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国内屈指の英国庭園で優雅に楽しむアフタヌーンティーとイギリスの食文化

爽やかな木漏れ日が揺れ、草木が青々と葉を茂らせる夏。色とりどりの花の間を蜂や蝶が飛び交い、さまざまな鳥の声が聞こえてくるここは、茅野市にある「蓼科高原バラクライングリッシュガーデン」です。
園芸の本場・イギリスの「チェルシーフラワーショー」にも出場する国内屈指の英国式庭園で、園内には、イギリスの伝統的な食事やカフェが楽しめるコンサバトリーカフェが置かれています。コンサバトリーとは、イギリスで発展した建造物のひとつで、壁や屋根がガラス張りのガーデンルームのこと。
緑に囲まれ、優雅にいただく朝食やアフタヌーンティー、その魅力をご紹介します。

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王様の食事、「イングリッシュ・ブレックファースト(English breakfast)」

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イングリッシュ・ブレックファーストとは、イギリスやアイルランドで一般的に食べられている朝食のことです。イギリスには古くから、「朝食は王様のように、昼食は王子のように、夕食は貧民のように食べなさい」という言葉があり、朝一番に摂る食事はとても大切なものとされてきました。おいしい食事は元気の源。たっぷりの紅茶と一緒に、ゆっくり時間をかけて朝食をいただきます。

プレートの上に乗っているのは、厳選されたベーコンとフランク、フライドエッグにトマトやマッシュルームのソテー、ベイクドビーンズ、そしてフレンチトーストとプレーンの2種類のトーストです。イギリスでは、トマトはソテーなどして火を通すのが一般的。これは昔から伝わる知恵のひとつで、体を冷やさないための工夫です。
フレンチトーストは、バラクライングリッシュガーデンのアフタヌーンティも監修している「ケーキの女王」、ハンナ・マイルスさんが監修したもの。柔らかすぎず甘すぎず、しっとりとした食感に優しい甘さが口いっぱい広がります。

朝食の食べ方はシンプルで、まずは好みのパンをカットしたら、上に好きな具材を選んで乗せ、まとめて口に運びます。何種類かの素材をひとつにまとめて味わうのがイギリス流。ひとつのプレートでも、組み合わせ次第でさまざまな味や食感が楽しめるようになっています。

ティーセット

もうひとつ、パンに合わせて用意されているのが、バターとジャムなどのスプレッドです。日本料理でウナギに山椒が合わせられるように、イングリッシュブレックファーストのジャムといえばマーマレードが鉄板。これにはきちんと理由があり、柑橘類の刺激によって胃が活性化され、食欲が増すように考えられているといいます。また一言で「マーマレード」といっても、世界にはさまざまな種類のマーマレードがあります。例えば「マーマレードウィズウイスキー」は、アルコール分をしっかり飛ばし、子どもでも食べられるようにと用意されたとびきり甘いマーマレードのこと。原料となるオレンジの皮のカット方法もいくつかあり、各家庭や店舗ごとにこだわりの一品が作られ、楽しまれています。

バラクライングリッシュガーデンのマーマレードは、強烈な酸味と苦味を持つ「ジャバラ」を使ったマーマレードです。味はプレーンと、アールグレイティーにシトラスピールを加えたフレーバータイプの2種類。こちらもハンナさんとの共同開発で、2024年の世界マーマレード大賞で特別賞を受賞したという名品です。
ジャバラ特有の刺激は残しつつ、しっかりコクのある甘いジャムはトーストにもスコーンにもピッタリ。ショップで販売もされているので、お土産用にもおすすめです。

英国No.1の人気者、「フィッシュアンドチップス」

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イギリス国民のソウルフードとして知られる「フィッシュアンドチップス」。白身魚のフライにポテトフライとマッシュピーが添えられ、ワンプレートになったりボックスに入ったり、新聞紙のような紙に包まれたりして食べられる伝統的なファストフードです。産業革命時代に忙しく働く人たちの昼食として普及した背景があり、一皿でしっかりお腹いっぱいになるボリューム感。イギリス国内には10,000件以上のフィッシュ&チップスのショップがあるといわれていますが、バラクライングリッシュガーデンのフィッシュアンドチップスは、2002年に「National Winners of the Fish & Chip shop of the Year Competition 」に輝いた「Browonsover Fish Bar」という店のレシピが使われています。

秘伝の技はいくつもあるといいますが、サクッとカリッとした軽い食感の衣にホックホクのタラはやみつき必須。国内外を問わずファンが多く、これを1番の目当てにガーデンを訪れる人もいるほどだといいます。こだわりのタラは北海道の漁港から直送。身に脂がのる春から秋にかけては、特におすすめの季節です。

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食べ方は朝食同様、「混ぜて食べる」のが本場流。魚もポテトもマッシュピーも、お皿の上の全てを混ぜ合わせて、モルトビネガーをたっぷりかけていただきます。グリンピースを使ったマッシュピーが程よいアクセントになり、最後までおいしく食べられます。
もちろんナイフとフォークで魚を切り分け、豆やポテトと合わせて少しずつ口に運ぶのでもOK。モルトビネガーの有り無しで味わいが全く変わるので、少しづつ味変しながら食べてみるのも楽しいかもしれません。メニューはテイクアウトにも対応しています。

