA』
都心から約2時間。標高1,100mの八ヶ岳山麓に佇む『八ヶ岳PRIVATE WOODS NADA』は、部屋付きのバレルサウナと露天風呂を備えたプライベートグランピングだ。高原リゾートの隠れ家で、非日常のラグジュアリーステイが叶うこの場所で、人生初となる1泊2日のグランンピング体験をしてきた。
看板が、ない。道案内も、ない。スマホの地図は確かにあの林の中を指し示しているのに、そこに向かうはずの道は途中で途絶えている。さて、どうする? 意を決して脇道に車を入れ、祈るような気持ちで、私は木立の間を走り抜けた。角をいくつか曲がり、ようやく宿の看板を見つけた時のうれしさといったら。まるで、自分だけの秘密の場所を見つけたような気分だ。
たどり着いたそこには、すらりと背の高い木々に囲まれるように、3つのキャビンがそれぞれ独立する形で建っていた。静かな林に響き渡る、伸びやかな鳥のさえずり。美声に釣られて空を見上げると、はらりと針葉が落ちてきた。見れば、雑木林の多くはカラマツの木。あたりが黄金色に染まる秋は、さぞや美しいことだろう。来る季節に思いを馳せていると、スタッフが駐車場まで出迎えに来てくれた。時刻は15時。そのまま管理棟に向かい、チェックイン。
食事付きのプランは、夕食の時間を17~18時の間から選べるようになっている。夜はゆっくりサウナを楽しみたいから、食事は早めの17時でお願いしようかな。聞けば、素泊まり・持ち込みもOKで、自前でそろえた食材で気ままにバーベキューを楽しむ人も多いそうだ。そんなことをスタッフと話しながらキャビンに向かっていると、足元に転がるたくさんのクリやドングリが目に付いた。「カラマツのほかにも、クリやミズナラの木が自生していて、野生の二ホンリスが遊びに来ることもあるんですよ」とマネージャーの岩間さん。早速、艶々のクリを2つ、キャビンの前にお供え。「この林の小さな住民に会えますように」と、心の中で唱えながら。
キャビンは広々としたウッドデッキを囲むようにコの字型に建てられていて、ふかふかのベッドはもちろん、IHコンロや冷蔵庫を備えた機能的なキッチンやシャワールームやトイレ、さらには専用のバレルサウナや露天風呂まで備え付けられている。そして、視線の先に広がるのは、静かに揺れる林の木々――。スイートルームのように贅沢な空間と目の前に広がる素晴らしい景色に、私は思わず「わあ」と声をあげていた。
「『nada』はスペイン語で『nothing』の意味。忙しい毎日を送る方々に、森の中で無になってリセットしてほしいという願いが込められています」。
なるほど。キャビンには、テレビも、時計もない。日常から切り離され、ただ静かな自然の中にゆったりと身を置く時間は、確かにリフレッシュよりもリセットという感覚に近いのかもしれない。
「日々の疲れやノイズをリセットし、自分らしさを取り戻してほしいのです」。
夕食はウッドデッキテラスで楽しむバーベキュー。宿が用意した動画を参考にしながら、自分たちで炭を起こす。焚き火の薪も同様だ。着火剤や着火ライターが用意されているので初心者でも簡単に炭や火を起こすことができるけれど、非日常の共同作業は思いの外盛り上がった。
たとえば、バーベキューのセットに含まれる“棒ぱん”づくり。ふわっふわに発酵したパン生地に触った瞬間、子どもたちがキャッキャッと声を上げる光景が容易に思い浮かんだ。とろけるほどやわらかなパン生地を絶妙な力加減で伸ばしながら、アルミを巻いた棒にくるくると巻き付けていく工程もまた、笑顔なしでは終われない作業。ひと盛り上がりもふた盛り上がりもした後に、今度は焚き火にそれをかざして、ゆっくり回しながら、きつね色に焼き目を付けていく。おいしくなあれ、おいしくなあれ。甘く、香ばしい香りが漂ってきたら、できあがり。厚めに巻いたところはもっちり、薄めに巻いたところはサクサクといった食感のコントラストが楽しめるのも、手づくりならではの醍醐味だ。自分で焼き上げたという思い入れも、焼きたてのパンのおいしさを底上げする。
