特集『サイクリング』④|サイクリング×フルーツ狩り×スイーツ!村の魅力がぎゅっと詰まった女子旅(Japan Alps Cycling Road:豊丘村ルート)

南信エリアの豊丘村(とよおかむら)は、天竜川によって削られた河岸段丘に沿って広がる人口6,000人ほどの村です。豊かな土壌に恵まれ、美しい田園風景や、年間を通じておいしい農産物が楽しめます。豊丘村の観光協会が運営している「とよおか旅時間」では、五感を使って自然を満喫できる様々なサイクルガイドツアーを企画中。今回は、サイクリングをしながら四季折々のフルーツを収穫し、もぎたてフルーツをカフェに持ち込んでスイーツとして食べられる「フルーツスイーツプラン」を体験してきました。「とよおか旅時間」の頼れるガイド、矢野智志(やの・さとし)さんと一緒に、村の魅力がぎゅっと詰まった女子旅に出発です。

村の素敵を詰め込んだ、つながり育むサイクリングツアー

収穫を待つシャインマスカット畑。実がたっぷり詰まった、とっておきのひと房を探したい

どこを走っても果物の畑が目に入るほど果樹栽培が盛んな豊丘村。かつては桑畑が広がり、養蚕が盛んな地域だったそう

爽やかな笑顔と軽快なトークで迎えてくれた矢野さん

収穫を待つシャインマスカット畑。実がたっぷり詰まった、とっておきのひと房を探したい

どこを走っても果物の畑が目に入るほど果樹栽培が盛んな豊丘村。かつては桑畑が広がり、養蚕が盛んな地域だったそう

爽やかな笑顔と軽快なトークで迎えてくれた矢野さん

豊丘村の特徴は、なんといっても年中何かしらの果物が採れるところ。まだ寒さも厳しい2月に真っ赤なイチゴが採れはじめると、そこからさくらんぼ、もも、ぶどう、なし、りんご、柿など、途切れることなく果樹が実をつけます。果樹栽培がはじまったのは昭和40年代から終わりにかけて。養蚕に必要な桑畑が広がっていた大地を開墾し直し、農園が増えていきました。
 
矢野さん「日照時間が比較的長く、土壌が豊か。冬でも暖かい気候がこの辺りの特徴です。深夜から朝にかけて大雪が降っても日中には溶けてしまう、県内ではめずらしい環境かもしれません。天竜川の近くは朝霧が出て真っ白になるのも特徴で、冬の朝、河岸段丘の上部から見事な雲海が見られます。これも美味しい農産物が育つ理由だと聞いたことがあります。」
 
矢野さんが手がけるサイクリングツアーは、そうした農家さんと連携をとって試走を繰り返してきた企画です。天候などに左右されやすい果物の価格も、きちんと農家さんに必要なお金を還元できるように仕組みを作り、地域の農業や自然、景観を守るために工夫されています。

谷間に広がる田園風景。心地よい風に癒される

矢野さんはかつてプロの自転車選手を目指してトレーニングをしていた時代があり、自転車整備士の資格も所有しているそう

ツアーの参加者にはミッションが書かれたしおりが用意されている。今回のミッションは、農園へサイクリングして「ぶどう」をゲットしてくること

谷間に広がる田園風景。心地よい風に癒される

矢野さんはかつてプロの自転車選手を目指してトレーニングをしていた時代があり、自転車整備士の資格も所有しているそう

ツアーの参加者にはミッションが書かれたしおりが用意されている。今回のミッションは、農園へサイクリングして「ぶどう」をゲットしてくること

矢野さん「豊丘村のサイクリングの楽しさは、河岸段丘など特色ある地形や、食べ物の美味しさをダイレクトに感じられるところだと思います。ふたつのアルプスに囲まれたロケーションも見どころではありますが、私たちの強みは、村に暮らす人としっかりつながりを持って企画ができているところ。コンテンツになりそうなモノゴトや人を発掘し、商品にしてお客さんに届けるのが僕らの役目です」
 
天竜峡を起点に、遠山郷や県道1号、秋葉街道や蚕種街道など多くの秘境が残り、サイクリストを魅了する南信エリア。矢野さんは「そうした本格的なサイクリスト以外の人にも、もっと気軽にエリアを走ってほしい」といいます。

充実のレンタル&レクチャーで初心者も安心

Japan Alps Cyclingのロゴが入った限定サコッシュ。ツアー参加者の手荷物入れとして貸し出しされている

ずらりと自転車が並ぶ「とよおか旅時間」。サイクルステーションとしての機能も兼ねており、空気入れなどの整備グッズやシャワールームもある

自分で用意するのは飲み物と汗を拭くタオルくらいでOK

Japan Alps Cyclingのロゴが入った限定サコッシュ。ツアー参加者の手荷物入れとして貸し出しされている

ずらりと自転車が並ぶ「とよおか旅時間」。サイクルステーションとしての機能も兼ねており、空気入れなどの整備グッズやシャワールームもある

自分で用意するのは飲み物と汗を拭くタオルくらいでOK

ツアー参加の当日は、「とよおか旅時間」に集合場所。受付の用紙に必要事項を記入し、まずは保険の説明などを受けます。ヘルメットやサドルカバーなどサイクリングに必要な備品は全てレンタルに含まれるので、特別な装備がなくても参加できるのが嬉しいところ。普段自転車に乗らない方でも気軽に体験できるのがこのツアーの魅力です。
 
