土用丑の日は冬にもある? 脂ののった冬が絶品「寒のうなぎ」
諏訪湖畔を中心に数多く集まるうなぎ店。夏の土用丑の日にうなぎを食べるのが一般的ですが、冬のうなぎは脂や栄養を蓄えることでおいしさを増します。まさに今が旬のうなぎ、諏訪地方で受け継がれた伝統の味を味わってみませんか。
なぜ夏の土用丑の日にうなぎを食べる?
土用丑の日と聞くと多くの人が夏を思い浮かべるのではないでしょうか。実はこの土用丑の日、夏だけではありません。春夏秋冬すべての季節にあるのですが、夏の土用丑の日にうなぎを食べるという風習から、やはり夏が知られています。ではなぜ夏にうなぎを食べるようになったのでしょう。
諸説ありますが、江戸時代末期に学者でもあり発明家でもあった平賀源内が広めたという説が有力です。当時は庶民的な食べ物だったうなぎ。そのこってりした味わいのため、夏の売れ行きがよくありませんでした。そこで、「夏の土用丑の日にうなぎを食べれば暑い夏を乗り切るのに良い!」と宣伝をし、それがすっかり定着したというのです。知恵者として知られていた平賀源内ですが、その宣伝効果が200年以上も続くとは思っていなかったことでしょう。
うなぎの旬、実は冬にあった
今や夏の食の定番ともいえるうなぎ。しかし、諏訪湖周辺に位置する諏訪地域(諏訪市・下諏訪町・岡谷市)では違います。うなぎといえば、冬。冬の土用丑の日が近づくと、地元のスーパーも、川魚屋も、もちろんうなぎ店も、こぞってうなぎ。なかでも岡谷市では「寒の土用の丑の日」と銘打って売り出しています。「寒のうなぎ」こそ、一度は食べたい、食べてほしいうなぎなのです。
なぜなら、うなぎの栄養や脂は、寒い冬こそ蓄えられるから。そもそもうなぎは、一般的に魚や肉に不足しがちなビタミン群をたっぷりと含むほか、ミネラル、カルシウムをはじめ数多くの栄養素があり、また脂質には必須脂肪酸といわれるDHA、EPAを含んでいます。つかもうとしても滑り落ちてしまうヌルッとした体の表面には、胃腸の粘膜を保護する成分も含まれています。そんな豊富な栄養分が冬に一層高まると言われれば、寒のうなぎ、食してみたくなりませんか?
諏訪地域に根付くうなぎ文化
しかし、内陸の諏訪地域でうなぎが獲れるのでしょうか? 誰もが知るうなぎの名産地といえば浜名湖です。その昔、静岡の浜名湖・天竜川では天然うなぎがたくさん獲れ、庶民の味として親しまれていました。天竜川は長野県から愛知県、静岡県を経て太平洋へ流れ込みます。200km以上にもおよぶその流れは古くから人々の生活を支え、時には氾濫を繰り返し、荒ぶる自然への畏敬の念を込めて天竜川と呼ばれるようになったとか。
さて、その天竜川の源は? そう、諏訪湖、現在の釜口水門なのです。古くから淡水漁業が盛んだった諏訪湖ではしじみも養殖され、そうした餌が豊富なこの地に、天竜川からうなぎが多く渡ってきたのです。そうして諏訪湖でたくさんのうなぎが獲れ、諏訪地域にうなぎ文化が根付くこととなりました。
受け継がれる伝統
諏訪地域には現在も多くのうなぎ店や川魚店があり、昔からの伝統を受け継ぎ、それぞれの店独自の個性を生かしたうなぎ料理が提供されています。パリっと焼かれたいわゆる関西風、ふんわりやわらかな関東風、どちらも楽しめるのも東西の文化が交わる諏訪地域のうなぎ料理の特徴です。地域の人はぞれぞれにお気に入りのうなぎ店や川魚店があり、当然、その評価もシビア。だからこそ、各店がしのぎを削り、おいしいうなぎを提供しています。
夏のうなぎと冬のうなぎを食べ比べてみたり、店によって異なる味付けや焼き方など、ぜひあなた好みのうなぎ料理を見つけてみるのも通な楽しみ方ではないでしょうか。
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