【秋の信州観光キャンペーン】 特集:長野の旅欲! 食欲! 「いいですね、長野の秋」って、褒めてください。
約2年間にわたり白馬村の廃集落を舞台に撮影された映画『土を喰らう十二ヵ月』。その公開ニュースが私たちに届けられたのは今年の夏でした。かつて軽井沢や東御市にも別荘を所有し、創作活動を続けた作家・水上 勉さんの料理エッセイを脚本家化。そして登場する数々の料理を手がけたのは長野を愛する土井善晴さん。私たちは「これは奇跡的な出会いかもしれない」と興奮しました。この素晴らしい偶然をエネルギーに、長野の「食」に焦点を合わせ、「風土・文化」「人」「料理」「食べる」をテーマに記事を組み立てたのが特集・第1章です。続く第2章では、長野の“おいしい”をさらにおいしくいただくための“腹ごしらえ”としてアクティビティ体験や宿泊、ワイン・地酒の真髄。巻末には鉄道ローカル線の旅エッセイを収めました。この秋、「長野の旅・特別編」に出会ってみませんか。
【目次】
第1章「長野の秋。“おいしい”の原点に出会う旅」
映画『土を喰らう十二ヵ月』インタビュー
1_土地のものをいただく「農と食」
2_足を運び仕入れた食材で作る塩尻・奈良井の「土地の味」
3_目の前の豊かな山の恵みを自ら採取し供する贅沢さ
4_器も、料理も、建物も 丁寧な手仕事がもてなす宿
5_山の恵みを収穫し 手業を凝らして一品に添える
6_「寺と宿坊と、精進料理と」 修行食ともてなしの食。2つの側面がある精進料理
7_保存する暮らし 「発酵と食」
麹屋6代目夫婦が提案する 麹のある豊かな暮らし
8_地力に敬意を抱き 新しいひと皿を生み出す
9_麹菌で仕込む大地の味を 凝縮したナチュラルハム
清涼な水と寒暖差が醸す 諏訪ならではの味噌造り
10_「原作者・水上勉と勘六山房」 晩年のアトリエで陶芸家・角りわ子が見た〝水上勉〟という人
映画『土を喰らう十二ヵ月』公開情報
2022年11月11日全国公開。映画『土を喰らう十二ヵ月』中江裕司監督_長野県ロケ地回想
第2章「シニアの上質な秋旅時間」
1_長野県在住プロ・フォトグラファーが撮る長野県の紅葉
2_大人たちのグランピング案内
3_美食名湯の宿
4_まだ見ぬ戸隠へ。善光寺から戸隠神社奥社まで『戸隠古道』をゆく1泊2日祈りの旅
5_絶景鉄道と駅前食堂探訪
特集:第1章「長野の秋。“おいしい”の原点に出会う旅」
長野の“おいしい”はどこからやって来るのでしょうか。映画『土を喰らう十二ヵ月』のメイキング・ストーリーには「撮影地を探して」「食材集めは開墾から」「映画を彩る、こだわりの料理と食器」について綴られています。製作者の皆さんは映画を作るために“おいしい”の原点を探し、私たち視聴者は映画から“おいしい”の真実を見つけることができるかもしれません。それらをヒントにGo NAGANOでも長野の「食」の世界を取材してみました。
映画『土を喰らう十二ヵ月』インタビュー
映画『土を喰らう十二ヵ月』は白馬の廃集落で撮影されました。映画づくりは古民家を改装し、畑を耕し、野菜を育てることからはじまりました。1年半もの時をかけ、本物の食材を使い、本当に料理をしながら、二十四節気に寄り添って撮影は進み、そこには長野の風土が幾重にも織り込まれています。監督の中江裕司さんと料理を担当した土井善晴さんに映画のことや長野とのつながりについてお聞きしました。
1_土地のものをいただく「農と食」
田畑を耕し育てた野菜やくだもの。山を歩き採取した山菜やキノコ。それらを丁寧に下処理して料理したひと皿。私たちに豊かな土地の恵みをもたらす人たちは、私たちを自然とつなげてくれる存在でもあります。