矢野さん「基本のルートは決まっていますが、当日、担当するガイドがお客様の希望やレベルに合ったコースを設定するようにしています。また川遊び体験など大きな荷物があるときや、自転車に乗れない小さなお子様でも一緒に参加できるサイクルトレーラーをご用意しています。まずは気軽に相談してもらえたら嬉しいです」

スイッチを入れたり、ギアを調節したり。基本的な操作も事前に一緒に確認

今回選んだのは、日ごろ乗り慣れた街乗り用自転車に近いタイプのE-bike

止まる、進む、曲がるなど、走行中の指示はガイドのハンドサインがメイン。乗り方のコツも丁寧に教えてくれるので安心

スイッチを入れたり、ギアを調節したり。基本的な操作も事前に一緒に確認

今回選んだのは、日ごろ乗り慣れた街乗り用自転車に近いタイプのE-bike

止まる、進む、曲がるなど、走行中の指示はガイドのハンドサインがメイン。乗り方のコツも丁寧に教えてくれるので安心

用意してもらったE-bikeは、日常的に使う街乗りに近いタイプから、パワフルなマウンテンバイクタイプの全3種類。アシストの強さや車体の重さが変わるので、実際に触れながら好みの一台を選びます。サイクルコンピューターの電源を入れたら、アシストの強さを調節。ギアの使い方なども丁寧に説明してくれるので、E-bikeが初めてでも安心して体験することができます。
 
矢野さん「上手に乗るポイントは、表示される数字を意識しすぎず、自分が漕ぎやすいと思う重さを選ぶことです。最初に駐車場で試走をしながらブレーキの効き具合などを確認し、道路に出た際のハンドサインも一緒に確認します」

いよいよ出発! のどかな景色とフルーツ狩りを満喫

急な坂もE-bikeなら座ったままで楽々

Japan Alps Cycling Roadに認定されている道。広い空に田園風景、穏やかな情景が南信地域の魅力のひとつ

川沿いの道からスタート。おしゃべりをする余裕があるのも嬉しい

急な坂もE-bikeなら座ったままで楽々

Japan Alps Cycling Roadに認定されている道。広い空に田園風景、穏やかな情景が南信地域の魅力のひとつ

川沿いの道からスタート。おしゃべりをする余裕があるのも嬉しい

今回のコースは、全長10kmほど。Japan Alps Cycling Roadに認定されている道や坂道に挑戦しながら、丘の上の「かぐや姫ぶどう園」を目指します。水分補給などこまめに休憩を挟みながら進むので、終始笑顔が絶えない楽しい時間。ガイドの矢野さんからクイズ形式で村のことを教えてもらったり、景色を眺めたり、あっという間に農園に到着しました。

顔の大きさほどある大きな房を無事にゲット。これを持って、今度は近くのカフェへ移動

大きな粒に、甘い果汁がたっぷりのシャインマスカット

地域の農家さんとのおしゃべりも楽しみのひとつ

顔の大きさほどある大きな房を無事にゲット。これを持って、今度は近くのカフェへ移動

大きな粒に、甘い果汁がたっぷりのシャインマスカット

地域の農家さんとのおしゃべりも楽しみのひとつ

「かぐや姫ぶどう園」では、園主の日下部勝英さんと一緒に収穫体験を行います。美味しい房を見分けるコツは、袋の上から手を添えて、ぶどうの重さを感じること。ラグビーボールのような楕円形をしたものが特に良いそうで、好みの一房をハサミで切り取り、保護用の袋に入れてもらいました。
収穫体験は時期や果物の育成具合によって異なり、同じ「ぶどう」であっても、いくつかの品種に分かれます。何度来ても新しい出会いや体験が待っているのも、このプランの魅力かもしれません。
 

【フルーツの種類と採れる期間】
(いちご) 3月上旬~5月上旬
(さくらんぼ) 6月上旬~下旬
(もも) 7月中旬~8月中旬(品種は時期によって異なります。)
(ぶどう) 8月下旬~9月下旬(品種は時期によって異なります。)
(梨) 8月下旬~10月上旬(品種は時期によって異なります。)
(りんご) 8月中旬~12月上旬(品種は時期によって異なります。)
(甘柿) 10月下旬~11月下旬
(市田柿) 12月下旬~2月下旬(干し柿のため、農家さんに分けてもらいます)

