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ゲーム感覚で街歩き、自然体験に、健康づくり。誰でも気軽に挑戦できる“ノルディックロゲイニング”って知っていますか?

ポールを使った簡単な歩行運動ノルディックウォーキングと、地図を見ながら時間内にチェックポイントを回り得点を集める競技ロゲイニング。このふたつがミックスしたノルディックロゲイニングの大会が長野県飯山市で開催。もしかしたら世界でも初かもしれない、本イベント。参加者の笑顔の秘密を探る。

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ノルディックロゲイニングって
どんなアクティビティ?

 

山々の緑が青々と威勢よく、水を張った田んぼが美しい原風景をつくる奥信濃の初夏。飯山駅にほど近い飯山市文化交流館『なちゅら』の前にはポールを手にした多くの人たちが集まっていました。子供や学生からシニアまで、本格的なスポーツウエアの人もいれば、カジュアルな普段着の人も。大会スタート前特有の緊迫した雰囲気はなく、誰が選手かもわからないような緩やかな空気感が漂います。

 

 

6月初旬、過ごしやすい気候のなか、なちゅらに集まった選手たち

 

 

選手たちは「ヨーイドン!」で一斉にスタートするわけではなく、準備が整った人から順次スタート。制限時間4時間のなかで、当日に配布された地図を見ながらできるだけ多くのチェックポイントをノルディックウォーキングスタイルで回り、得点を競うというシンプルな大会です。
ノルディックロゲイニングという聞き慣れない言葉の発案者は、クロスカントリースキーやノルディックウォーキングの講師として活躍するKOKUTOの服部正秋さん。ポールを使った歩行運動ノルディックウォーキングと、地図を元に時間内にチェックポイントを回るロゲイニングを組み合わせることを思い付いたそうです。本大会開催の背景を伺いました。

 

 

生まれ育った飯山市にスポーツ振興を目指す服部さん

 

 

「コロナ禍でもできることはないかなと考えたのがきっかけなんです。一同にたくさんの選手が密集しがちな大会がことごとく中止になるなかで、受付やスタート時間に幅を持たせ、広い範囲を個々に自由に歩くロゲイニングの特性と、コロナ禍で運動不足の人でも気軽に体験できるノルディックウォーキングのハイブリッドな大会であれば開催できるのではないか、と思いました」と服部さん。

ノルディックウォーキングは、日本ではシニアのスポーツという印象があるかもしれませんが、若い人のフィットネスにも最適、年齢や性別問わず誰でも楽しめるのだと言います。
実際、本大会には地元のクロスカントリースキー部の学生など、中高生も多数出場していました。今回は、出場者であり、長距離ランナーである「ダブルなっちゃん」に密着しながら、ノルディックロゲイニングの魅力を探ってみます。

 

 

山ノ内町を拠点に駅伝選手としても活躍するダブルなっちゃん

 

 

無料講習と好きな時間スタート
という初心者にやさしい大会

 

 

この競技で唯一必要な道具はこちら、ノルディックウォーキング用のポール。スキー用のポールと似ていますが、特徴は手がしっかりと固定できるストラップと、先端にゴムが付いていることで、歩行の大きなサポートとなります。

 

 

大会時はレンタルポールもあり。機能、デザインに富んだフィンランド製

 

大会の受付を終えると、希望者に向けて無料講習会が開かれました。ポールの持ち方から、正しい長さ、使い方を服部さんがレクチャーします。ポイントはポールを前につこうとするのではなく、あくまで自然な歩行の延長で、軽く握り、先端部を斜め後方にプッシュすること。

 

 

初めてポールに触れる参加者も多く、講習を受けて安心

 

1名で参加するソロ部門と2~5名でのグループ部門があり、参加者は総勢140名ほど。地図とポールがあれば、すぐにでもスタートできますが、ここで重要なのが作戦タイム。飯山市内に点在する35カ所のポイントをチェックし、どこをどんな順番で巡るか、計画を立てます。

 

 

地図を見ながら入念に戦略を立てるダブルなっちゃん

 

ルートを決めたダブルなっちゃん、いよいよスタートです。制限時間4時間の始まりは、時計の撮影がルール。ちなみにスタートの最終時刻は11時。朝寝坊さんはゆっくり出動しても良いのです。

 

 

受付前に設置された時計を撮影してスタート!

 

ゲーム感覚で地図を見ながら
チェックポイントを探す

 

 

なちゅら周辺の市街地を歩き始めます。選手たちは分散し、ポールを使って歩いているだけなので、はたから見たら競技中ということはわからず、トレーニングや散策をしているように見えます。早速チェックポイントのひとつ、藤村の文学碑を発見しました。

 

 

チェックポイントでは選手入りの写真撮影をすることがルール

 

 

文豪・島崎藤村は飯山を雪国の小京都と呼んだほど、飯山の市街地には多数の寺社があり、情緒豊かな街並みをつくります。チェックポイントに指定されているお寺や石碑も多く、寺巡りも楽しめてしまうのです。

 

 

荘厳な忠恩寺に飯山の歴史を感じる

 

また、飯山は長野県スキー発祥の地。冬はクロスカントリースキーヤーでもあるダブルなっちゃん、スキー関連のチェックポイントは押さえておきたいところ。妙専寺のスキー指導者像を見つけポイントを獲得するとともに、飯山のスキーの歴史を学びます。急な山道を登らないとクリアできないポイント、飯山シャンツェ(ジャンプ台)もポールを使ってサクサク登り、絶景を堪能!

