北アルプスの麓に広がる白馬村。1998年には冬季オリンピックの開催地にも選ばれ、国内外から自然豊かな山岳リゾートを楽しもうと、多くの人が訪れます。今回紹介するキャンプ&サウナスポットは、オールシーズン楽しめる、絶景のグランピングとサウナ施設です。まずは「白馬森のわさび農園オートキャンプ場&サウナ」を経営する株式会社白馬森のわさび農園の代表取締役社長・田中末春さんと、森美晴さんにお話を伺います。
「わさび」から始まった、個性豊かな手作りのキャンプ場
県道33号線から少しだけ脇に外れた丘の上。木立を抜けた先にある「白馬森のわさび農園オートキャンプ場&サウナ」は、オーナーの田中さんが開拓をし、整備を進めてきた手作りのキャンプ場です。白馬村生まれ、白馬村育ちの父・末春さんは、今から35年ほど前に「田中建設」という土木工事や建設工事を手掛ける会社を設立しました。
末春さん「土木会社に勤めていた45年ほど前に、五竜で貸別荘やお土産屋さんをしていました。その後、1990年に独立して田中建設を創業しました。始めた頃は土木工事だけでしたが、そのうちに鳥獣被害の対策や木材のリサイクルセンター、冬は村内の除雪作業なんかに取り組むようになっていきました」
そして、元々ミニゴルフ場だった、東山と呼ばれる山林内の場所を活用し、北アルプス山麓でわさびの特産化を図る県などの助言を受けて、2013年頃からわさびの栽培を開始。「わさび農園」として2015年のオープンをめざしていたが、2014年11月に白馬村を震源とする震度6弱を記録した神城断層地震の影響でわさび農園に通じる林道入口となる橋が壊れ通行止めに。1年以上遅れた2016年7月に「わさび農園」としてオープン。そして開始から2年ほど経過していたわさび農園を軌道に乗せるため、そして「白馬村をもっと良くしたい」という想いから、観光事業に取り組むことを決め、徐々に重機1つでキャンプサイトを整備していき、現在は約130区画もあるオートキャンプ場になっています。
末春さん「白馬村は温泉もいいし雪もいい。自然はもちろん、食事ができるところや買い物ができるところ、いろんな機能が充実しています。宿泊する場所をつくれば、そうした施設も盛り上がって、村が活性化されていくだろう。そんな想いがありました」

建設業の縁で手に入れた電車の貨車をリノベーション。ウッドデッキを造り付け、宿泊棟として再利用している

二人三脚でキャンプ場作りに取り組む田中末春さん(写真右)と森美晴さん(写真左)

グリーンシーズンのキャンプ場には、あちらこちらに、わさびが栽培されている。4月中旬〜11月上旬には「陸わさび」が販売されている

建設業の縁で手に入れた電車の貨車をリノベーション。ウッドデッキを造り付け、宿泊棟として再利用している

二人三脚でキャンプ場作りに取り組む田中末春さん(写真右)と森美晴さん(写真左)

グリーンシーズンのキャンプ場には、あちらこちらに、わさびが栽培されている。4月中旬〜11月上旬には「陸わさび」が販売されている
キャンプ場の1番の魅力は、北アルプスの眺望。場内にはキャンプサイトやクランピングテント、貸し切りのサウナなど、白馬村の良さを体感できるコンテンツが揃います。
美晴さん「初めは父と甥の2人で開拓をしていましたが、次第に予約を取ったり広報活動をしたり、対外的な対応も増えてきて。『ちょっと手伝ってほしい』と声を掛けられ、私も参画するようになりました。実際に始めてみると、キャンプはシーズン問わず好きな方がいらっしゃり、四季を通じてさまざまな体験ができる白馬村にピッタリのコンテンツだと感じています。数年前から冬期の営業も始め、年々雪中キャンプを求めていらっしゃるお客様も増えています」
白馬森のわさび農園オートキャンプ場&サウナにあるキャンプサイトは、現時点で約130区画。
美晴さん「多いのは関東圏からのお客様で、東京や神奈川、千葉、埼玉。名古屋など中京圏に次いで大阪や三重など関西圏、北陸からのアクセスも多いと思います。県内からのご利用も多いです。うちの場合はキャンプをすることが目的で、早めにチェックインを済ませてのんびり滞在される方がほとんどです」

ボードゲームなどを持ち込んで盛り上がるのもおすすめ。冷暖房完備でどの季節も快適に過ごせる

雪に包まれ幻想的なグランピングエリア(1月中旬)

広々としたテント内は、最大5名で宿泊できる。ハンモックや間接照明などリラックスして過ごせる工夫がたくさん

ボードゲームなどを持ち込んで盛り上がるのもおすすめ。冷暖房完備でどの季節も快適に過ごせる

雪に包まれ幻想的なグランピングエリア(1月中旬)

