• HOME
  • 豊穣の初秋。長野のワイナリーへ出かけよう。

豊穣の初秋。長野のワイナリーへ出かけよう。

この夏、JR東日本長野支社が県内ワイナリーや鉄道各社と提携開催中「『集え!駅酒パート!ワイン・シードル編』信州 鉄道×酒スタンプラリー」も残りあと10日間。季節はまさにワインブドウの収穫期。各ワイナリーが最もその魅力を放つゴールデンタイムの時。長野ワインの素顔と出会う旅へ。

Top_DSC06726

TOP PHOTO:須坂市・楠わいなりーの畑にて

長野とワインの相思相愛物語

ワインの世界では醸造家や研究者などの間で『テロワール』という言葉を耳にすることがあります。テロワール(Terroir)とはフランス語で「土地」や「土壌」を意味する「テール(terre)」に由来し、ワイン造りや食材の生産において、その土地特有の自然環境が産物の風味や特性に影響を与えることを指します。具体的には、気候、地形、土壌、標高、日照、降雨量、風向きなどの自然条件が含まれます。その用途は主にワインの味わいや品質を語る際に使われ、他の農産物(チーズ、コーヒー、オリーブオイルなど)にも適用されます。テロワールの概念により、同じ品種のブドウでも育てられる場所が違うと味わいが異なるという理由が説明されます。テロワールはあくまでその土地の自然的な要素に焦点を当てており、生産者の技術や文化的背景、料理そのものには直接触れません。したがって、ワインや食材の「生まれ」を語る際に使われる言葉なのです。

少し難解ですが、昨今、私たちがグルメ情報で耳目する『ガストロノミー』という言葉と対比するとテロワールを理解することに役立つかもしれません。ガストロノミーは「食の文化」や「食事にまつわる総合的な芸術」を指します。フランス語の「ガストロノミー」は、料理、食材の選択、調理法、食事のサービス、ワインの選び方、食事とワインのペアリング、テーブルマナー、食を取り巻く歴史・文化・科学など、食に関わる広範な事柄を含んでいます。ガストロノミーは、料理、食材、食事の経験全般に関して使われます。レストランのメニューやシェフの技術、食文化の発展、地域の特産物を用いた料理などがガストロノミーの一部です。ワインもその一要素として含まれますが、ワインと料理のペアリングや、ワインの選び方・提供方法など、より総合的な視点で捉えられます。人間の創造性、文化、技術、芸術的側面に重点を置きます。例えば、ある地域の特産品を使った料理が、その地域の歴史や風土、文化を反映している場合、それを「ガストロノミー」として語ることができます。

テロワールは、自然環境がブドウや農作物に与える影響に焦点を当てます。ワインの味わいがその土地の気候や土壌によってどのように変わるかなど、土地の「生み出す力」に関する概念。
ガストロノミーは、料理や食事の文化全般に焦点を当てます。食材の選択、調理法、料理とワインのペアリング、食文化の歴史や科学的側面など、人間の創造性と文化に関する概念。

テロワールとガストロノミー。本来はその道の専門家が大切に使用する言葉=哲学です。この考え方を理解すると、長野県内に点在するワイナリーが生むワインの個性や特長を知り、今まで以上に楽しむことができるのです。

1_DSC06800
塩尻市・林農園(五一わいん)

土地の風土を生かした繊細で高品質な味わい。少量生産の希少価値を堪能〈楠わいなりー〉

長野県の北部、周囲を美しい山々に囲まれた自然豊かなエリアに位置する須坂市。長野駅から長野電鉄で約30分。須坂駅から公共交通利用で10〜15分程の距離に2004年誕生した『楠わいなりー』。標高おおよそ400〜500m、あたりには住宅も点在する瀟洒な佇まいに意外性と親和性を感じます。この標高の高さが昼夜バランスの良い寒暖差を生みブドウの高品質に寄与しているようです。また、日照時間が長く、降水量が適度であるためブドウ栽培に理想的な気候。この環境が造り手の意思と技術との呼応を生み出している、と地元の美食家たちからも評価されています。

