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『HIGH RAIL 1375』で巡る小海線沿線、“思い立ったが吉日”酒蔵・味噌蔵・星空ロマン旅。『星空列車』編。

春。友人が転勤することになった。何か嫌な思いをしたり、悲しいことが起きてしまったとき。モヤモヤ、トゲトゲ、ヒリヒリする気持ちや感情を聞いてもらったり聞いたり。そんな仲だった。だからといって特別な化学反応が起きるわけでもなく、互いにカウンセラーの役目を担っていたのかもしれない……そんな関係性だった。「ねえ、今度の週末。“星空列車”に乗ってみない」と誘ってみた。「何それ?」とばかにしたような顔。でも目にはいつもと違う光が浮かんでいた。そして僕と君“星空列車”に乗り込んだ。

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JR小海線・小淵沢駅18時17分発−野辺山駅着18時53分。わずか36分間のローカル線旅。思い出の濃度は時間の長短に左右されない。それが“旅の方程式”。

JR小海線を走る『HIGH RAIL 星空』。終点・小諸駅には21時2分着。2両編成。1号車にはシングル、ペア、BOX、2号車にはリクライニング、計4タイプのシートが設置されている。そして物販カウンター(1号車)、『ギャラリー HIGH RAIL』(2号車)も構成。

JR小淵沢駅の連絡階段を下りホームへ行くと、すでに僕が“星空列車”と呼んでいる『HIGH RAIL 星空』が入線していた。あと少しで4月というのに、標高886.7mの小淵沢駅あたりは、まだ冬の終わりのような冷たい空気に包まれている。「寒いね、大丈夫?」と聞く。「大丈夫だよ。車内はあったかいはずだから早く入ろうよ」と君は言った。何気なく顔をのぞくと目が潤んでいる。寒いのは僕だけじゃなかった。乗車口へ向かうとき、ふと空を見上げた。とても深い藍色の壁に白色の薄いレースを広げたような夜空に、ほんの数個だけ、星が光っていた。

小海線は“星空の聖地”と呼ばれるフィールドを走る。「1375」はJR線標高最高地点1375mをシンボルとした。「標高の高さ=HIGH」と「線路=RAIL」ドッキング。シートには四季の星々をデザインしている。

思ったとおり車内はあたたかかった。外の夜空色より明るい青色のシートに黄色のヘッドカバー、そしてドアも同色に。色彩のアレンジが好きだ。「ウォールのイラストもかわいいね。キッズルームみたい」と君が笑う。深く体を包むシートカバーに散りばめられた星のモチーフを見て僕たちはもう一度笑った。

JRE MALL「ネットでエキナカ」で『HIGH RAIL 1375』のスペシャルな弁当を予約。乗車当日、車内の物販カウンターで受け取れる。贅沢な満足感に包まれる。

君は「おなかすいたね。お弁当届いているかな。出発前に受け取ってくる。飲み物系は?」と言いながら、後ろの1号車へ向かった。右手と左手に一つずつ弁当をぶら下げ「ちゃんと届いてたよ。制服を着たスタッフさんの対応がとても良かった。カウンターというよりコンシェルジュの受付みたい」。嬉しそうだった。

袋から弁当を取り出しながら、外を見ると途中停車する駅の明かりに反射してキラリと光る雨が見えた。「今夜星空はむずかしいかもね」とため息をつく。「ねえ、これ見てよ。めっちゃ凝ってない。すごいアイディア。どんな人が考えたんだろう。“鉄オタ”の人かな。私、このパッケージお持ち帰りします」。

二人が話をするようになって、僕がネガティブなことを口にすると、君は否定も肯定もせず、話題を変えた。お笑い芸人やオモシロイ著名人、もちろん会社の先輩や上司が気付いていない強めのクセなんかも。そのつど、僕は救われた。

八ヶ岳連峰と山麓の高原を背景に、JR線最高標高地点に建つ木製の標柱の画像と『HIGH RAIL 1375』の模型がジオラマのようにデザインされたパッケージ。まさに“特製弁当”。