季節を感じるラグジュアリーな「アフタヌーンティーセット」

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紅茶が入った大きめポットと、まるで絵本の世界から飛び出てきたような可愛らしい3段のアフタヌーンティーセット。発祥はイギリスのカントリーハウスといわれていて、ランチからディナーまでの間をつなぐ軽食として、貴族の間で親しまれてきました。楽しむのはおいしさだけではなく、空間の設えやおしゃべりなど、その時間の全て。バラクライングリッシュガーデンでは、ジャムやフレンチトーストなどを監修しているハンナ・マイルさんと一緒に、たくさんのストーリーを詰め込んだ季節のアフタヌーンティーを提供しています。

こだわっているのは見た目の可愛さと、四季を感じられる色使い。ゆっくり時間をかけて残さず食べきれる量もポイントですが、1番はハンドメイドであることが欠かせません。イギリスのお菓子の本質は旬の素材を生かす「お母さんの手作り」。日本でいうところの草餅のように素朴で温かみがあり、自然な味わいが魅力です。決して特別なものではなく、でも食べたときにたくさんの質感や食感、味や感動が楽しめる。そんな計算し尽くされたティーセットなのです。

アフタヌーンティープレート

香り高いバラの季節が終わり、7月8日からは「サマーベリーアフタヌーンティーセット」がはじまります。1段目は、イギリスのウェールズ産のオーガニックチェダーチーズや、厳選のリブロースハム、長く愛され続けるキューカンバーにアトランティックサーモンなど、バラクラ定番のサンドウィッチが並びます。程よい塩気にふわふわのパン、片手でいただけるコンパクトサイズながら存在感は抜群です。
2段目はふんわり甘いバラクラスコーンに、クロテッドクリームと自家製のジャムを添えて。ぎゅっと酸っぱく、可愛らしいイエローの見た目も素敵なレモンファッジは、このプレートのために用意されたオリジナルの一品です。
そしてお楽しみ、スイーツが乗った3段目は、ブルーベリーとミントの2種類のクッキーにレモンのクランブルが乗ったブルーベリーケーキ。こちらのケーキはシングルクリームをたっぷりかけていただきます。ベリーがたっぷり入ったサマープディングは、ひんやり冷たい英国の定番デザート。甘酸っぱいイチゴのプチシューも加わり、暑い夏でも爽やかに食べられる、とっておきのアフタヌーンティーが登場です。

サクッと軽い初夏の味、「イートン・メス」

イートンメス

イートン・メスは、夏イチゴがおいしい6月末から7月にかけて登場するデザートです。イギリスでは、国際的なテニス大会「ウィンブルドン選手権」が開催される時期でもあり、テニスと合わせてイチゴを楽しむ伝統もあるのだとか。
イートンメスの「イートン」は、イギリスの名門パブリックスクール「イートン校」、「メス(mess)」は「めちゃくちゃ」や「混乱」を意味する言葉です。学期末のテストが終わり、サマーバケーションが始まる楽しい季節。そんなソワソワ・ワクワクも込められたデザートなのかもしれません。

バラクライングリッシュガーデンでは、メレンゲとイチゴ、泡立てた生クリームのシンプルなレシピで、ウィンブルドンの人気デザートを再現しています。茅野市で栽培された甘酸っぱい夏イチゴがアクセント。食べ方はもちろん名前のままに、イチゴとクリームとメレンゲを「めちゃくちゃ」に混ぜてしまうのがイギリス流です。
ところどころに残るメレンゲの食感とイチゴの酸味や甘味、クリームのまろやかさは、一度食べたらクセになること間違いありません。


まだバラクライングリッシュガーデンが開かれるより前、創業者の山田方平は「ものづくりは素材が大事」という思想から、何度もヨーロッパに足を運んでいました。

「英国庭園」や「アフタヌーンティー」などイギリス文化に触れたのもこの時期で、1988年に訪れた「チェルシー・フィジック・ガーデン」では、クリームティー(スコーンとクロテッドクリーム、ジャムと紅茶のセット)をいただくティータイムに参加する機会に恵まれました。不揃いなカップや食器を片手に、各々が芝やベンチでくつろぐカジュアルな時間。初めて体験した山田さんたちは、ゆっくり植物を愛でながら会話を楽しみ「これこそがイングリッシュガーデンであり、英国の文化だ」と、その奥深さに感銘を受けたといいます。帰国後は「ティーが楽しめるガーデンを作りたい」という思いのもと、バラクライングリッシュガーデンを開園。今では世界各国から人が訪れる、屈指の英国庭園となりました。

これからはじまる夏本番、記憶や経験が詰まった唯一無二の空間で、本場さながらの優雅なひとときを過ごしてみてはいかがでしょう。

Information

住所:長野県茅野市北山栗平5047
TEL:0266-77-2019
開園時間:9:00〜18:00
定休日:無
入園料:大人1,000円/中学生以下無料
HP:https://barakura.co.jp/
※開園時間及び入園料は季節によって変動します

撮影:五味 貴志 取材・文:間藤 まりの

 

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