土の匂い、水の音。里から山へ、つぎつぎに咲く長野県の春の花

春の風が土の匂いや芽吹きの香りを運び、可憐な野の花も花木も一斉に芽吹く長野県の春。つぎつぎに開く花たちと新緑の競演は、自然そのものが春の訪れを祝福しているようです。

19241_ext_01_0_L

top photo:桜の名所である松本市の弘法山古墳

素朴な風景を彩り、春をことほぐ福寿草

冬が長い土地だからこそ、春の訪れはいっそう待ち遠しくうれしいものです。ひっそりとしていた里に、雪どけ水がとうとうと流れる音や鳥のさえずりが響き、草木がぷくぷくと芽吹くーー。春のきざしがあちこちに見えはじめます。2月の節分が終わると、雪を押しのけるように咲く福寿草の開花時期が気になります。南北に長い長野県では、2月下旬から4月にかけて、黄金色の大きな花が素朴な里を彩る風景が北上します。辰野町沢底地区の「福寿草の里」や松本市四賀地区の「赤怒田(あかぬた)福寿草群生地」など、県内各地の群生地が黄金色に輝きます。

雪とのコントラストが美しい福寿草の花。信州の早春を象徴する風景です

桜やアンズ、リンゴ、満開の花木に埋もれる

標高差によって異なりますが、長野県では標高の高い地域には4月になっても畑に雪が残っていたり、5月でも山々のてっぺんは真っ白。なんと、残雪の山を望みながらの桜見物ができますよ。
春といえば梅や桜が定番ですが、長野県にはそれ以外にも春を代表する花木がたくさんあるのを知っていますか。たとえば、飯綱町の桃の名所「丹霞郷(たんかきょう)」、全国有数の生産量を誇る長野市松代や千曲市のアンズ、県下各地の中山間地に見られるリンゴ。果樹の花の下でのお花見も長野県の春の楽しみです。花咲く果物畑が見られる農村のほのぼのとした風景には、桜の花見には見られない素朴な美しさを感じます。また、「コブシが咲いたら苗作りをする」というように、植物の開花は農作業の目安として長野県の暮らしに馴染んでいます。

山と高原が織りなす自然美と高山植物

複雑な地形と気象の変化に富んだ長野県では、高地でしか見られない高山植物もあれば、暖かい地方で見られる柚子もあり、実にさまざまな植物が豊かな生態系をつくっています。「春の妖精」と呼ばれるカタクリは、4月上旬から5月中旬まで立科町の古刹・津金寺など、里山から高原、深山まで全県で見られます。飯山市の「斑尾高原(沼ノ原湿原)」や長野市の「奥裾花自然園」など、4月下旬~5月上旬の高原ではミズバショウのほかリュウキンカ、ニリンソウなど、清楚な花たちに出合えます。白馬エリアでは、「白馬ざぜん草園」や「居谷里湿原」「姫川源流自然探勝園」などで、高山に残る残雪の造形「雪形」とともに、カタクリやミズバショウといった花々を撮影してみてはいかがでしょう。

「戸隠森林植物園」のミズバショウ。高山の湿地帯で春の雪どけから初夏にかけて咲きます

花々と草木、その生育環境を守りましょう

春先は遊歩道や畑の畔など、ところどころに残雪があり、雪どけでぬかるんでいる場所もあります。歩く際は足裏の感覚を意識して、スリップしないように気をつけます。事前に天候やアクセス情報を確認し、長靴やトレッキングシューズ、レインウェア、防寒グッズを適宜用意しましょう。
写真撮影のために湿原に入るのは、貴重な植物の生育環境を傷めることになるので避けましょう。一般の農園なども同様です。美しい花々を長く楽しむためにも、福寿草やフキノトウなどの野山に自生する植物も、むやみに採取することは控えます。

「居谷里湿原」のリュウキンカ。ミズバショウの開花を追いかけるように、小さな黄色い花が湿原に咲き誇ります

閲覧に基づくおすすめ記事

MENU