美しい自然を望む温泉や絶景の雲海を眺める「ソラテラス」が人気を呼んでいる日本屈指のリゾート北志賀高原。その麓にある須賀川地区は、美しい白い花を咲かせるそばの里として親しまれています。
この地で古くから、ハレの日を飾る郷土料理として愛されてきた「須賀川そば(すがかわ そば)」を知っていますか?
コシとのどごしにうまい!のひと言
そのヒミツは
「オヤマボクチ」にあり!?
初めて耳にする人も多いでしょう、はじめまして「須賀川そば」。〝コシとのどごしが抜群で、地粉を使ったそば〟と聞くと「他の地域にもあるのでは?」と思うことでしょう。しかし、他のそばとは違うおいしさのヒミツは、つなぎにあります。
そばのつなぎによく使われるのは小麦や卵ですが、須賀川そばのつなぎは「オヤマボクチ」というヤマゴボウの葉の繊維です。と聞くと、そば粉だけで仕上げた「十割そば」の方がやっぱり味わいたいと思う人もいるでしょう。もちろん、十割そばに丹精を込めたそば店も長野県のおすすめですが、無味無臭のオヤマボクチなら、そばの風味をそのままに、コシとのどごしを引き立てるので、「十割そばの風味+コシ+のどごし」と、そばのおいしさを余すことなく堪能できるのです。
そばのファーストフード
無形民俗文化財「はやそば」とは
切れ切れのそばに「もう少しコシとのどごしがほしかった...」と思ったこと、一度はありませんか。そんな人にとって、須賀川そばならひと口にずるーっと味わいきれて、鼻を抜けるそばの香りに思わず、うまい! のひと言があふれること間違いなしです。
さて、そんな須賀川そばのそば粉を使った郷土料理があります。それが「はやそば」です。
一見すると「そばがき?」とも思えますが、はやそばはひと味違います。そばの香りと一緒に〝しゃきほくっ〟と歯ざわりよく広がる千切り大根にそば粉をからめて味わうものです。
もともとは、簡単にすぐに作れることから、農作業の合間に親しまれていた「はやそば」。今では長野県の無形民俗文化財に指定されているほど、郷土料理を代表するその味は、北志賀高原のそば店の多くで味わえるほか、だし汁による違いが楽しめるのも魅力です。
まるでおやき?
そば粉を使った「法印焼き」とは
長野県の郷土料理と言えば、「おやき」を思い浮かべる人も多いでしょう。しかし北志賀高原には、おやきに負けないほど、地元の人に愛されてきた手料理があります。それがこちらの「法印焼き」です。
もちろん生地に使われるのは、オヤマボクチを使った須賀川そばのそば粉。もっちりした食感に合わせて、具材にあんこや野沢菜、切り干し大根などが使われ、さまざまな味わいを楽しめる田舎のおやつとして親しまれてきました。
ちなみに、「法印焼き」という名前の由来、気になりませんか?
由来は地元に伝わるある民話から。その民話とは、須賀川地区のあちらこちらの家でそばを堪能したそば好きの僧・法印さんが、お礼に村人たちの病気を治したという物語『法印の林』。今でも須賀川地区では、法印さんにまつわる祠(ほこら)にお供えをすると病気が治るご利益があると言われ、民話ととも法印焼きが愛され続けているのです。
そんな郷土の味、法印焼きを求めて、須賀川地区で語られる地元の人のみぞ知る民話を楽しんでみるのも、北志賀高原を旅する目的におすすめです。
なぜ? 愛され続ける
「須賀川そば」の歴史と文化
さて、ここまで須賀川そばの魅力をご紹介してきましたが、最後に歴史についてもまとめてご紹介します。
山ノ内町須賀川地区一帯の「北志賀高原」は、長野県でも有数の豪雪地帯。標高600mから800mの冷涼なエリアなので、朝夕に霜が降り、土地の水はけがよいことから、古くからそばの栽培が盛んに行われてきました。その歴史は長く、室町時代に遡ります。現在は年間12トンほどのそばが生産され、この地域で守られている在来種をはじめ「信濃1号」の栽培も。そのほとんどが地産地消され、9月中旬には一帯がそばの花で彩られます。
この季節には、北志賀高原観光協会を中心に、さまざまなイベントやおいしいくだもの狩りも盛んに開かれるほか、雲海を望む展望台「ソラテラス」や絶景を満喫できる温泉もあるので、絶景と温泉に癒されたら、おいしい「須賀川そば」も、ぜひご堪能あれ。
<旅のご相談は>
山ノ内町観光連盟 TEL:0269-33-2138
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