2_足を運び仕入れた食材で作る塩尻・奈良井の「土地の味」
中山道の奈良井宿は、木曽路の難所、鳥居峠をひかえる宿場として発展し、日本最長の1kmにもおよぶ町並みは「奈良井千軒」とも謳われました。今も江戸時代からの建物が多く残り、往時の様子をよく伝えています。一方で年々、空き家は増えていました。歴史ある景観を壊すことなく、いかに町を盛り上げるか。官民連携のプロジェクトが立ち上がり、2021(令和3)年8月に酒蔵「杉の森酒造」と「豊飯豊衣(ほいほい)」という民宿だった建物が宿泊施設に生まれ変わり、「BYAKU Narai(びゃくならい)」として新たなスタートを切りました。
3_目の前の豊かな山の恵みを自ら採取し供する贅沢さ
山田勉さんと友実さんが営む「草如庵」は、旧北御牧村(きたみまきむら)の布下(ぬのした)という集落にあります。もともと蚕糸農家だったという茅葺き屋根の古民家は築160年ほどの豪壮な造りで、竹林に囲まれ、山から流れ込んだ清水が葦池となり、丹精した庭の草木が四季折々に彩ります。
ここで山田さんが供するのは、野草や山菜が主役の日本料理です。材料の多くを自ら採取しますが、車で数分も行けば通い慣れた山道があり、開店前に調達できます。布下は近くを流れる千曲川が削り取った崖線(がいせん)と呼ばれる地形にあり、その急峻さゆえ、緑豊かな自然がそのまま残っているのです。
4_器も、料理も、建物も 丁寧な手仕事がもてなす宿
松本市里山辺(さとやまべ)の美ヶ原温泉には、湯の原、藤井、御母家(おぼけ)の3つの源泉があり、金宇館は御母家に唯一残る温泉宿です。瓦店を営んでいた初代が温泉を掘りあて、木造3階建ての宿を構えたのが1928(昭和3)年のこと。現在は4代目の金宇正嗣(まさつぐ)さんが館主を務めます。正嗣さんは、かつて那須塩原にあった二期倶楽部に勤め、東京の料理店で修業した後、妻の枝津子さんとともに家業に入りました。父に代わって宿を切り盛りするようになった際、建物の大幅な改修工事を行いました。別館と渡り廊下を改装し、続いて本館と浴室棟を全面改修、2020(令和2)年春にリニューアルオープンしました。
5_山の恵みを収穫し 手業を凝らして一品に添える
飯山市街地から少し離れた集落に建つ、築150年を優に越える古民家で羽多野隆三さん、みどりさんご夫妻が和食店を開いたのは10年前のこと。古民家暮らしへの思いが募り、そこでの暮らしの糧として料理人になることを選んで料理修業の道に入るという、異色の経歴の持ち主です。名古屋での修業時代、店までの通勤は走るか自転車かのどちらか。その道すがら、むかごをはじめ食べられる野草や飾りとなる葉を採っては修業先で使ってもらっていたそう。そこではフグも、ハモもさばけるまでになりましたが、独立の際、摘み草を喜んで使ってくれた親方からの「長野に行くなら山の幸で勝負したらどうだ」という言葉で、今の店の方向性は決まりました。
6_「寺と宿坊と、精進料理と」 修行食ともてなしの食。2つの側面がある精進料理
善光寺は、天台宗の大勧進と、浄土宗の大本願により護られている寺です。明治まで多くの寺が女人禁制であったなか、創建当初から宗派、老若男女問わず門戸を開いてきたことが、善光寺の大きな特徴のひとつです。しかし、女性も多いなか、全国から歩いて向かうその道のりは平坦なものではありませんでした。そこで、地域ごとに「講」と呼ばれる団体を組織し、道中をともにしたのです。講の受け入れ先となったのが「宿坊」です。現在は大勧進25院、大本願14坊の計39があり、お朝事をはじめとした参拝の案内や、宿泊・食事の手配を担っています。それぞれ住職がいる寺であり、内仏殿を配して檀家を有し、写経の奉納、御朱印の授受など、仏と向き合う入り口としての役割を果たしています。参詣者をもてなす精進料理もそのひとつです。
