【長野】冬の低山登山 魅力と注意点は? 初心者にもおすすめの低山4選

長野県で登山と言えばアルプスなどの3000m級の山を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか?山岳県の長野には、高山だけでなく低山もたくさんあります。高山が深い雪に覆われる冬こそ低山登山のベストシーズン。行程も短い山が多く、積雪も少なめなので冬登山初心者や体力に自信がない人にもおすすめです。低山を含め、県内の285山340コースをまとめた『信州山歩き地図』(信濃毎日新聞社)の著者であり、元長野県警察山岳遭難救助隊長の中嶋豊さんに、冬の低山登山の魅力や注意点、冬に登るおすすめの山を聞いてきました。

19172_ext_01_0_L

低山登山は“秋~春先”がベストシーズン

編集部
本日は登山について色々と勉強しにまいりました!よろしくお願いいたします!
中嶋さん
お役にたてればと思っています。どうぞよろしく。
中嶋豊(なかじま・ゆたか)氏:1976年長野県警察山岳遭難救助隊員に指名。機動隊、航空隊等で遭難救助に多数出動。96~98年県警山岳遭難救助隊第9隊長。2013年退職。登山歴は30年以上。『信州山歩き地図Ⅰ~Ⅳ』、『長野県の名峰百選上・下』(いずれも信濃毎日新聞社)執筆。その他、パンフレットや案内地図作成、山歩き講演を多数手がける。
編集部
早速ですが標高があまり高くない山“低山”とか“里山”とも呼ばれて言い方は色々ありますがそれぞれ定義とかあるのでしょうか?
中嶋さん
いきなり難しい質問ですね。1000m以下とか1500m以下とか、頂上まで片道2時間程度とか、いろいろ言われていますが、明確な定義はないように思います。アルプスと聞いたらほとんどの方が“高山”とイメージすると思いますが、そういった山とは違い里山は「生活感がある身近な山」と低山は「標高が低い山」いうイメージでしょうか。登山の難易度もほとんどが初級レベルの山をさしていると思います。
編集部
中嶋さんは県内のさまざまな山を登られていますが、ズバリ“低山登山の魅力”ってどういったことでしょうか?
中嶋さん
やはり、思い立った時に気楽に登れるところでしょうか、冬は、3000m級の山は深い雪で閉ざされ、そういった山への登山は高い技術や体力、経験が必要なのでハードルは大変高くなります。一方、低山は積雪も少なく、登山初心者でも比較的手軽に楽しめます。夏は高山へ行って、秋~春先は低山へという方も多くいるようです。県内にはたくさんの山がありますので、季節ごとに年中楽しめますよ。低山は、秋~春先にかけてがベストシーズンでしょう。
また、私くらいの年齢になると、低山(里山)に登ると昔近所の山で遊んだ記憶なんかが、よみがえってくるんですよ。頂上から集落を見下ろすと、故郷を思い出して懐かしさを感じるなんてこともあるんです。そんなことも魅力の一つでしょうか。
標高が低くても展望が良い山はたくさん
編集部
確かに、真夏に1000mちょっとの山を登ったら暑くて大変だった経験があります。木も鬱蒼と茂っていて全く展望もなく地獄のような山行でした。
中嶋さん
はははっ。それはそうでしょう。夏場の低山は暑いですし、草藪や虫も多いのであまりおすすめしませんね。今の時期は落葉しているので木々の隙間からでも十分展望を楽しめますし、空気も澄んでいて気持ちが良いですよ。
この時期は木々の隙間から展望を楽しめ、虫も少ないので快適です

低山でも油断は厳禁
登山に必要な装備と準備はしっかりと

編集部
最近は低山での遭難が多いと聞きます。どんな点に注意すればよろしいでしょうか?
中嶋さん
まず「低山だから」とか「近所の山だから」という油断は禁物です。どんなに標高が低くでも山は山です。道迷いや崖崩れ、滑落、スズメバチやマダニなどの害虫、クマやイノシシなどの野生動物等々。山を甘く見てはいけません。危険がたくさんあることをしっかり認識しましょう。
登山口には熊出没を警告する看板をよく見かけます
編集部
「行程も短いから」としっかり計画を立てずに行くケースもありそうですね。
中嶋さん
そうですね。低山に行くときでも登山計画を立てて、登山届(登山計画書)を出しましょう。便利なもので登山計画書は インターネットからでも提出できます。また、家の近くの山などに出かけるときにも、家族や身近な人に行先を伝えておきましょう。行方不明や事故などが起きてしまった時など、捜索や救助に向かう際、どこに行ったのかわからなければ対応のしようがありません。万が一の時を考えて携帯やスマホも忘れずに持っていきましょう。
スマートフォンからでも簡単に登山届が提出できる
編集部
登山計画を作って、届け出することは、登山をする人の基本中の基本ですよね。注意点は“高山”も“低山”もそれほど変わらないのですね。
中嶋さん
その通りです。また、どんな山へ行く場合でも登山の基本装備はしっかり準備しましょう。冬に登山する場合は積雪がなくても寒いものです。特に風が吹くと体感温度は一気に下がりますので、風を防げる暖かい防寒着も用意しましょう。また、山の上部や北側斜面、谷間や日陰などでは思った以上に積雪が多く、凍結している所もあります。アイゼン等の装備がない場合や技術的に不安を感じたら、迷わず引き返してください。
麓は積雪がなくても、山頂や日陰は積もっていることも
編集部
その他、特に注意することはありますか?
中嶋さん
“低山”や“里山”と呼ばれているような山は地元住民の皆さんの生活とも深いかかわりがあります。特にきのこシーズンや山菜の時期になると『入山禁止』になる山もあります。そういった山には登らず、もちろんきのこや山菜の採取もしないでください。(罰せられることもありますので注意が必要です)また登山口に行くまでに集落の狭い道を通行する場合もありますので車の運転や駐車場所には十分に気を付けてくださいね。
落ち葉が堆積している場所はすべりやすいので注意する