もうひとつのおすすめは、オプションの焙煎珈琲体験。焚き火の炎でじっくり生豆を煎っていく。焦げないように、ムラなく仕上がるように。交代で細かく網を揺らし、時折蓋を開けてはみんなで豆の色に目を凝らし、パチンと豆が爆ぜる音に耳を傾ける。「いい匂いがしてきたね、私の腕がよかったおかげかな」なんて、笑い合ったりして。焙煎したばかりのコーヒーはフレッシュで華やかな香り。揺らめく炎を前にひと息つきながら、ただ静かに夕暮れの時を待つ。薪をくべながら黙々と火に向き合っていると、心が空っぽになっていくようだ。
夕食は、蓼科生まれのりんご信州牛のステーキや旬野菜のグリルに、信州サーモンのカルパッチョ、信州味噌を使った味噌汁や五平餅などがつくご当地感あふれる内容。どれも、焼くだけ、温めるだけの状態で用意されているので、キャンプ経験がなくとも気軽にアウトドア気分を楽しめる。中でも、サシがばっちり入ったりんご信州牛は、ジュージューと焼けていく光景を見ているだけでテンションを上げてくれる存在。肉汁で輝くステーキは、塩だけで旨さが際立つ。口の中でも、肉汁がじゅわり。幸せが溢れる。
食事の後は、待ちに待ったサウナタイム。ここでは、サウナの発祥地であるフィンランドに古くから伝わる樽形のバレルサウナが各キャビンに配されていて、心置きなくサ活が楽しめる。隙あらばサウナ巡りをしている自称サウナ-の私も、薪をくべるサウナやセルフロウリュは今回が初めて。どんなサウナ体験ができるのか、ワクワクが止まらない。
しかし、高まる私のサウナ熱に反して、気温はぐんぐん急降下。秋に差し掛かった八ヶ岳山麓の夜は思っていた以上に寒く、暖をとらずに外でじっとしているのは服を着ていても辛い状況だった。張り切って露天風呂に水を張ってしまったけれど、果たして水風呂には入れるのだろうか。外気浴で凍えるかも。そんな不安を抱きながら、私はバレルサウナの扉にそっと手を掛けた。
何度も薪をくべた甲斐あって、室温は理想の80℃に温まっていた。備え付けの砂時計をひっくり返し、そっと目を閉じる。しんと静まりかえった空間に響く、パチパチと薪が爆ぜる音。ほのかに漂う木の香りも、心を優しくほぐしてくれる。さて、10分ほどじっくり体を温めたところで、初めてのセルフロウリュにトライ。ひしゃくで汲み上げた水をサウナストーンにかけると、ジュワーッという豪快な音と共に蒸気が立ち上った。熱波に包まれて、全身から吹き出る大量の汗。円形の形状と広すぎない空間のおかげか、長く快適なロウリュタイムが楽しめた。体温もボルテージも上がりきったところで、露天の水風呂にダイブ。心配だった外気浴もまったく寒くなく、むしろひんやりとした外気で心地よくととのえた。「バレルサウナ最高!」と心の中で雄叫びをあげながら、私はこの夜、このセットを3回満喫した。
宿のまわりは散歩もできると聞いたので、翌朝は少し早起きをして林の中を歩いてみた。冷たく澄んだ空気を頬に感じながら、ふかふかの土の感触を楽しむ。地面からにょっきりと顔を出すこぶし大はありそうなきのこ、心を洗い流すような清らかな小川のせせらぎ、そして頭上から降り注ぐさえずりのシャワー。でも、あまりにもきれいな歌声があちこちから聞こえるものだから、なんだか録音テープを聞いているみたいで思わず笑ってしまった。
清々しい気持ちでキャビンに戻り、朝食の準備にとりかかる。ここでは夕食と一緒に朝食も配膳されるので、思い思いのタイミングで食事をとることができるのだ。とろとろに溶けた魅惑的なラクレットチーズとベーコンエッグを挟んだパンをほお張りながら、のんびり外を眺めていると、ウッドテラスのむこうで何かが動いているのが見えた。大きなしっぽを揺らしながらちょこちょこと走り回っていたのは、ニホンリス。どうやら、昨日のお供え効果があったみたい。
八ヶ岳PRIVATE WOODS NADA〉
住所|長野県茅野市玉川11398-128
電話|080-3341-3024
URL|https://www.nagano-yatsugatake-glamping.com
料金|1泊2食付き1人25,410円~、素泊まり16,060円~ *通年営業
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オールインクルーシブでひと際スペシャルなステイを
『GLAMPROOK飯綱高原』