「うちは、土地の風土を生かし、手作業で丁寧に造られたワインが特長です。自然農法に近い形を実施し化学肥料や農薬の使用も必要最小限に抑えています。自然環境に配慮し、ブドウが持つ自然の味を大切にしたワイン造り。少量生産で高品質なワインに、この地域が持つ環境や須坂の伝統的社会文化を繊細に反映できればと考えています。そして来訪されるお客さんとのコミュニケーションや地域との連携を重視して、地元の魅力を発信していきたいですね」

ワイナリーのショップから数分の場所にある畑で収穫間近のブドウの世話をする楠 茂幸さんの言葉がたわわに実るブドウを輝かせていました。

オフィスに戻り隣接するワイン貯蔵庫で長野県のワインの魅力についてお聞きしました。

「長野県には、小規模で家族経営のワイナリーが多く、各生産者が手作業にこだわり、丁寧にブドウを育て、ワインを醸造しています。また、ブドウの栽培から醸造までを一貫して行う「ドメーヌスタイル」を採用するワイナリーも増えています。ワイン生産者たちは、新しい醸造技術の導入や、長野の風土に合わせた独自の栽培方法を研究し、日々品質の向上に努めています。この情熱と技術力が、長野県ワインの魅力をさらに高めています。これらの要素が組み合わさり、長野県のワイン栽培は多様で魅力的なものとなっています。自然環境、風土、技術力、そして生産者たちの情熱が生み出す長野ワインは、日本国内のみならず、海外からも注目を集めています」

楠さんが1本のボトルを手に取り、そのワインの「楽しさ」を教えてくれました。

「このワインは『日滝原(ひたきはら)』という白ワインです。当ワイナリーがある扇状地地域一帯の名称です。高品質のブドウからできたワインですが、さまざまな和食、信州の日常食、地元の食材と相性のいい特長があります。例えば、野沢菜のおやきなどはその代表です。そして信州そばにも」

ワイナリーのショップでスマートフォンにダウンロードしたデジタル駅スタンプアプリ「エキタグ」を使い『日滝原』と、野菜の煮物から肉料理、そしてサーモンなどにも合うという、ワイン通から評価されている赤ワイン『ピノノワール2019』を購入。ショップを出てふと振り返ると、雲間に姿を見せる北信五岳を背景に周囲と溶け込むように建つウッディハウスの姿に、楠ワイナリーのワインの世界観に触れたような幸福感に包まれました。

2_DSC06707

成長したブドウに適切な日照を当てるため葉の剪定をする楠 茂幸さん。品質や害虫に対する耐性が向上。大切な作業です。

3_DSC06686

貯蔵庫に鎮座するワイン樽たち。ただ寝かせるのではなく、澱の沈殿の様子などワインの状態をチェックしながら熟成を見極めます。

4_DSC06751

訪れる人との会話にも配慮した明るくカジュアルな空間構成。右手に設置されたワイン試飲サーバー。わくわく感が高まります。

5_DSC06768

「エキタグ」の受付(タッチ)タグ。アプリ画面のデザイン性がスタイリッシュ。対象の駅やワイナリーを巡りデジタル版スタンプを集めます。

6_DSC06746

来訪者を出迎える楠わいなりーのショップ。リゾート地の別荘エリアに佇むカフェのよう。ワイナリーのセンスやビジョンを感じます。

〈楠わいなりー株式会社〉

〒382-0033 長野県須坂市亀倉123-1
TEL 026-214-8568
10:00−16:00
月曜・火曜・水曜・木曜定休(連休期間の特別営業あり。お知らせをご覧ください。)kusunoki@kusunoki-winery.com

歴史と伝統に育まれた長野ワインを象徴する聖地探訪〈林農園『五一わいん』〉

JR中央本線・塩尻駅から公共交通利用で約10分の位置に広がる林農園(五一わいん)のワイナリー。塩尻市は長野県の中央、標高約700〜800mの高原地帯にあります。北アルプス、中央アルプスに囲まれた扇状地や盆地で形成され、ブドウ栽培に適した地域です。特に塩尻市の土壌は水はけが良くミネラル分が豊富なため、ワインブドウの栽培に適しています。昼夜の寒暖差が大きいため、ブドウの糖度が高まり、風味豊かなワインが生まれると言われています。こうした地勢と気象条件が塩尻市のワインの高い品質を支えています。

