登山者のオアシス、山小屋のいろは 絶景と癒しの魅力あふれる山小屋泊登山
登山をしない人や泊まったことがない人にとっては縁遠い「山小屋」。
しかし、基本を知っていれば大丈夫。山小屋泊の魅力をお届けします。
山をより楽しむために、山小屋へ
山に泊まる魅力といえば、まずは「夜」。刻々と色をかえてゆく夕焼けのグラデーションや満天の星が広がる夜空は吸い込まれてしまいそうなほどの美しさ。そして「朝」。雲海から昇るご来光は、息を呑むほど。夜と朝の絶景が楽しめるのは、日帰り登山では味わえない、山に泊まるからこその魅力です。
山に泊まる方法は2パターン。ひとつはテント泊、そしてもうひとつが山小屋泊です。双方に魅力がありますが、ここではテントより手軽で、かつ長野県に160以上あるという山小屋の魅力をご紹介します。
まずは安心感。天候の変わりやすい山岳地帯にあって、万が一荒天になっても安心です。登る先に山小屋が見えたときの安堵感も計り知れません。食料やテントなどの重い荷物を持たずに山に登れることも登山者にとって大きな魅力です。また、山小屋では天気の急変に備えて早めの到着を心がける必要があるため、館内で過ごす時間が長い分、スタッフや登山者同士の交流を図る機会が多くあります。食堂で隣り合わせた人とこれまでの山行の話で盛り上がり、次の登山を一緒に登るなど、その後も交流が続いているという話を耳にすることも少なくありません。
休憩室に備えられた山に関する本を読んだりと、ゆったりとした時間を送れる楽しみもあります。携帯の電波もほとんど届かない環境で、ものがあふれすぎている日常生活を離れて自分を見つめ直すこともできます。
なかには食事がおいしいと評判の山小屋や入浴ができるところまであり、サービスも多種多様。北アルプスの「白馬鑓温泉小屋」や八ヶ岳の「本沢温泉」など、なんと温泉つきの山小屋もあります。バッジや手ぬぐいなど、個性的なオリジナルグッズの販売も山小屋で見逃せないポイントです。
食事も楽しめる個性豊かな山小屋の魅力
なかでも山小屋のごはんの楽しみは大切なポイントです。山小屋ごはんって美味しいの?と思う人が多いようですが、名物料理を提供する山小屋が多くあります。
北アルプス「船窪小屋」や「朝日小屋」は、おかみさんの手作り料理が評判。燕岳の「燕山荘」ではケーキを、「合戦小屋」では夏場にスイカを提供しています。
八ヶ岳の「赤岳鉱泉」では夕食の鉄鍋ステーキが人気で、「オーレン小屋」は桜鍋(馬肉のすき焼き)が名物。「高見石小屋」の看板メニュー・揚げパンや「しらびそ小屋」の厚切り薪ストーブトーストも人気を集めています。
〝最後の秘境〟と呼ばれる北アルプス最奥部、黒部源流の稜線上に位置する「三俣山荘」では夕食のジビエシチューが好評。昼の部では35年前から続く名物のサイフォンコーヒーが評判です。ほかにも「白馬山荘」のビーフシチューや、登山家の田部井淳子さんも絶賛したという「北穂高小屋」の豚の生姜焼きなど、各山小屋に名物料理が。
食事を目的に山小屋に泊まるのも登山のひとつの楽しみ方です。売店では軽食や飲み物、アルコールなども販売しています。ただし高所はお酒が回りやすいので酒量にはご注意を。
なお、食糧や物資はヘリコプターや歩荷が苦労して運び上げているため、時期や状況によって食事の内容が変わることも。必ず事前に確認したうえで、山小屋の特別なひとときを楽しみましょう。
日常とは異なる山小屋の過ごし方の注意ポイント
山小屋の魅力は数あれど、それでも「山小屋」と聞くと登山上級者の宿泊場所、緊急避難場所というイメージがあり、ハードルが高いと思う人も多いのではないでしょうか。もちろん、荒天時の避難場所というのは忘れてはならない山小屋の役割ですが、基本を押さえておけば初めての山小屋でも安心です。逆に、基本を押さえておかないと肩身の狭い思いをすることもあるかもしれません。事前に基本知識を備えておくことで、安心して楽しい山小屋時間を過ごしましょう。
部屋のこと
多くが雑魚寝の相部屋で、広さもさまざま。混雑時は用意されている1組の布団を2人以上で使う場合もあります。というのも、遭難防止のため、宿泊希望者を簡単には断らない山小屋が多いからです。
夕食後は早めに寝る人も多いため、会話の音量や荷物整理の音などにも注意しましょう。出発時にはときどき靴やザックの取り違えが起こるため、名前を書いたタグなどを印につけておくと安心です。
予約のこと
混雑時や荒天時は廊下や共同スペースまで寝床になることがあります。予約優先なので予約をしてから出かけるのが安心です。
水回りのこと
トイレは水洗ではないところが大半で、汚物を分解する微生物を利用したバイオトイレや汚物槽に貯めるタイプのトイレなどがあります。宿泊客以外は協力金を払って使いたいものです。そして水は貴重な資源。使いすぎないように気をつけ、歯磨き粉などの使用も環境によくないため控えましょう。
到着時間のこと
山の天気は急変しやすいので15時までには到着しましょう。遅くなると山小屋にもほかの宿泊者にも迷惑がかかり、翌日の自分の行動にも支障が出ます。
閲覧に基づくおすすめ記事