元県山岳救助隊長に聞いた 
冬こそ登りたい!長野県のおすすめの山4選

編集部
今まさに低山登山のベストシーズンですね。特におすすめの山をいくつか紹介いただけますか?
中嶋さん
山頂からの展望が特に優れている山をいくつか紹介しますね。どれも初心者向けで冬でも比較的雪は少ないのでおすすめですよ。

〇北信エリア〇
虫倉山(むしくらやま)(長野市)※不動滝コース
おすすめポイント:北アルプス、戸隠連峰などの展望が素晴らしい
【標高】1378m
【総歩行時間目安】上り1時間40分、下り1時間10分
【登山口】長野市中条御山里 不動滝 ※冬場は「虫倉山道しるべ」から徒歩プラス片道30分

北アルプスを一望できる

虫倉山についてもっと知りたい方はコチラ

〇東信エリア〇
太郎山(たろうやま)(上田市)※表参道コース 
おすすめポイント:上田市街、北アルプス、八ヶ岳、富士山の展望が素晴らしい
【標高】1266m
【総歩行時間目安】1時間15分、下り1時間
【登山口】上田市山口表参道口

山頂手前に神社がある太郎山

太郎山についてもっと知りたい方はコチラ

〇中信エリア〇
光城山(ひかるじょうやま)(安曇野市)
おすすめポイント:安曇野、常念岳などの展望が良い、春は桜が尾根を咲き上がり見事
【標高】911.7m
【総歩行時間目安】上り1時間、下り40分
【登山口】安曇野市豊科光

春には見事な桜が咲き誇ります

光城山について詳しく知りたい方はコチラ

〇南信エリア〇
高烏谷山(たかずやさん)( 伊那市・駒ヶ根市) 
おすすめポイント:中央アルプス、伊那谷の展望が素晴らしい
【標高】1331m
【総歩行時間目安】上り1時間、下り50分
【登山口】駒ケ根市高烏谷神社

頂上からは中央アルプスと伊那谷が望める ※写真提供:中嶋さん

高烏谷山について詳しく知りたい方はコチラ

※天候等の状況により登山道が積雪や凍結している場合もあります。必要に応じてアイゼン等の装備を着用していただくか、入山を控えてください。下山時のスリップに注意が必要です。また、単独登山は控え、複数人で出かけてください。

<その他おすすめの山>
若穂太郎山(長野市)標高997m 、葛山(長野市)標高812m、鴨ヶ岳(中野市)標高688m、独鈷山(上田市)標高1266m、鷹狩山(大町市)標高1167m、霧訪山(塩尻市)標高1305m、風越山(飯田市)標高1535.1m、守屋山(伊那市)標高1651m

さぁ!冬の山へ! 
持ち物や服装のポイント

山に行く場合、たとえ行程が2時間程度の簡単な山でもしっかり準備が必要です。高山も低山も基本装備は変わりませんが、中嶋さんのアドバイスをもとに冬の低山登山に必要なものを中心に紹介します。

<持ち物・装備>
・登山靴(必要に応じてアイゼン等を携行する)
・ザック
・スマートフォン(携帯電話)、あればモバイルバッテリー
 万が一の場合に連絡手段としても必須です。GPS地図アプリを入れておくと便利です。充電切れには注意です。

アプリをダウンロードしておけば、スマートフォンで地図や位置情報も確認できる

・レインウェア(雨具)
 雨具は風も通しにくいため、防風・防寒着としても役立ちます。
・防寒具(フリースやダウン)
 一度体温が下がってしまうと簡単には戻りません。休憩時などは冷えやすくなるため特に注意が必要です。コンパクトに収納できるものがおすすめです。
・手袋(冬用のもの)、帽子
 フリース素材など冬用を選ぶと暖かいです。必要に応じて耳当てやネックウォーマーも併用しましょう。
・行動食(あめ玉やビスケットなど)
 行程が短くても、万が一の事故に備えて食料は必ず持っていきましょう。
・飲み物(水やスポーツドリンク)
 ペットボトルなどが便利です。
・鳴り物(熊鈴、笛、ラジオ等)
・その他(救急キット、ゴミ袋など)
※装備は一例です。状況に応じて必要なものを追加してください。

<登山へ行く前の準備・心構え>
・登山計画書の提出
・日頃の体調管理
 →体調に少しでも不安がある場合は入山を控える

魅力がたくさんある冬の低山登山。登山をする上での基本的な注意点を守れば初心者でも手軽に楽しめます。
編集部では中嶋さんにおすすめされた「虫倉山」へ早速登ってきました。詳しくはコチラをご覧ください。

準備と装備は万全に、低山を楽しみましょう

【まとめ】

・長野県内では高山から低山まで幅広く1年中登山が楽しめる!
・低山登山は冬を含む秋~春先がベストシーズン!初心者にもおすすめ
・冬の低山なら雪も少なめ!澄んだ空気、虫少なめ、落葉で視界◎
・低山だからと甘く見ないで!装備と準備は万全に

 

閲覧に基づくおすすめ記事

MENU