7_保存する暮らし 「発酵と食」
山国・長野の暮らしを支えるのが、大切な食材を長くおいしく保存できる「発酵」の知恵です。味噌や漬物、日本酒など伝統のものから、チーズやワインなど新しいものまで、さまざまな発酵の文化が今、長野に息づいています。
麹屋6代目夫婦が提案する 麹のある豊かな暮らし
「西麹屋本舗」は長野市にある江戸時代後期から続く老舗の麹店です。そして「24koujiya(にしこうじや)」は6代目の西澤義弘さんと真澄さん夫妻が立ち上げたオリジナルブランド。蔵の手前にアンテナショップを構え、自蔵の味噌や麹を量り売りし、甘酒ドリンクや発酵調味料を作り、販売しています。2022(令和4)年2月に父の弘知(ひろとし)さんが会長職に退き、義弘さんが家業を継ぎましたが、家族経営の小さな蔵ですから、蔵仕事は父と母の豊子さん、そして真澄さんも一緒に行います。とくに麹造りは、昔ながらのやり方を貫きます。
8_地力に敬意を抱き 新しいひと皿を生み出す
長野県屈指の温泉街、野沢温泉。そのシンボルである外湯「大湯」のほど近くにハウスサンアントンはあります。厨房で腕を振るう後継ぎの片桐健策さんは、アルペンスキーの元全日本チャンピオン。オーストリアを拠点に活動していた選手時代も、幼少の頃から身近にあった味噌、みりん、醤油、鰹節といった発酵調味料を持ち込み、自ら調理し食す毎日だったそう。「食べたもので身体が変わることを、アスリートとして実感してきました」。引退後は料理の道へと進み、修業を経て家業に入ります。
9_麹菌で仕込む大地の味を 凝縮したナチュラルハム
標高1500mの長和町姫木平の別荘地に「ジャンボン・ド・ヒメキ」はあります。開業は2015(平成27)年、オーナーの藤原伸彦さんが作るナチュラルハムは、スペインのハモン・セラーノの製法に倣いつつ、麹菌をまぶすのが特徴です。
清涼な水と寒暖差が醸す 諏訪ならではの味噌造り
丸髙蔵は、清酒「真澄」を醸造する宮坂家19代目の有紹(ありつぐ)が、長年培った醸造技術をもとに事業を広げるため、1916(大正5)年、娘婿の千足(ちたる)とともに高島城、三の丸跡に工場を普請したことにはじまります。
10_「原作者・水上勉と勘六山房」 晩年のアトリエで陶芸家・角りわ子が見た〝水上勉〟という人
映画『土を喰らう十二ヵ月』の原案となった『土を喰ふ日々』は、作家・水上勉さんによるエッセイで、禅寺での修行経験をもとに、軽井沢のアトリエで作る料理や暮らしを綴った1冊です。東京の自宅のほか、故郷の福井と軽井沢にアトリエを持っていた水上氏ですが、心筋梗塞を機に湿気の多い軽井沢から屈指の晴天率を誇る北御牧村(現在の長野県東御市)の勘六山へと移ります。
映画『土を喰らう十二ヵ月』公開情報
喰らうは生きる 食べるは愛する
いっしょのご飯が いちばんうまい
2022年11月11日全国公開。映画『土を喰らう十二ヵ月』中江裕司監督_長野県ロケ地回想
現在Go NAGANOにて公開中のコンテンツ【秋の信州キャンペーン】特集:長野の旅欲!食欲!「いいですね、長野の秋」って、褒めてください』。その冒頭に掲載した映画『土を喰らう十二ヵ月』監督:中江裕司さんと料理担当:土井善晴さんのインタビュー。長野県を舞台に1年半もの時間をかけ製作された今大注目の最新映画。中江裕司監督に“なぜ長野に魅せられたのか”撮影地との出会いと思いをつづっていただきました。