「大自然を五感で感じる、Luxury Suite」をコンセプトに、「雄大な自然に抱かれてのアウトドア体験」と、「ホテルステイのようなラグジュアリーなひととき」、その両方を体感できる「GLAMPROOK(グランルーク)」。長野県、愛媛県、千葉県と全国に3施設あり、その土地ならではの出会いと体験、感動を届けてくれる。
飯綱高原の魅力は「四季を五感で味わえること。夏はもちろん、紅葉を愛でながらの秋や、銀世界となる真冬のグランピング、木々の芽吹きや桜と過ごす春など、春夏秋冬で表情を変える自然を肌で感じることができます」とスタッフの村田さん。
また、食事に加え、焚き火デッキでのウェルカムドリンクや軽食、夜のBAR TIME、車ですぐの「むれ温泉 天狗の館」の入館、旬のフルーツ狩りやスキー場リフト券などが宿泊料に含まれているオールインクルーシブで、施設内だけでなく、外でのアクティビティも満喫できる。
部屋タイプは、自然との一体感と上質な居心地を両立できるよう、リビングと寝室を分けて設計した「TWIN DOME(ツインドーム)」と、ツインドームよりさらに広くワンランク上のステイが満喫できる「EXECUTIVE SUITE(エグゼクティブスイート)」からセレクト。
また、「EXECUTIVE SUITE」はシングルドームとダブルドームのほかに、中央にリビング、両サイドに寝室を設計した「トリプルドーム」も用意。アーツ&クラフトをテーマに家具などの内装を部屋ごとに変え、プロジェクター・スクリーンの設備も完備するなど、ワンランク上のラグジュアリー感が味わえる。
食事は、「FARM AKIRA」や「AWkitchen」など数々の話題店を手掛ける渡邉明シェフがプロデュース。世の中にバーニャカウダを広め、実際に農家を訪れて野菜を厳選することから“畑の伝道師”とも呼ばれている。ここ「GLAMROOK飯綱高原」でも渡邉シェフが探し求めたこだわり野菜を使っているため、どの料理でも野菜本来のおいしさと出合えるはずだ。
また、「信州牛のロースト」など地元の名物もふんだんに取り入れ、メニューは季節によって変化。訪れる時はどんな料理と出合えるか、想像するのも楽しみのひとつ。
〈GLAMPROOK飯綱高原〉
住所|長野県上水内郡飯綱町川上2755-1
電話|026-253-8188
URL|https://glamprook.jp/iizuna/
料金|1泊1人33,000円~(2名利用時) *通年営業
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静寂の中で満天の星を眺める
『mökki STARDUST GLAMPING achi village』
星空をテーマに、都会の喧騒を離れて自然を満喫できるグランピング施設。日中は自然豊かな森林や川のせせらぎを聞きながら、夜は静寂の中で星を堪能できる。
おすすめの過ごし方を支配人の園田さんに聞いてみた。
「チックイン後は、まずmökki内を散策し、ピクチャーフレームやブランコなど、多数ある映えスポットで記念撮影。スタッフが撮影のお手伝いをさせて頂きます。夕方からはmökkiオリジナルBBQをフリードリンクと共に堪能。19時には、共有スペースでキャンプファイヤーが始まります。ビッグサイズのマシュマロを焼いたり、ドリンク片手に大切な人との優雅な時間をお楽しみください」。
さらに朝は、地元の焙煎所から直接仕入れた珈琲豆を自分で挽き、挽きたてコーヒーとともに朝食が楽しめるなど、チェックインからアウトまでたっぷりと特別感が味わえるのも魅力だ。
客室はシングルベッド4つを備える「スタンダードドーム」、リバーサイドでプライベート感も充分な「リバーサイドドーム」、食事スペースとなるガゼボが他よりも広い、浴槽付きの「ラグジュアリードーム」、ペット同伴OKの「コクーンテント」、本格キャンプを楽しみたい人におすすめの「ロータスベルテント」などが揃う。
内装は温もりのある北欧風で、窓外に広がるグリーンとともにラグジュアリーグランピングの世界観に浸りながらのステイが叶う。
共用施設では、薪式のテントサウナ(事前予約制)も完備。自分で薪をくべ、身体の芯から温まった後は、外のインフィニティチェアで星を眺めながらの外気浴もおすすめ。