林農園は、1911年(明治44年)に創業した長野県でも有数の歴史を持つワイナリー。ワイン造りの歴史は1919年(大正8年)からワイン製造に乗り出しました。第2次世界大戦中では、ワインの醸造で得られる酒石酸(酒石酸カリウムナトリウム=ロッシェル塩)が、イヤホンやマイクなどの圧電素子として利用されたからです。当時、通信機や聴音機の原材料として不可欠な軍需物資のため、ワイン製造が増産された時代もありました。この時に初めて作られたワインが「五一わいん」です。名前の由来は、創業者の林五一氏にちなんでいます。当初は農家ワインとして、地域の農家と連携しながらブドウ栽培を行い、徐々にその品質と技術を磨き上げてきました。長い歴史を持ちながらも、現在も現代のニーズに合わせたワイン造りに取り組んでいます。

ワイナリーを訪れたとき、軽トラックに収穫したブドウを満載した農家のご夫婦を見かけました。

「昔から林農園では地域の農家と協力し、地元のブドウを使ったワイン造りを行っています」

微笑みながら囁く、五一わいん・製造部長の添川一寛さん。広大なワイン畑を回遊できるコースへ。

「五一わいんの製造は自社の畑で栽培するブドウの品質に強くこだわっています。自然環境に配慮した農法を取り入れ、化学肥料や農薬の使用を抑えたブドウ栽培を行っています。このような農法により、ブドウ本来の風味を大切にしたワイン造りをしています。シャルドネ、メルロ、カベルネ・ソーヴィニヨンなどの国際的な品種に加えて、日本固有の品種である「マスカット・ベーリーA」も栽培・醸造しています。特に、塩尻市はメルロの栽培に適している土地であり、五一わいんのメルロは豊かな果実味としっかりした酸味で高く評価されています。さらに、デイリーワインから高品質なプレミアムワインまで、幅広い価格帯とスタイルのワインを提供しており、初心者から上級者まで楽しめるラインナップが揃っています」

ブドウに囲まれながら農園の道路を歩いていると、ブドウの種類によって漂う香りも変化し、ワインツーリズムの醍醐味を味わうことができます。添川さんによると観光客やワイン愛好家に向けてワイナリーツアーやテイスティングイベントを開催し、地域活性化にも貢献しているそうです。農園散策の出発時には園内に育つ各ブドウの位置が記されたマップシートを渡されました。

7_DSC06793

樹齢70年超、メルロの古木と会話する添川一寛さん。

8_DSC06798

園内回遊路には順路案内が設置されています。

9_DSC06804

さまざまなブドウの木の栽培エリアには品種の説明ボートが。目の前のブドウを見ながら勉強できます。

10_DSC06805

ワイナリー入り口へ戻ると早くも収穫・圧搾されたブドウに1頭の蝶が。癒されました。

5分程進んだ回遊路の曲がり角からこちらを見つめるひときわ存在感を醸す1本のブドウの木。

「こちらは樹齢70年を超える古木です。まさに林農園の象徴的存在です。私どもは中規模ワイナリーですが、多様な品種・スタイルのワインを生産しています。このメルロはその出発点です。自然環境に適した農法に取り組みつつ、伝統的な農業の知識も活用しながら時代に合ったワインを生産できるのも、地元農家と連携し地域と密接に協力させていただいている結果だと確信しています」