特集:第2章「シニアの上質な旅時間」
「シニアの旅」は簡単ではありません。今までの経験から全ての事象において本物を見極める見識、食へのこだわり、そして時を楽しむ流儀……。シニア世代の旅人は“上級者”なのです。「高級」や「贅沢」への定義も揺るぎない哲学を秘めている……。今特集第2章では、「上質」をテーマに昨今注目されているグランピングでの宿泊、美食と名湯を備えた宿、そして山岳カメラマンが教える晩秋の紅葉スポットをお知らせします。“新しい長野の旅時間”お楽しみください。
1_長野県在住プロ・フォトグラファーが撮る長野県の紅葉
みどり、きいろ、あか、澄み渡る空...。涼やかな風が吹き始める9月から、山岳リゾート長野県には秋の彩りが生まれていきます。光をたくさん浴びた緑の葉が、冬に枯れ落ちる最後の瞬間まで、秋の彩りを浮かべるわずかな情景。はかなくも美しい秋の長野県をひと目見ようと毎年心待ちにしている人も多いはず。そんな長野県の紅葉。今回は、長野県在住のフォトグラファーから、「厳選3作品」というルールで写真を募りました。10年に一度の瞬間、本当は秘密にしておきたいスポットなど、独自の視点で撮影された作品をご紹介します。フォトグラファーが見る秋。ぜひ鑑賞してみてください。
2_大人たちのグランピング案内
「ホテルステイよりも雄大なアウトドア体験」かつ「キャンプよりも手軽な滞在」として人気を集めているグランピング。そこには、どんな魅力があるのでしょうか。
長野県には、コロナ禍を前後して、ゆったり堪能できる“大人のプライベートグランピング”が複数ニューオープン。サウナあり、近隣の温泉スポットあり、星空あり。「グランピング × ととのう」新しいアウトドア体験を提案しています。
そこで今回は、ニューオープンした至福のグランピング施設をピックアップ。温泉付きのホテルも外せませんが、清潔でゆったり楽しめるグランピングの魅力を再発見してみました(『Go NAGANO』編集部)。
3_美食名湯の宿
大切な人と出かける旅は、たくさんの良い思い出を残したいもの。なかでも旅の印象を左右するのが宿泊施設です。
今回は「Go NAGANO」編集部に寄せられた、特別な日に泊まりたいおすすめの宿から北信、中信、東信、南信で4つの宿を厳選しました。日常の喧騒から離れて心行くまで寛ぎのひとときを堪能できる、ワンランク上の宿をご紹介します。
4_まだ見ぬ戸隠へ。善光寺から戸隠神社奥社まで『戸隠古道』をゆく1泊2日祈りの旅
古くから無宗派の寺院として多くの人を受け入れる善光寺。そして山岳密教の聖地としてのルーツを持つ戸隠神社奥社。この歴史遺産2地点を結ぶ『戸隠古道』には、今も名所・旧跡が数多く残されています。“祈りの道”を進む清麗なる時間の中で、私たちが体感した世界とは!?戸隠古道1泊2日修験の旅。
5_絶景鉄道と駅前食堂探訪
山や川を越え、東西南北をつなぐ長野県の沿線。まだ車が今ほどなかった頃から建つ駅舎、田畑や山を映す車窓、川や谷を渡る橋。それぞれの風景の中には、時間や歴史を重ねた記憶があります。あてもなく沿線列車に乗って旅をする。検索もしないで行った先の食堂に立ち寄ってみる。そんな旅を3篇のエッセイでお届けします。撮影は9月初旬。今頃どんな秋色を浮かべているのだろうか。もう一度、旅に出たいと思った。
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