夕食には、地元で仕入れる濃厚な門前豆腐や野菜を使ったメニューや、国産和牛のステーキなどが味わえる豪華BBQを満喫。朝食でも、隣町の飯田市から直接仕入れたパンと、オリジナルハニーマスタードを合わせた「オリジナルBLTサンド」や、信州市田酪農ヨーグルトなど、地元ならではの味が楽しめる。
焚火を囲む共有スペースにはオールインクルーシブのドリンクサービス(16時~20時30分)があり、ビールやハイボール、信州産のフルーティーなワインのほかに各種ソフトドリンクも揃っている。
また、コーヒーミルがレンタルできる「コーヒーバイキング」もおすすめ。世界各地のコーヒー豆が日替わりで提供され、滞在中無料で何度でも体験できる。
〈mökki STARDUST GLAMPING achi village〉
住所|長野県下伊那郡阿智村智里4152-67
電話|0265-49-3016(9時~18時)
URL|https://www.naganoachimura-glamping.com/
料金|1泊素泊まり1人17,600円~ *通年営業
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自然を肌で感じながらの贅沢ステイ
『Stella Snow Campia』
南信州らしい里山風景が広がる森林エリア内に、2022年秋にオープンした「ステラ スノーキャンピア」。
特徴は「周囲を1,000~1,200mの山々に囲まれ、名古屋など都市部からも離れており、光害が入らないという好条件から、郡内の阿智村と同様に星空を眺めるにはベストに近い場所。夕方からちょっと早めの屋外調理での夕食を楽しんだ後は、テラスに付属されている薪ストーブ、または焚火台で火の魅力を満喫しながら、思う存分星空が堪能できます」とマネージャーの永瀬さん。
グランピング仕様の各種宿泊棟で宿泊するだけでなく、食事プランと持ち込みから選択できる夕食、コーヒー焙煎や簡単スモーク、冬季限定のスノーシュー体験(有料)といったここでしかできないアクティビティも体験できる。
客室タイプは、別棟の共用トイレ・シャワー、調理食事専用スペースとなる屋外ガゼボ併設、野外で自然を感じながらゆったりと滞在できる「MOSS TENTS」と、屋内にトイレ、ユニットバスを備え、ミニキッチンや調理道具が付く「Tiny House」の2タイプ。さらに「Tiny House」には、シャワー付きのタイプも用意されている。
夕食は、地元信州産の食材をメインとした、グリルバーベキュー。スタンダードプランの「信州特選 Grill BBQ セット」では、村沢牛希少部位のスモールカットステーキや長野県産和牛リブロースステーキ、季節を感じる「地元産の旬野菜 鉄板焼きスタイル」などが楽しめる。
早めに到着したら、施設沿いを流れる渓流までお散歩してみるのもおすすめ。上流部の水は澄んでいて、そっと手を入れてみると目の覚めるような冷たさを体験できる。また、山から流れる沢水でコーヒーを淹れる「コーヒー焙煎体験」というアクティビティメニューもあるので、ぜひ体験してみて。
夕方になったら車で約5分の距離にある「売木温泉 こまどりの湯」へ。施設宿泊者は1回無料で利用できる特典があり、少し早めの入浴タイムを楽しもう。
そして夜は、少し明るいうちにバーベキューディナーを満喫し、暗くなってきたら、星空観賞タイムへ。自然の音に耳を澄ましながら、満天の星空とともに特別な時間を過ごしてみては。
〈Stella Snow Campia〉
住所|長野県下伊那郡売木村2551-1
電話|0260-31-0603
URL|https://stella-snowcampia.site/
料金|TINY HOUSE 1泊素泊まり1人9,900円~(2名利用時) *通年営業
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取材・文:松井 さおり、児玉 さつき 撮影:窪田 真一
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