特集『サイクリング』③|県下随一のウェルネス・サイクルツーリズムを満喫する、信越自然郷の自転車旅(Japan Alps Cycling Road:飯山〜野沢温泉ルート)

長野県北部から新潟県にかけて広がる「信越自然郷」は、古くから厳しい自然と共生してきた文化や歴史、景色が色濃く残るエリアです。エリアに属する飯山市や野沢温泉村は、近年「ウェルネス・サイクルツーリズム」の地としても注目を集め、温泉や食などと組み合わせた自転車の旅が人気です。また長野県を1周するサイクルルート「Japan Alps Cycling Road」では「北信濃エリア」の一部に組み込まれ、サイクリングの楽しさに魅了されるルートとして紹介されています。

 

今回は、野沢温泉村出身でホクトスキークラブの選手として活躍する富井雪奈(とみい・ゆきな)さんと、弟の富井大作(とみい・だいさく)さんと一緒にe-bikeに乗ってエリアを探索。街乗りもアップダウンも楽々、自転車初心者から上級者まで楽しめるスポットを紹介します。

飯山駅を出発して、絶景の公園へ

飯山駅からの公道には自転車専用通行帯の青い矢羽マークが。青空のもと「菜の花公園」を目指して進む

Japan Alps Cycling Projectのオリジナルジャージに身を包んだふたり。写真右・大作さんが耳につけているのは、SONYのウェアラブル端末「NYSNO-100」

北陸新幹線が停まるJR飯山駅から、レンタサイクルも可能

飯山駅からの公道には自転車専用通行帯の青い矢羽マークが。青空のもと「菜の花公園」を目指して進む

Japan Alps Cycling Projectのオリジナルジャージに身を包んだふたり。写真右・大作さんが耳につけているのは、SONYのウェアラブル端末「NYSNO-100」

北陸新幹線が停まるJR飯山駅から、レンタサイクルも可能

北陸新幹線が停まるJR飯山駅が旅のスタートです。駅の1階には「信越⾃然郷アクティビティセンター」があり、レンタサイクルや近隣の自転車コースMAPが置かれているので要チェック。信越自然郷管内は各スポットで自転車の乗り捨てができるのも特徴で、旅程に合わせて快適な移動が叶います。今回はさらに、移動中のスムーズなコミュニケーションを叶えるSONYのウェアラブル端末(インカム)「NYSNO-100」を使用。元スキーヤーが開発リーダーを務めた端末で、防水性や耐衝撃もバッチリ。スマートフォンなどを介さず完全ハンズフリーで会話ができるので、仲間同士でおしゃべりしながらサイクリングができる一方、完全に耳が塞がれない特殊な加工がされており、周囲の安全だけでなく、車の接近等を前の人に伝えたりする上でも役立ちます。

GWに咲く菜の花が有名な「菜の花公園」は、夏のあいだ一面のひまわり畑に大変身。唱歌「朧(おぼろ)月夜」に歌われるのどかな風景が広がる

奥に見える黒い建物が、給水や工具の貸し出しなどに対応しているサイクルステーション・道の駅「ファームス木島平」。カフェのジェラートもおすすめ

GWに咲く菜の花が有名な「菜の花公園」は、夏のあいだ一面のひまわり畑に大変身。唱歌「朧(おぼろ)月夜」に歌われるのどかな風景が広がる

奥に見える黒い建物が、給水や工具の貸し出しなどに対応しているサイクルステーション・道の駅「ファームス木島平」。カフェのジェラートもおすすめ

最初の休憩スポットは飯山市の「菜の花公園」。取材に訪れた8月中旬は、地域の人や小学生が植えたという満開のひまわりが出迎えてくれました。トイレや自動販売機などの設備もあるので安心。悠々と流れる白い雲と千曲川、遠くに見える山々の稜線が北信濃エリアらしい絶景スポットです。ここから野沢温泉までは6kmほど。初心者であれば、午前中に飯山市内を走り、お昼くらいに野沢温泉到着を目指して進むのがおすすめです。