広々としたテント内は、最大5名で宿泊できる。ハンモックや間接照明などリラックスして過ごせる工夫がたくさん
「サウナを置く」という発想はキャンプ場整備の時点ではなく、コロナ禍のピークを過ぎた2021年に初めてサウナを設置。2023年の秋から冬にかけてグランピング用のドームテントを建て替え、全てのサイトでサウナ付きグランピングが楽しめるようになったと言います。
自然に溶け込む非日常のサウナと地域の食を堪能
今回は4箇所あるグランピングのなかでも、特に絶景が楽しめるという「G-4」でサウナキャンプを体験します。木の香りに癒されるサウナは、自分で薪をくべて火の調節をするフィンランド式の本格サウナ小屋が人気です。ストーブの炎と窓の外に広がる雪景色のコントラスト。チェックイン後は、まず小屋をあたためてひと汗流して、というリピーターさんも多いそう。滞在中なら時間を気にせず自分のペースで楽しめるのも、この場所ならではの魅力です。

セルフロウリュウもOK。ジュワッと上がる蒸気にテンションもアップ

こだわりのフィンランド式サウナ。水着のみ、持参するのをお忘れなく

あちこちにあるDIYの痕跡が楽しい

セルフロウリュウもOK。ジュワッと上がる蒸気にテンションもアップ

こだわりのフィンランド式サウナ。水着のみ、持参するのをお忘れなく

あちこちにあるDIYの痕跡が楽しい
酒蔵にあった大きな木の樽を再利用して作られた水風呂は、趣も抜群。他のエリアにも五右衛門風呂や檜の箱風呂、土管風呂など個性的な水風呂が揃います。
末春さん「もとが工事関係なので、村の人から『持っていって』と声がかかったり、自分たちでも意識をして集めたり。施工もすぐに取り掛かれるので、便利に気軽に、思い出に残るような体験を用意したいと思っています」
ととのいスペースは、絶景ひとり占めの贅沢な空間に椅子を置いて。春から夏にかけては雪渓と新緑、夏から秋にかけては紅葉と深い緑、そしてあたり一面真っ白になる冬景色。何度訪れても飽きることのない、季節ごとの景色が楽しめます。

遊び心をくすぐる土管風呂は「G-3」に。巨大な土管に梯子をかけて入るスタイルの水風呂

雪のなかでととのう、非日常の外気浴。凛と澄んだ空気が心地いい

目の前にそびえる冬の白馬三山。季節ごと変わっていくグラデーションが魅力

「G-4」のグランピングエリア。こちらの水風呂は酒蔵の樽を活用したもの

遊び心をくすぐる土管風呂は「G-3」に。巨大な土管に梯子をかけて入るスタイルの水風呂

雪のなかでととのう、非日常の外気浴。凛と澄んだ空気が心地いい

目の前にそびえる冬の白馬三山。季節ごと変わっていくグラデーションが魅力

「G-4」のグランピングエリア。こちらの水風呂は酒蔵の樽を活用したもの
サウナでさっぱり整ったあとは、地元の食を堪能するBBQがおすすめです。食器やカセットコンロ、などはレンタルがあるので、食材だけ準備をすれば、あとは楽々食事の用意に取り掛かれます。
美晴さん「ドームテントには冷蔵庫も完備しているので、BBQが済んだあとは部屋でゆっくりお酒を嗜みながら……なんて過ごし方もおすすめです。2024年からは全室冬も対応の暖か仕様になったので、より快適に過ごしてもらえるのではないかと思います」

BBQはグランピングテントに併設された東屋で。照明もストーブも付いて冬も快適

サウナのあとはBBQを堪能。食材を持ち込めば、あとはレンタルで準備も楽々

野菜や肉は近くのスーパーで調達も可能。夏は新鮮な採れたて野菜を楽しみたい

BBQはグランピングテントに併設された東屋で。照明もストーブも付いて冬も快適

サウナのあとはBBQを堪能。食材を持ち込めば、あとはレンタルで準備も楽々

野菜や肉は近くのスーパーで調達も可能。夏は新鮮な採れたて野菜を楽しみたい
また白馬村の各所に湧き出る温泉は、それぞれ源泉が違う日帰り湯が何ヶ所もあるそう。
末春さん「八方温泉やかたくり温泉、姫川温泉など、日帰りができる温泉は、キャンプ場から車で10分圏内に10ヶ所くらいありますね。ホテルの温泉も日帰り入浴を受け入れているところがあるので、巡ってみるのもおすすめです。キャンプ場で割引券をお渡ししているところもあるので、ぜひ足を伸ばしてみてください」
国内屈指の透明度を誇る青木湖へ飛び込む、絶景サウナ
もうひとつ、2024年秋に白馬エリアにオープンして注目を集めるサウナがあると聞き、キャンプ場から車で10分ほどの場所にある「青木湖」へ足を伸ばしてみることにしました。湖畔にある「ao LAKESIDE CAFÉ」が始めた「Hakuba Zekkei Sauna “ao”」です。