『HIGH RAIL 星空』乗客限定販売。1,300円(税込)乗車4日前23時までに予約が必要。メインは信州牛と信州サーモンのおむすび。

コロナ禍の影響で車内での食事は何年ぶりだろう。“ハレの日”な気分。

鉄道旅の数ある醍醐味の中でも駅弁は最高ランクだと思っている。旅行先、到着するまでの道中。それぞれの土地の味を楽しむことができる。駅弁は旅のカルチャーだ。 「このサーモンのおにぎり、美味しいね」と君は言った。「ねえ、おぼえてる。あの八ヶ岳登山のとき食べたおにぎり。5人分のおにぎりを2種類ずつ。つくるの大変だったの、思い出した」。あの日も列車の中だった。そして君がつくってくれたおにぎりはとてもおいしかった。中身は確か鮭!? 懐かしい。そうか、君と列車に乗るのも2回目。君とおにぎりを食べるのも2度目。おにぎりと列車は、僕の中にある旅の記憶を呼び起こす装置だ。もうすぐ野辺山駅に到着する。いつの間にか、窓ガラスに付着していた大粒の水滴が消えていた。

沿線の「星空案内人(公認)」による星空説明会の開催(車内放送)。パンフレットを逆さまに掲げるのは、実際の星座配置に沿ってわかりやすく説明するため。

2号車小諸側先頭に造られた「ギャラリーHIGH RAIL」壁面の本棚には天文関連の書籍(写真集など)を陳列。そして天井部分、ドーム状スクリーンに映し出される星座や星空。列車の中に出現したプラネタリウムみたいだ。

「ギャラリーHIGH RAIL」のドーム型モニターの下に立ち頭上を見つめる。星空に浮かぶ星座を追いかけ集中していると、ふと、今自分たちがどこにいるのか!? 一瞬錯覚してしまう。ローカル線を走る列車内の一角に出現する宇宙空間。素敵だ。

18時53分。僕たちを乗せた『HIGH RAIL 星空』がJR小海線・野辺山駅に到着した。一つ前の清里駅で線路内に侵入したシカが立ち去るのを待つため数分出発が遅れたけれど、僕たちはシカが無事帰宅できるよう祈った。

『HIGH RAIL 星空』は野辺山駅に約50分間停車した後、終点の小諸駅へ向かう。この50分間、乗客たちは特製弁当を食べたり、僕たちが座る2号車リクライニングシート席の目の前にある「ギャラリーHIGH RAIL」で星に関する書籍を読んだり、そして天井に設置されたプラネタリウムみたいなドーム型のモニターに映し出された星座や流星群に想いを馳せたりしながら過ごす。もちろん外に出て、“聖地・野辺山”の満天の星空に驚き、うっとりする時間選択も可能だ。天候と星たちの機嫌が良ければ「星空観察会」が開催されることになっている。けれど今夜は残念ながら、星たちはおむずかりのご様子。こればかりはどうしようもない。

僕たちは車内にいた。

僕たちはこの4月からの仕事のことや、それぞれの生活について話をした。僕の不安ベクトルとは真逆で、君はいつものように計画的で楽観的だった。 「誘ってくれてありがとう。楽しかった、っていうか、今も楽しい。私、列車での旅行って、ほんと、久しぶりだったの。だから、嬉しかった。それにこの列車、不思議。車両全部が“星”なんだもん。この空間がどこかの建物の中にあったら、そんなに驚かなかったかもね。でも星空で超有名な場所を走る列車の中、外も星、中も星。しかも動いてるんだから。私、さっき駅スタンプとこの列車のスタンプ、押しちゃった」と言いながら、君は小さなダイアリーの1ページを見せてくれた。ピンク色に近い朱赤色のインクが何かを語っていた。

「いい思い出」と君がつぶやいた。「ありがとう」と僕は伝えた。

“旅の続きは、“星空ホテル”にて。

〈八ヶ岳グレイスホテル〉の天空は巨大な星空ドームになる。(写真提供:八ヶ岳グレイスホテル)。

室内からも、庭からでも、さえぎるものはない。そこに星が待っている。(写真提供:八ヶ岳グレイスホテル)。

『HIGH RAIL 星空』の旅から数日後。君が送ってくれたメールに「次回はここに泊まろうよ」と書いていたホテル。野辺山駅から車で約5分の高原に立つ〈八ヶ岳グレイスホテル〉。『HIGH RAIL 星空』に乗って、星空空間を移動し、その旅の続きは“星空ホテル”で、と。〈八ヶ岳グレイスホテル〉では星空鑑賞のコンテンツがとても充実している。たとえ漆黒の天空となったとしても館内にあるプラネタリウムで「星ソムリエ」による鑑賞会が企画されている。”食事が素敵すぎる”と、君は強調した。そして、文面の最後、3行分の空間の下に「星には人を素直にさせるパワーがあります」という小さな文字を見つけた。