「かんがら坂」をのぼり、絶品そばでひと休み

鉄工所をリノベーションしたフードコートでお昼ごはん。店の前にはサイクルスタンドもあり

長いのぼり坂もe-bikeのアシスト機能でスイスイと。野沢温泉の入り口では「道祖神」や「湯」のモニュメントが迎えてくれる

野沢温泉村に入る前の一番の坂道「かんがら坂」。ここを登り切ると温泉のご褒美が待っている

鉄工所をリノベーションしたフードコートでお昼ごはん。店の前にはサイクルスタンドもあり

長いのぼり坂もe-bikeのアシスト機能でスイスイと。野沢温泉の入り口では「道祖神」や「湯」のモニュメントが迎えてくれる

野沢温泉村に入る前の一番の坂道「かんがら坂」。ここを登り切ると温泉のご褒美が待っている

飯山市と野沢温泉村の間にある「かんがら坂」を登り切ると見えてくるのは、山に囲まれた村の景色。棚田には青々と稲が育ち、古き良き日本の風景という言葉がしっくりくるような美しい光景が広がります。
グルメスポットはいくつもありますが、北信濃エリアに来たら食べておきたいのが「ぼくち蕎麦」です。県内各地で打たれている蕎麦ですが、つなぎの小麦粉の代わりに山菜のヤマゴボウの一種「オヤマボクチ」の葉を使うのはこの辺りだけ。独特の風味とシコシコした食感が特徴です。なかでも野沢温泉村にある「かごや」は、今も手打ちにこだわり、オヤマボクチと蕎麦粉だけの伝統的な味わいが楽しめる店。料理を注文すると地元野菜をたっぷり使った惣菜取り放題のサービスがついてくるのも嬉しいポイントです。

水が豊富な地域は野菜もおいしい。朝採れ新鮮、風味豊かな料理の数々でお腹もいっぱいに

道祖神が祀られた社殿が鎮座する店内。モニターでは火祭りの様子が流れ、野沢温泉らしさ満載

オヤマボクチと蕎麦粉でつくられる「ぼくち蕎麦(富倉蕎麦)」

水が豊富な地域は野菜もおいしい。朝採れ新鮮、風味豊かな料理の数々でお腹もいっぱいに

道祖神が祀られた社殿が鎮座する店内。モニターでは火祭りの様子が流れ、野沢温泉らしさ満載

オヤマボクチと蕎麦粉でつくられる「ぼくち蕎麦(富倉蕎麦)」

村を一望できる見晴台までは林間コースを抜けて

「六軒清水(ろっけんしみず)」で貴重な湧き水をチャージ。夏でも5℃前後と冷たく、とてもまろやかな飲み心地

冬はスキー場のゲレンデになる「見晴台」。午前中に「菜の花公園」からみた景色がもっと大パノラマで眼下に広がる

「六軒清水(ろっけんしみず)」で貴重な湧き水をチャージ。夏でも5℃前後と冷たく、とてもまろやかな飲み心地

冬はスキー場のゲレンデになる「見晴台」。午前中に「菜の花公園」からみた景色がもっと大パノラマで眼下に広がる

腹ごしらえをすませて「もう少し自転車で走りたいな」と思ったら、長野県が指定する「信州のサンセットポイント」であり、「日本の夕陽百選」にも選ばれている見晴台へ。温泉街から上ノ平高原(うえのたいらこうげん)へ向かう途中にあるパノラマスポットです。ここまで来ると標高は1000mを越え、吹き抜ける風も一層涼やかに。日頃のトレーニングでは、アシストなしの自転車でこの辺りの道を走っているという富井姉弟、初めてのe-bikeは「足への負担がなさすぎて拍子抜けするくらい」と笑顔で話してくれました。