添川さんは大粒のブドウを実らせた〝鎮守〟の古木をいたわるように撫でながらその心を伝えてくれました。

11_DSC06808

ワイン樽を利活用したワイナリー銘。記憶に残るデザインです。

12_DSC06819

国内外のワインコンクール受賞ワインが入手可能です。

13_DSC06821

当売店限定販売のワインの数々。メルロ柿沢2020を購入しました。

14_DSC06826

売店に隣接する一画には4〜6種類のワインが試飲できるサーバーが置かれています(有料)。

15_トリミング済DSC06814

五一わいんも「『集え!駅酒パート!ワイン・シードル編』信州 鉄道×酒スタンプラリー」対象ワイナリーです。

〈株式会社 林農園 五一わいん製造元〉

〒399-6461長野県塩尻市宗賀1298-170
TEL0263-52-7911
9:00〜16:30
年末年始休
https://www.goichiwine.co.jp/pages/store-visit

今回、北信と中信それぞれに位置するワイナリーを取材してあらためて長野県のワインの奥深さとその魅力を知ることができました。最後に取材後記をお伝えします。

長野県のワイナリーは、標高の高さによる寒暖差、日照時間の多さ、風通しの良い斜面、土壌の多様性、冷涼な気候など、ブドウの生育に最適な環境が整っています。これらの自然環境と、生産者たちの情熱と技術が融合することで、フレッシュでフルーティーな酸味とミネラル感を持つ、繊細でバランスの取れたワインが生み出されるのです。長野県のワインは、その土地特有性をしっかりと反映した、個性豊かな味わいが魅力です。これこそが、長野ワインを体現した素晴らしさと言えます。


取材・撮影・文:Go NAGANO編集部

2024年9月30日(日)まで。今度の連休は「『集え!駅酒パート!ワイン・シードル編』信州 鉄道×酒スタンプラリー」に参加しませんか。

東日本旅客鉄道株式会社長野支社は、長野県ワイン協会、信州ワインバレー構想推進協議会、アルピコ交通株式会社、上田電鉄株式会社、しなの鉄道株式会社、長野電鉄株式会社、東海旅客鉄道株式会社と連携し、駅スタンプとワイナリースタンプを集めると素敵な賞品が当たるスタンプラリー「集え!駅酒パート!ワイン・シードル編」を開催しています。
今回の「集え!駅酒パート!ワイン・シードル編」ではデジタル駅スタンプアプリ「エキタグ」を使用したデジタル版スタンプラリーとして実施しています。

cleanedバナー430×430 3

1.期間
2024年7月19日(金)~ 9月30日(月)

2.スタンプラリー参加方法
■STEP.1 デジタル駅スタンプアプリ「エキタグ」をダウンロード
■STEP.2 スタンプを集める
対象の駅やワイナリー等を巡って、デジタル版スタンプを集めます。
※長野県内の対象駅・対象ワイナリーの詳細はエキタグアプリまたは特設サイトでご確認ください。
※駅スタンプ取得可能時間はエキタグアプリでご確認ください。
■STEP.3 賞品の抽選に自動エントリー
駅スタンプ1つ、ワイナリースタンプ1つ、合計2つのスタンプを収集いただくと、賞品が当たる抽選に自動エントリーされます。
※対象ワイナリーで税込み3,000円以上購入いただき、お一人最大5口(5店舗)まで応募可能です。対象の駅スタンプ1つと5箇所のワイナリースタンプで最大5口の応募となります。
※本キャンペーンへの応募は、賞品がワインやシードルのため20歳以上の方に限ります。

3.抽選
条件を達成された方の中から抽選で17名様に素敵な賞品(ワインやシードル)が当たります。
※賞品内容は選べません。
※当選者にはエキタグアプリのお知らせ機能で当選賞品発送に伴う必要事項の登録サイトをご案内しますので、登録をお願いします。なお、お知らせ配信から2週間以内に登録いただけない場合、当選資格は失効となりますので、予めご了承ください。
※賞品の内容は変更となる場合がございます。
※発送先は日本国内に限ります。

4.特設サイト
企画の詳細や対象ワイナリーの営業情報、対象駅等がご覧いただけます。
名称:「『集え!駅酒パート!ワイン・シードル編』信州 鉄道×酒スタンプラリー」
URL:https://www.jreast.co.jp/nagano/wine-cidre/
※急遽内容が変更となる場合がございます。

閲覧に基づくおすすめ記事

MENU