飯田市の南、天竜川の西岸に位置する下伊那郡下條村に、地図に載らないほど小さな湖「おおぐて湖(大湫湖)」があります。面積は約3ha、全周は約500m。この湖のほとりに整備された“知る人ぞ知る”キャンプ場が、〈おおぐて湖キャンプ場〉です。
ここは元々、湖畔に建つ旅館「しらさぎ荘」が釣り人のために細々と営んでいたキャンプ場でした。そんななか2016年にしらさぎ荘の後継ぎである佐々木春仁さんがこの地へ戻り、おおぐて湖の箱庭のようなロケーションに自身のライフワークである「音楽」のエッセンスを加えたことで、唯一無二のキャンプ場に生まれ変わったわけです。そんな〈おおぐて湖キャンプ場〉では、どのようなアウトドア体験ができるのか。佐々木さんへのインタビューを通してお届けします。
静けさを味わえる湖と音楽に浸れる森がある
〈おおぐて湖キャンプ場〉場内には、「湖畔サイト」と「林間サイト」という2種類のキャンプサイトがあります。コンパクトなキャンプ場ながら、湖と森というまったく異なるロケーションのキャンプサイトを選べることは、キャンパーにとって大きな魅力でしょう。キャンプ場全体のコンセプトは“チルレイク、パーティーフォレスト”。オーナー佐々木さんは、コンセプトに込めた思いについてこう語ります。
「チルレイクというのは、湖畔でゆったり寛ぐ、という意味です。湖畔の周りに常設しているハンモックに身を委ねたり、早朝の小鳥の鳴き声や風の音などを聞いたりしながらゆっくりしてほしいですね。パーティーフォレストのほうは、自分自身が東京でDJパフォーマンスやパーティーの主催をしていたので、もっと盛り上がりたいという思いがあって、それを裏山のなかに実現しました」
湖畔も裏山の森も、チェーンソーやショベルカーを使いDIYで整備したという佐々木さん。今年の春には、湖畔サイトから林間サイト内へ音響完備・冷暖房完備のゲル「COSMOS」を移設し、静かにすごしたい人と音楽を聴きたい人が共存できる環境を整えています。
フィッシング、カヌー、湖畔ハイキング。湖で楽しめる多様なアクティビティ
チルレイクをコンセプトとした湖周辺では、水辺ならではの、さまざまなアクティビティを体験することができます。
じつはこのおおぐて湖は、ブラックバスやトラウトマスが共生している稀少な釣り場として釣り人たちに知られている穴場のスポット。時間ごとに設定された利用料を支払えば、キャッチ&リリースでルアーフィッシングやフライフィッシングを体験することができます。運や腕次第では、50㎝以上の大物にも出会えるかもしれません。
さらに今年の夏からは、カナディアンカヌーという3人乗りの大きな木製のカヌーがキャンプサイトとセットになったプランもスタート。サイトからカヌーに乗り入れることができ、湖上の時間を楽しむことができます。
「おおぐて湖は全周500mくらいの湖なので、大きな湖と違って安心感がありますし、気軽にぐるっと散策することもできます。子連れのキャンパーの方にも、安心して楽しんでもらえるのではないでしょうか」
森のクラブ「COSMOS」で非日常感あふれる音楽体験
湖畔から100mほど裏山へ入ったところに、パーティーフォレストをコンセプトとする林間サイトがあります。こちらは湖畔サイトとは打って変わって、すべてのテントサイトが360度森に囲まれているロケーション。現在進行形で佐々木さんが開拓している最中で、少しずつ理想のエリアへと近づけているそうです。
なかでも注目すべきは、森のなかに鎮座する日本最大級の大型ゲル「COSMOS」。内部には煌めくミラーボールと佐々木さんが選び抜いた本格的な音響機材が揃い、さながらクラブのよう。おおぐて湖キャンプ場が主催する野外フェス「nu position」などのイベント時におけるステージとして、またはアーティストのレコーディングスタジオとして使われるほか、ヨガや瞑想といったチルアウト体験をする場としてもこのゲルが活用されています。
「僕は20代のとき、野外で羽目を外して遊んでいたタイプの人間です(笑)。若い世代の人たちにもここへ来てもらって、自然のなかで解放感を満喫してもらいたいですね」
キャンプ泊より快適で旅館泊よりワイルドな「旅館グランピング」
〈おおぐて湖キャンプ場〉には、しらさぎ荘のオリジナル宿泊プラン「旅館グランピング」という珍しいサービスもあります。和室の客室ごとに広々とした「星見テラス」が付いていて、キャンプ泊に慣れていない人でも、BBQをしたりハンモックに寝そべったりと気軽にアウトドアを楽しめるのです。食材付きのBBQプランで、準備片付けを施設にお任せで、便利にアウトドアを満喫することも可能。キャンプ泊の利用が落ち着くシーズンでも、旅館グランピングは安定的に予約が入っていると佐々木さんは言います。
「お子様連れのご夫婦の場合、お父さんはアウトドアで焚き火がしたいけど、お母さんは建物の安心感のあるなかで宿泊したい、といったニーズもあると思います。うちの旅館グランピングなら、どちらのニーズもwin-winで叶えることができる。受け皿の広いサービスがあるというところは、ほかのキャンプ場にはない魅力になっているのかなと思います」
一般的なキャンプ場にはない、独自の視点がユニークで斬新な〈おおぐて湖キャンプ場〉。お盆期間中にはモーニングヨガやバードコールづくり体験、アコースティックLIVEなどの企画が満載のイベント「Lake Oogute Summer Organic Week 2024」が開催される予定で、以降もさまざまイベントを計画中とのこと。興味あるイベントがあれば、まずはそれをきっかけにして、この湖と森のキャンプ場へ出かけてみてはいかがでしょうか。
Information
【おおぐて湖キャンプ場】
住所:下伊那郡下條村睦沢7144
電話:0260-27-2265
HP:https://www.lake-oogute.club/
Instagram:https://www.instagram.com/lake_oogute.camp/
※旅館グランピングのサービスは、「おおぐて湖畔しらさぎ荘」へお問い合わせください。
撮影:新井涼平 文:松元麻希
佐々木 春仁 / Haruhito Sasaki
下伊那郡下條村生まれ
下條開発株式会社 代表取締役
おおぐて湖キャンプ場オーナー
DJ。高校卒業後、上京し音響の専門学校を経て、様々な野外フェスやアウトドア・パーティに参加。パーティ・カルチャーのマテルアルを吸収しながら、空間デザインや企画コンテンツの制作を学ぶ。デザイン制作会社での勤務を経て、フリーデザイナーに。九州・上天草でのローカルリノベーション・プロジェクトの立ち上げに参加。実家の事業を継ぐべく帰省し、おおぐて湖畔の観光開発に取り組む。近年は、湖畔開発のコンセプトを「Chill Lake,Party Forest」と定め、類まれなロケーションと自然環境を活かした、パーティ・ベニューの開発に勤しんでいる。