駅周辺にあるガーデンエリアは子どもから大人までみんなが楽しめる癒しスポット

カーブの多い坂道で難易度の高い帰りは「長坂ゴンドラリフトやまびこ駅」からゴンドラで楽々下山

駅周辺にあるガーデンエリアは子どもから大人までみんなが楽しめる癒しスポット

カーブの多い坂道で難易度の高い帰りは「長坂ゴンドラリフトやまびこ駅」からゴンドラで楽々下山

見晴台から先、ゴンドラ駅の周辺は、巨大なブナの原生林が残るエリアです。林のなかにはトレッキングコースや全長約10kmのダウンヒルコースが設置されていて、初心者からマウンテンバイクに挑戦が可能。毎年10月には国内外からバイカーが集結する「野沢温泉自転車祭」が開催され、起伏に富んだ広大なフィールドを舞台に迫力満点のレースが行われます。また近くには「上ノ平ピクニックガーデン」も整備され、季節の山野草や高山植物を楽しんだりベンチや芝生でくつろいだり、思い思いの時間が過ごせる場所となっています。

温泉街の散策は食べ歩きと足湯がとっておきのご褒美

麻釜近くの足湯「ゆらり」でのんびり。熱めのお湯で足の疲れもスッキリリフレッシュ

90℃を越える源泉がこんこんと湧き出る「麻釜(おがま)」は、野沢温泉に来たら立ち寄りたいスポットのひとつ

麻釜近くの足湯「ゆらり」でのんびり。熱めのお湯で足の疲れもスッキリリフレッシュ

90℃を越える源泉がこんこんと湧き出る「麻釜(おがま)」は、野沢温泉に来たら立ち寄りたいスポットのひとつ

ゴンドラで下山をしたら、ここから先のプランはお好み次第。飯山駅まで自転車で戻って日帰りもできますが、今回は野沢温泉のアクティビティ発信基地「COMPASS Village(コンパスヴィレッジ)」で自転車を返却して街歩きを楽しみます。COMPASS Villageはカフェ併設で、疲れた身体に染み渡るような甘いドリンクやドーナツが販売されていました。
温泉街では江戸時代から守り継がれる13の外湯をめぐるもよし、ソフトクリームやジェラートなどひんやり食べ歩きグルメを片手に足湯スポットに立ち寄るもよし。お酒の飲めるお店や宿泊施設も充実しているので、せっかくならばゆっくり滞在して温泉街の雰囲気を楽しむのがいいかもしれません。

風情ある温泉街の散策。店舗ごとに異なる温泉まんじゅうは、食べ比べも楽しそう

樹齢1000年を超す巨大なケヤキが植わる「湯沢神社」にお参り

風情ある温泉街の散策。店舗ごとに異なる温泉まんじゅうは、食べ比べも楽しそう

樹齢1000年を超す巨大なケヤキが植わる「湯沢神社」にお参り

おいしいグルメにきれいな景色、温泉や高原で日々の疲れを癒し、身も心もたっぷりリフレッシュできる北信濃の自転車旅。e-bikeやゴンドラ、最新鋭のインカムなど便利なツールも取り入れながら、出かけてみてはいかがでしょうか。

Information

【信越⾃然郷アクティビティセンター】
住所:飯山市大字飯山772-6 飯山駅1F
電話:0269-62-7001
HP:https://shinetsu-activity.jp/

【ファームス木島平】
住所:下高井郡木島平大字上木島38番地1
電話:0269-62-2201
HP:http://www.farmus.jp/

【菜の花公園】
住所:飯山市大字瑞穂495-1
電話:0269-62-7000(信越自然郷 飯山駅観光案内所)
HP:https://www.iiyama-ouendan.net/tourism/nanohana/

【ぼくちそば かごや】
住所:下高井郡野沢温泉村大字豊郷4348-1
電話:0269-67-0348
HP:https://nozawakanko.jp/spot/spot10114/

【長坂ゴンドラリフト】
運行期間:2024年7月6日(土)~10月27日(日)
※2024年8月27日(火)~9月26日(木)の間は、火・水・木曜日定休日
運行時間:9:00~16:00(下り線16:30)
HP:https://nozawaski.com/summer/gondola/

【COMPASS Village】
住所:長野県下高井郡野沢温泉村豊郷9526
電話:0269-67-0921
HP:https://compasshouse.jp/

【ウェアラブル端末NYSNO-100】
プロジェクトページ:
https://sony-startup-acceleration-program.com/article081.html
HP:https://www.sony.jp/support/nysno/products/nysno-100/

撮影:新井涼平  文:間藤まりの イラスト:永瀬美優