〈八ヶ岳グレイスホテル〉
長野県南佐久郡南牧村野辺山217-1
0267-91-9515
https://www.y-grace.com

取材・撮影・文:Go NAGANO編集部(佐藤)、リポート:かん、加藤知哉

【INFORMATION】
*『HIGH RAIL 1375』に関する詳しい情報は下記サイトをご参照ください。
https://www.jreast.co.jp/railway/joyful/highrail1375.html
*車内でのプラネタリウム上映は中止となる場合があります。

*JRE MALL「ネットでエキナカ」で特製弁当の事前予約に関しては下記サイトをご参照ください。
https://www.jreast.co.jp/nagano/highrail/tokuseibento/

「鉄道で巡る 信州 日本酒・甘酒スタンプラリー」応募用紙、そのものが旅の記念であり記憶。

NEWS!『集え!駅酒(えきしゅ)パート!』第3弾「鉄道で巡る 信州 日本酒・甘酒スタンプラリー」

現在、JR東日本長野支社では長野県内10エリアを舞台に『集え!駅酒パート!』第3弾「鉄道で巡る 信州 日本酒・甘酒スタンプラリー」を開催中。
*詳しくは下記インフォメーションをご覧ください。

『集え!駅酒パート!』第3弾「鉄道で巡る 信州 日本酒・甘酒スタンプラリー」
第3弾となる今回は、日本酒に加え甘酒もお楽しみいただけるスタンプラリーにパワーアップしました!
信州の恵まれた気候風土により育まれた酒米から造られる日本酒や美と健康にも効果的な甘酒を列車旅と共にご堪能ください♪
鉄道と日本酒や甘酒を楽しむスタンプラリーにぜひご参加ください♪

開催期間:2023年1月20日(金)~2023年6月30日(金)

特設サイト:https://www.jreast.co.jp/nagano/ekisyupart/

【参加方法】
1 専用パンフレットを入手
参加鉄道会社の主な駅またはスタンプラリー対象の酒蔵・味噌蔵でスタンプ台紙(応募はがき)がついた専用パンフレットを入手します。
※専用パンフレットは特設サイトからもダウンロードいただけます。

2 対象の駅と酒蔵・味噌蔵でスタンプを集める
専用パンフレットに掲載されている駅で、駅スタンプを1個押印します。
各酒蔵・味噌蔵では、税込1,000円以上お買い上げいただくとスタンプ台紙にスタンプを1個押印します。
駅スタンプ1個、酒蔵又は味噌蔵スタンプ2個の合計3個を集めると、以下の各賞に応募いただけます。

(1)信州の日本酒賞:日本酒2本または日本酒1本・甘酒1本
(2)信州の甘酒・発酵食品賞:甘酒・味噌など
(3)信州の農産物賞:6種類のなめ茸が楽しめるなめ茸セット
※同じ酒蔵・味噌蔵で税込2,000円以上お買い上げの場合でも、スタンプは1個のみ押印となります。
※1枚のスタンプ台紙(応募はがき)に同一の酒蔵・味噌蔵スタンプを押印したはがきは、無効となります。
※1枚のスタンプ台紙(応募はがき)で応募できるのは1つの賞のみです。
※各酒蔵・味噌蔵の定休日、営業時間等は特設サイトでご確認ください。

3 応募方法
スタンプを集めたら、スタンプ台紙(応募はがき)に必要事項を記入いただき、63円切手を貼りポストに投函してください。

4 応募期間
2023年7月10日(月)まで ※2023年7月10日(月)事務局必着

【当選者数】
各賞に応募いただいた方の中から抽選で合計128名様に以下の賞品が当たります。
(1)信州の日本酒賞:53名様
(2)信州の甘酒・発酵食品賞:11名様
(3)信州の農産物賞:64名様
※「信州の日本酒賞」へのご応募は、20歳以上の方に限ります。
※当選者の発表は賞品の発送をもってかえさせていただきます。
※各賞の内容は変更となる場合がございます。
※各賞の商品内容は選べません。

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