南信エリアの豊丘村(とよおかむら)は、天竜川によって削られた河岸段丘に沿って広がる人口6,000人ほどの村です。豊かな土壌に恵まれ、美しい田園風景や、年間を通じておいしい農産物が楽しめます。豊丘村の観光協会が運営している「とよおか旅時間」では、五感を使って自然を満喫できる様々なサイクルガイドツアーを企画中。今回は、サイクリングをしながら四季折々のフルーツを収穫し、もぎたてフルーツをカフェに持ち込んでスイーツとして食べられる「フルーツスイーツプラン」を体験してきました。「とよおか旅時間」の頼れるガイド、矢野智志(やの・さとし)さんと一緒に、村の魅力がぎゅっと詰まった女子旅に出発です。
村の素敵を詰め込んだ、つながり育むサイクリングツアー
豊丘村の特徴は、なんといっても年中何かしらの果物が採れるところ。まだ寒さも厳しい2月に真っ赤なイチゴが採れはじめると、そこからさくらんぼ、もも、ぶどう、なし、りんご、柿など、途切れることなく果樹が実をつけます。果樹栽培がはじまったのは昭和40年代から終わりにかけて。養蚕に必要な桑畑が広がっていた大地を開墾し直し、農園が増えていきました。
矢野さん「日照時間が比較的長く、土壌が豊か。冬でも暖かい気候がこの辺りの特徴です。深夜から朝にかけて大雪が降っても日中には溶けてしまう、県内ではめずらしい環境かもしれません。天竜川の近くは朝霧が出て真っ白になるのも特徴で、冬の朝、河岸段丘の上部から見事な雲海が見られます。これも美味しい農産物が育つ理由だと聞いたことがあります。」
矢野さんが手がけるサイクリングツアーは、そうした農家さんと連携をとって試走を繰り返してきた企画です。天候などに左右されやすい果物の価格も、きちんと農家さんに必要なお金を還元できるように仕組みを作り、地域の農業や自然、景観を守るために工夫されています。
天竜峡を起点に、遠山郷や県道1号、秋葉街道や蚕種街道など多くの秘境が残り、サイクリストを魅了する南信エリア。矢野さんは「そうした本格的なサイクリスト以外の人にも、もっと気軽にエリアを走ってほしい」といいます。
充実のレンタル&レクチャーで初心者も安心
矢野さん「基本のルートは決まっていますが、当日、担当するガイドがお客様の希望やレベルに合ったコースを設定するようにしています。また川遊び体験など大きな荷物があるときや、自転車に乗れない小さなお子様でも一緒に参加できるサイクルトレーラーをご用意しています。まずは気軽に相談してもらえたら嬉しいです」
矢野さん「上手に乗るポイントは、表示される数字を意識しすぎず、自分が漕ぎやすいと思う重さを選ぶことです。最初に駐車場で試走をしながらブレーキの効き具合などを確認し、道路に出た際のハンドサインも一緒に確認します」
いよいよ出発! のどかな景色とフルーツ狩りを満喫
収穫体験は時期や果物の育成具合によって異なり、同じ「ぶどう」であっても、いくつかの品種に分かれます。何度来ても新しい出会いや体験が待っているのも、このプランの魅力かもしれません。
【フルーツの種類と採れる期間】
(いちご) 3月上旬~5月上旬
(さくらんぼ) 6月上旬~下旬
(もも) 7月中旬~8月中旬(品種は時期によって異なります。)
(ぶどう) 8月下旬~9月下旬(品種は時期によって異なります。)
(梨) 8月下旬~10月上旬(品種は時期によって異なります。)
(りんご) 8月中旬~12月上旬(品種は時期によって異なります。)
(甘柿) 10月下旬~11月下旬
(市田柿) 12月下旬~2月下旬(干し柿のため、農家さんに分けてもらいます)
疲れた身体に染み渡る、とっておきのスイーツを堪能
ツアーのメニューは、気候や参加者の様子を見ながら作るオリジナルで、収穫した果物がどんなスイーツになって登場するかは運ばれてくるまでのお楽しみ。ほかに、豊丘村の地形を表現した「だんQオムライス」や、村で飼育されるブランド豚「信美豚(しんびとん)」のローストポーク丼、「鬼面山ナポリタン」などボリューム満点の食事や、夜はお酒も楽しめる人気のお店です。
矢野さん「カフェ&ダイニングenには、人と人の縁や、人々が集まって楽しむ場所を意味する園、美味しいものを食べて心がまぁるくほっこりするイメージからの円など、いくつもの想いが込められています。店主の黒田さんとは、“縁むすび”の場所にもなったらいいね、なんて話していて、今後は婚活サイクリングなどの企画も検討を進めています。自転車も食も、それぞれが自然や村を楽しむツールとして、協力しあって盛り上がっていきたいと思います」
美味しいスイーツでしっかり休憩したら、再び自転車に乗ってとよおか旅時間へ戻ります。かかった時間は2、3時間ほど。自転車を返して身支度を整えたらツアーも終了です。
サイクリングを通じて、自然や人との交流が楽しめる豊丘村。数時間のサイクリングで、ふるさとがひとつ増えるような、のどかであたたかな時間が流れていました。
Information
【とよおか旅時間】
住所:下伊那郡豊丘村神稲12407
電話:0265-49-3395
HP:https://www.vill-nagano-toyooka-kanko.jp/
【カフェ&ダイニング en】
住所:下伊那郡豊丘村神稲359-5
電話:0265-48-0240
営業時間:10:00〜21:00(L.O. 20:00)
定休日:月曜・火曜*祝日の場合は営業
【道の駅 南信州とよおかマルシェ】
住所:下伊那郡豊丘村大字神稲12410番地
電話:0265-48-8061
営業時間:
四季彩市場(農産物、お土産、お惣菜)/ 9:00~18:00
きらら(パン・ジェラート)/ 9:30~17:00(水曜定休)
菜園ビュッフェレストラン ベジフルキッチン/11:00~16:00(L.O.14:30)
電話:0265-48-8063
HP:https://www.vill-nagano-toyooka-kanko.jp/vege-full_kitchen/
豊丘村観光案内所/ 9:00~17:00
HP:https://toyooka-marche.jp/
撮影:新井涼平 文:間藤まりの イラスト:永瀬美優
矢野 智志/Yano Satoshi
2021年に地域おこし協力隊として豊丘村に移住し、レンタサイクル事業や観光案内の仕事をしながらサイクリングガイドツアーの立ち上げに寄与。過去にはプロの自転車選手を目指してトレーニングを積んでいた経験があり、整備士の資格も所有する。プライベートは3児の父であり、子どもたちと村の遊びを満喫している。