 

 

遠くにジャンプ台を発見。飯山にスキーを伝えた住職・市川達譲とパチリ

 

途中休憩も自由!
絶景を見渡しながらウォーキング

 

 

スタート地点から5kmほど離れ、周辺も自然豊かな景色に変わってきました。途中、道の駅 千曲川『Café 里わ』でランチ休憩を取ります。そう、途中、お昼を食べたり、カフェでお茶をするのも自由! 優勝を狙っていたら足早にひとつでも多くのポイントを巡ることになりますが、こうして楽しみ半分での参加者も多いのが本大会のユニークなところ。ちなみに『Café 里わ』もチェックポイントのひとつなのです。

 

 

『Café里わ』では地産地消の美味しいランチをいただき、ポイントもゲット!

 

ランチ休憩でしっかりとパワーを養ったところで後半戦です。飯山市民だとしても通ったことがないであろう小道やあぜ道を歩いたり、ガイドブックには絶対に載らない記念碑がチェックポイントだったり。その土地の暮らしを垣間見るような新鮮な出会いがあります。見つけにくいポイントは、発見した時の喜びもひとしお。

 

 

チェックポイントは丘の上に立つ杉の木と農作業小屋

 

冬、クロスカントリースキーの練習で頻繁に飯山に訪れるというふたり。「いつも練習しているところは、夏はアスパラ畑だったなんて!」といった気づきもあり、冬は一面雪に覆われる飯山のグリーンシーズンを、競技中ということを忘れてしまうほど満喫していました。

 

 

どこまでも水田が続く景色は息を飲むほど美しい

 

あっという間に制限時間が迫り、ゴールへと急ぎます。時間切れで回れなかったポイントもあるけれど、充分な達成感でゴール! ふたりとも4時間も歩いたとは思えない爽やかな笑顔です。チェックポイントで撮影した写真とともに点数を計算して提出、果たして他チームはどのくらいのポイントを稼げたのでしょうか。リザルトは後日のお楽しみだそうです。(上位には豪華商品が届くとのこと!)

 

 

スタート地点に戻りゴール! 服部さんがお出迎え

 

ダブルなっちゃんは言います。 「ノルディックウォーキングは陸上トレーニングとして取り入れているくらいで、こういった使い方は初めてでした。でも、ポールがあるおかげで長時間歩いても全然疲れないし、普段は“ラン”がメインなので、景色を楽しみながら歩く競技というのがとても新鮮でした」。

 

 

参加賞はスキーの絵柄が入ったKOKUTOオリジナル手ぬぐい

 

 

ノルディックウォーキングの
醍醐味とは

 

 

ふたりは長距離ランナーなので、4時間のウォーキングといっても余裕が見えますが、普段運動をしていない人でもできるのでしょうか。服部さんに聞いてみます。 「実は運動習慣のない方や、運動嫌いな方こそ、挑戦してほしいんですよ。普段運動していない人にとって、4時間歩き続けるというのは大変なことなんですが、ポールがあれば歩けてしまうんです。ポールを使うことで、体重が分散するので膝、腰への負担が減り、歩くスピードも増します。誰でも気軽にできる有酸素運動です」。

 

 

一般的なウォーキングよりも全身運動になるノルディックウォーキング

 

 

ノルディックスキーの競技者、指導者として北欧フィンランドで学んだ経歴を持つ服部さんは続けます。 「ノルディックウォーキングはもともとクロスカントリースキーの夏場のトレーニングとしてフィンランドで発祥したスポーツなのですが、健康促進効果のおかげでフィンランドでは広く普及し、国民の20%が日常に取り入れているんです。ポールはスーパーマーケットでも売られているくらい! 日本でも飯山からノルディックの文化が広がっていったら嬉しいですね」。

 

 

車では見落としてしまう光景も徒歩だからこその発見がある

 

 

国内はもとより世界でもおそらく初開催となった飯山ノルディックロゲイニング。ゴールエリアではどの選手も充実した笑顔で、楽しかった!と口を揃えます。「また参加したい」という声とともに「自分たちの街でも開催したい!」という参加者も多かったそうです。
コロナ禍でも開催できる、地域活性化にも貢献、ローカルでもビジターでも楽しめる、ひとり参加者の受け入れも可能、交通規制は不要、運営側も少人数で対応可能、と大会主催側にとっても魅力溢れるイベント。今後、各地に伝播する可能性を十分に秘めています。
そして大会に参加しなくても、ノルディックウォーキングはすぐにでも取り入れられる運動習慣のひとつ。いつもの街も、初めての場所も、自然豊かな地も、ポール両手に歩いてみませんか。

 

 

文:尾日向 梨沙 / 撮影:清水 隆史

 

 

<著者プロフィール>
尾日向 梨沙
1980年、東京都生まれ。編集者/ライター。
早稲田大学第二文学部卒業後、13年間スキー専門誌『Ski』『POWDER SKI』(実業之日本社)などの編集を担当。2013年より同誌の編集長を務める。2015年よりフリーランスとなり、スノーカルチャー誌『Stuben Magazine』を創刊。2018年より藤沢市鵠沼の自宅を舞台に、歴史的建造物と周辺の緑の保存活動を開始。2020年に湘南から長野県飯山市に移住。スキーのあるライフスタイルを送りつつ、畑での野菜作り、雪国での太陽光発電の挑戦など、自然に寄り添った暮らしを目指す。

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