白馬村の環境に惹かれて移住をしてきたというカフェスタッフの有末さん。空き時間はカフェのみんなとサウナを楽しむことも

全国有数の透明度を誇る「青木湖」のほとりに建つ「ao LAKESIDE CAFÉ」

「Hakuba Zekkei Sauna “ao”」は、カフェのすぐ隣に

チェックインを済ませたら階段を降りて更衣室へ。着替えを済ませ、サウナへ移動する

白馬村の環境に惹かれて移住をしてきたというカフェスタッフの有末さん。空き時間はカフェのみんなとサウナを楽しむことも

全国有数の透明度を誇る「青木湖」のほとりに建つ「ao LAKESIDE CAFÉ」

「Hakuba Zekkei Sauna “ao”」は、カフェのすぐ隣に

チェックインを済ませたら階段を降りて更衣室へ。着替えを済ませ、サウナへ移動する
透明度の高い湖面に映り込む青空。青木湖を一望できるガラス張りのサウナ室は、ヒノキの良い香りに包まれた広々とした空間が特徴です。高校生以上、12名まで一度に一緒に入ることができるので、グループでの利用も安心。大町市や白馬村、小谷村など近隣市町村に住む人には「ローカル割」の適応もあり、充実のレンタル品に手ぶらで来られる気軽さも人気です。
有末さん「私自身、友人から『まるで海外のように美しい景色が広がっている』と紹介されて、一気に大好きになった白馬エリア。その光景を思う存分味わえるひとつが、このサウナだと思います。サウナ後のクールダウンは、水風呂はもちろん、せっかくならば青木湖へのダイブがおすすめ。手足を伸ばして大自然に溶け込める、湖ならではの浮遊感がやみつきになります」

時折聞こえる鳥の声と水の流れる音に癒される外気浴ブース

こだわりの水盤から、青い湖に溶けていくようなうっとりするロケーション

室内は最大12名まで入れる、ゆったりとした空間

白馬の山々が映り込む湖面。冬季は水温が低いので注意が必要だが、サウナ後のダイブは最高

時折聞こえる鳥の声と水の流れる音に癒される外気浴ブース

こだわりの水盤から、青い湖に溶けていくようなうっとりするロケーション

室内は最大12名まで入れる、ゆったりとした空間

白馬の山々が映り込む湖面。冬季は水温が低いので注意が必要だが、サウナ後のダイブは最高
サウナにはカフェのドリンクも持ち込みOKで、人気は「クロモジ」を使ったスパイスドリンクやオリジナルのレモネード。お腹が空いたら、カフェでしっかり食事も食べられます。
有末さん「冬のおすすめは、クラムチャウダーやクリーム系のきのこのスパゲッティが人気です。特にクラムチャウダーには、地元の“白馬ハム”の白馬ソーセージミートを使っていて、食べ応えも満点。美しい景色とアクティビティ、美味しい食事で、身も心もたっぷりリフレッシュしてもらえたらと思います」
どこを見てもいつ来ても、絶景だらけの白馬エリアのキャンプ&サウナ。北アルプスの恵みを五感で受け取る贅沢な体験を、ぜひ。
Information
白馬森のわさび農園オートキャンプ場&サウナ
所在地:北安曇郡白馬村大字神城19520-1
HP:https://www.morinowasabi.com/
Hakuba Zekkei Sauna “ao”
所在地:大町市平21462-1
HP:https://hakuba-zekkeisauna.com/sauna/ao.html
撮影:新井涼平 文:間藤まりの
田中末春さん・森美晴さん
白馬村出身
かねてより村の振興に尽力してきた父・末春さんが開拓し続けるキャンプ場を、娘の森さんが手伝っている。土木工事業に携わっていた経験や村のなかで培ってきた縁を大切に、四季を通じて自然豊かな白馬村をゆっくり味わうコンテンツとしてキャンプやサウナを提案している。
有末奈津美さん
兵庫県出身
友人からの紹介がきっかけで、5年ほど前に白馬村に移住。海外のようなロケーション、山の美しさや人の多様さに魅了され、登山やウィンタースポーツなど村での暮らしを楽しんでいる。現在は「ao LAKESIDE CAFÉ」と並行して「Hakuba Zekkei Sauna “ao”」の運用を担当。「白馬エリアの自然と貴重な体験を楽しんでほしい」と意気込む。