特集『レイクリゾート』②|湖と森と音楽を満喫する特別なアウトドア体験を(おおぐて湖キャンプ場 佐々木春仁)

飯田市の南、天竜川の西岸に位置する下伊那郡下條村に、地図に載らないほど小さな湖「おおぐて湖(大湫湖)」があります。面積は約3ha、全周は約500m。この湖のほとりに整備された“知る人ぞ知る”キャンプ場が、〈おおぐて湖キャンプ場〉です。

 

ここは元々、湖畔に建つ旅館「しらさぎ荘」が釣り人のために細々と営んでいたキャンプ場でした。そんななか2016年にしらさぎ荘の後継ぎである佐々木春仁さんがこの地へ戻り、おおぐて湖の箱庭のようなロケーションに自身のライフワークである「音楽」のエッセンスを加えたことで、唯一無二のキャンプ場に生まれ変わったわけです。そんな〈おおぐて湖キャンプ場〉では、どのようなアウトドア体験ができるのか。佐々木さんへのインタビューを通してお届けします。

地元出身のミュージシャンを中心に、実力派アーティスト達の演奏やパフォーマンスが湖畔で楽しめる(写真提供:おおぐて湖キャンプ場)

毎年5月のベストシーズンに、キャンプ場主催で野外音楽イベントを開催している(写真提供:おおぐて湖キャンプ場)

地元出身のミュージシャンを中心に、実力派アーティスト達の演奏やパフォーマンスが湖畔で楽しめる(写真提供:おおぐて湖キャンプ場)

毎年5月のベストシーズンに、キャンプ場主催で野外音楽イベントを開催している(写真提供:おおぐて湖キャンプ場)

静けさを味わえる湖と音楽に浸れる森がある

〈おおぐて湖キャンプ場〉場内には、「湖畔サイト」と「林間サイト」という2種類のキャンプサイトがあります。コンパクトなキャンプ場ながら、湖と森というまったく異なるロケーションのキャンプサイトを選べることは、キャンパーにとって大きな魅力でしょう。キャンプ場全体のコンセプトは“チルレイク、パーティーフォレスト”。オーナー佐々木さんは、コンセプトに込めた思いについてこう語ります。

 

「チルレイクというのは、湖畔でゆったり寛ぐ、という意味です。湖畔の周りに常設しているハンモックに身を委ねたり、早朝の小鳥の鳴き声や風の音などを聞いたりしながらゆっくりしてほしいですね。パーティーフォレストのほうは、自分自身が東京でDJパフォーマンスやパーティーの主催をしていたので、もっと盛り上がりたいという思いがあって、それを裏山のなかに実現しました」

 

湖畔も裏山の森も、チェーンソーやショベルカーを使いDIYで整備したという佐々木さん。今年の春には、湖畔サイトから林間サイト内へ音響完備・冷暖房完備のゲル「COSMOS」を移設し、静かにすごしたい人と音楽を聴きたい人が共存できる環境を整えています。

オーナーの佐々木春仁さん。下條村出身で、高校卒業後に都内の音響専門学校へ進学。DJやイベンターとしての活動を続けながら、渋谷楽器店勤務、障害者の自立生活支援、デザイン&WEB制作、野外フェスの空間デザインや装飾など、さまざまな職を経験し、2016年に下條村へ戻ってきた

湖畔に常設されたハンモックに揺られ、自然の音に耳を澄ませる (写真提供:おおぐて湖キャンプ場)

オーナーの佐々木春仁さん。下條村出身で、高校卒業後に都内の音響専門学校へ進学。DJやイベンターとしての活動を続けながら、渋谷楽器店勤務、障害者の自立生活支援、デザイン&WEB制作、野外フェスの空間デザインや装飾など、さまざまな職を経験し、2016年に下條村へ戻ってきた

湖畔に常設されたハンモックに揺られ、自然の音に耳を澄ませる (写真提供:おおぐて湖キャンプ場)

フィッシング、カヌー、湖畔ハイキング。湖で楽しめる多様なアクティビティ

チルレイクをコンセプトとした湖周辺では、水辺ならではの、さまざまなアクティビティを体験することができます。

 

じつはこのおおぐて湖は、ブラックバスやトラウトマスが共生している稀少な釣り場として釣り人たちに知られている穴場のスポット。時間ごとに設定された利用料を支払えば、キャッチ&リリースでルアーフィッシングやフライフィッシングを体験することができます。運や腕次第では、50㎝以上の大物にも出会えるかもしれません。

さらに今年の夏からは、カナディアンカヌーという3人乗りの大きな木製のカヌーがキャンプサイトとセットになったプランもスタート。サイトからカヌーに乗り入れることができ、湖上の時間を楽しむことができます。

 

「おおぐて湖は全周500mくらいの湖なので、大きな湖と違って安心感がありますし、気軽にぐるっと散策することもできます。子連れのキャンパーの方にも、安心して楽しんでもらえるのではないでしょうか」

車の乗り入れができない玄人向けのキャンプサイト。もちろんアクティビティをせず、自然に囲まれた環境のなかで焚き火をするだけで充分に楽しい (写真提供:おおぐて湖キャンプ場)

カヌーの利用可能時間は朝7時半から夕方16時半まで。貸し出しのライフジャケットを着用して乗ることができる

車の乗り入れができない玄人向けのキャンプサイト。もちろんアクティビティをせず、自然に囲まれた環境のなかで焚き火をするだけで充分に楽しい (写真提供:おおぐて湖キャンプ場)