疲れた身体に染み渡る、とっておきのスイーツを堪能

おしゃべりも忘れてスイーツを堪能。店内には、お土産にもおすすめのクラフトグッズや焼き菓子などが並ぶ

もぎたてのシャインマスカットがたっぷり乗ったおしゃれなパフェ。マスカルポーネのムースやイチジクのジャム、手作りグラノーラなどと合わせて「いただきます」

民家を改修してできた「カフェ&ダイニングen」。広いキッズスぺースやカウンター席、ソファー席などさまざまな空間がある地域の拠り所的存在

おしゃべりも忘れてスイーツを堪能。店内には、お土産にもおすすめのクラフトグッズや焼き菓子などが並ぶ

もぎたてのシャインマスカットがたっぷり乗ったおしゃれなパフェ。マスカルポーネのムースやイチジクのジャム、手作りグラノーラなどと合わせて「いただきます」

民家を改修してできた「カフェ&ダイニングen」。広いキッズスぺースやカウンター席、ソファー席などさまざまな空間がある地域の拠り所的存在

「お客様の記憶に残るようなメニュー、空間、接客を意識しています」と話すのは、店主の黒田美佳さん。2013年に地域おこし協力隊として豊丘村にやってきた方で、今はenを通じてたくさんの人に村の旬を届けています。

ツアーのメニューは、気候や参加者の様子を見ながら作るオリジナルで、収穫した果物がどんなスイーツになって登場するかは運ばれてくるまでのお楽しみ。ほかに、豊丘村の地形を表現した「だんQオムライス」や、村で飼育されるブランド豚「信美豚(しんびとん)」のローストポーク丼、「鬼面山ナポリタン」などボリューム満点の食事や、夜はお酒も楽しめる人気のお店です。
 
矢野さん「カフェ&ダイニングenには、人と人の縁や、人々が集まって楽しむ場所を意味する園、美味しいものを食べて心がまぁるくほっこりするイメージからの円など、いくつもの想いが込められています。店主の黒田さんとは、“縁むすび”の場所にもなったらいいね、なんて話していて、今後は婚活サイクリングなどの企画も検討を進めています。自転車も食も、それぞれが自然や村を楽しむツールとして、協力しあって盛り上がっていきたいと思います」
 
美味しいスイーツでしっかり休憩したら、再び自転車に乗ってとよおか旅時間へ戻ります。かかった時間は2、3時間ほど。自転車を返して身支度を整えたらツアーも終了です。

産直には南信エリアの美味しいものがずらり。加工品のジャムやお菓子、銘菓、道の駅限定商品などお土産にもぴったりの商品が揃う

サイクリング後に立ち寄りたい足湯。竹林整備で出た竹を使ってお湯が作られるというエコな仕組みに注目

とよおかマルシェには、地域の食材をたっぷり使ったレストランやベーカリーもあり。前後の腹ごしらえにもおすすめ

産直には南信エリアの美味しいものがずらり。加工品のジャムやお菓子、銘菓、道の駅限定商品などお土産にもぴったりの商品が揃う

サイクリング後に立ち寄りたい足湯。竹林整備で出た竹を使ってお湯が作られるというエコな仕組みに注目

とよおかマルシェには、地域の食材をたっぷり使ったレストランやベーカリーもあり。前後の腹ごしらえにもおすすめ

周辺には足湯があったり、「道の駅・とよおかマルシェ」があったりするので、ツアー参加後の立ち寄りにおすすめです。この日は道の駅でお土産を選んでいたら、収穫体験でご一緒した園主の日下部さんに会う、なんて、ちょっとしたサプライズもありました。
 
サイクリングを通じて、自然や人との交流が楽しめる豊丘村。数時間のサイクリングで、ふるさとがひとつ増えるような、のどかであたたかな時間が流れていました。

Information

 

【とよおか旅時間】
住所:下伊那郡豊丘村神稲12407
電話:0265-49-3395
HP:https://www.vill-nagano-toyooka-kanko.jp/
 
【カフェ&ダイニング en】
住所:下伊那郡豊丘村神稲359-5
電話:0265-48-0240
営業時間:10:00〜21:00(L.O. 20:00)
定休日:月曜・火曜*祝日の場合は営業
 
【道の駅 南信州とよおかマルシェ】
住所:下伊那郡豊丘村大字神稲12410番地
電話:0265-48-8061
営業時間:
四季彩市場(農産物、お土産、お惣菜)/ 9:00~18:00
きらら(パン・ジェラート)/ 9:30~17:00(水曜定休)
菜園ビュッフェレストラン ベジフルキッチン/11:00~16:00(L.O.14:30)
電話:0265-48-8063
HP:https://www.vill-nagano-toyooka-kanko.jp/vege-full_kitchen/
豊丘村観光案内所/ 9:00~17:00
HP:https://toyooka-marche.jp/

撮影:新井涼平  文:間藤まりの イラスト:永瀬美優

Profile

矢野 智志/Yano Satoshi

2021年に地域おこし協力隊として豊丘村に移住し、レンタサイクル事業や観光案内の仕事をしながらサイクリングガイドツアーの立ち上げに寄与。過去にはプロの自転車選手を目指してトレーニングを積んでいた経験があり、整備士の資格も所有する。プライベートは3児の父であり、子どもたちと村の遊びを満喫している。