カヌーの利用可能時間は朝7時半から夕方16時半まで。貸し出しのライフジャケットを着用して乗ることができる

森のクラブ「COSMOS」で非日常感あふれる音楽体験

湖畔から100mほど裏山へ入ったところに、パーティーフォレストをコンセプトとする林間サイトがあります。こちらは湖畔サイトとは打って変わって、すべてのテントサイトが360度森に囲まれているロケーション。現在進行形で佐々木さんが開拓している最中で、少しずつ理想のエリアへと近づけているそうです。

 

なかでも注目すべきは、森のなかに鎮座する日本最大級の大型ゲル「COSMOS」。内部には煌めくミラーボールと佐々木さんが選び抜いた本格的な音響機材が揃い、さながらクラブのよう。おおぐて湖キャンプ場が主催する野外フェス「nu position」などのイベント時におけるステージとして、またはアーティストのレコーディングスタジオとして使われるほか、ヨガや瞑想といったチルアウト体験をする場としてもこのゲルが活用されています。

 

「僕は20代のとき、野外で羽目を外して遊んでいたタイプの人間です(笑)。若い世代の人たちにもここへ来てもらって、自然のなかで解放感を満喫してもらいたいですね」

自身もDJとしてアーティスト活動を続けている佐々木さん

木々に囲まれていることもあり、ゲル内部で爆音を流しても湖畔までは音がまったく届かない。事前予約をすれば貸切での利用も可

京都のミラーボール作家に制作をお願いした、芸術的なこだわりのミラーボール。天井上部の丸窓から光が射し込めば、そのミラーボールが外光を反射して神秘的な空間に(写真提供:おおぐて湖キャンプ場)

天井に設置されたいくつものスピーカーの効果で、頭上から音が降ってくるような不思議な感覚を味わえる(写真提供:おおぐて湖キャンプ場)

自身もDJとしてアーティスト活動を続けている佐々木さん

木々に囲まれていることもあり、ゲル内部で爆音を流しても湖畔までは音がまったく届かない。事前予約をすれば貸切での利用も可

京都のミラーボール作家に制作をお願いした、芸術的なこだわりのミラーボール。天井上部の丸窓から光が射し込めば、そのミラーボールが外光を反射して神秘的な空間に(写真提供:おおぐて湖キャンプ場)

天井に設置されたいくつものスピーカーの効果で、頭上から音が降ってくるような不思議な感覚を味わえる(写真提供:おおぐて湖キャンプ場)

キャンプ泊より快適で旅館泊よりワイルドな「旅館グランピング」

〈おおぐて湖キャンプ場〉には、しらさぎ荘のオリジナル宿泊プラン「旅館グランピング」という珍しいサービスもあります。和室の客室ごとに広々とした「星見テラス」が付いていて、キャンプ泊に慣れていない人でも、BBQをしたりハンモックに寝そべったりと気軽にアウトドアを楽しめるのです。食材付きのBBQプランで、準備片付けを施設にお任せで、便利にアウトドアを満喫することも可能。キャンプ泊の利用が落ち着くシーズンでも、旅館グランピングは安定的に予約が入っていると佐々木さんは言います。

 

「お子様連れのご夫婦の場合、お父さんはアウトドアで焚き火がしたいけど、お母さんは建物の安心感のあるなかで宿泊したい、といったニーズもあると思います。うちの旅館グランピングなら、どちらのニーズもwin-winで叶えることができる。受け皿の広いサービスがあるというところは、ほかのキャンプ場にはない魅力になっているのかなと思います」

清潔感のある畳敷きの和室。幼い子どもはもちろん、高齢の両親なども安心して連れて来ることができる

旅館グランピング用の客室がある建物は、斜面に沿って客室が階段状に並ぶおもしろい造りに。蚊帳付の東屋もあり、気軽にアウトドアやBBQを満喫できる

清潔感のある畳敷きの和室。幼い子どもはもちろん、高齢の両親なども安心して連れて来ることができる

旅館グランピング用の客室がある建物は、斜面に沿って客室が階段状に並ぶおもしろい造りに。蚊帳付の東屋もあり、気軽にアウトドアやBBQを満喫できる

一般的なキャンプ場にはない、独自の視点がユニークで斬新な〈おおぐて湖キャンプ場〉。お盆期間中にはモーニングヨガやバードコールづくり体験、アコースティックLIVEなどの企画が満載のイベント「Lake Oogute Summer Organic Week 2024」が開催される予定で、以降もさまざまイベントを計画中とのこと。興味あるイベントがあれば、まずはそれをきっかけにして、この湖と森のキャンプ場へ出かけてみてはいかがでしょうか。

Information

【おおぐて湖キャンプ場】

住所:下伊那郡下條村睦沢7144

電話:0260-27-2265

HP:https://www.lake-oogute.club/

Instagram:https://www.instagram.com/lake_oogute.camp/

※旅館グランピングのサービスは、「おおぐて湖畔しらさぎ荘」へお問い合わせください。

撮影:新井涼平  文:松元麻希

Profile

佐々木 春仁 / Haruhito Sasaki

下伊那郡下條村生まれ

下條開発株式会社 代表取締役

おおぐて湖キャンプ場オーナー

DJ。高校卒業後、上京し音響の専門学校を経て、様々な野外フェスやアウトドア・パーティに参加。パーティ・カルチャーのマテルアルを吸収しながら、空間デザインや企画コンテンツの制作を学ぶ。デザイン制作会社での勤務を経て、フリーデザイナーに。九州・上天草でのローカルリノベーション・プロジェクトの立ち上げに参加。実家の事業を継ぐべく帰省し、おおぐて湖畔の観光開発に取り組む。近年は、湖畔開発のコンセプトを「Chill Lake,Party Forest」と定め、類まれなロケーションと自然環境を活かした、パーティ・ベニューの開発に勤しんでいる。