ただいま、クラフトビール業界は第三のブーム到来!
1994年の酒税法改正により、全国各地で地ビール醸造が広まった「第一次地ビールブーム」。当時はクラフトビールではなく「地ビール」とよばれ、2000年までの約5年間で300以上の醸造所(ブルワリー)が設立されました。しかし、まちおこしとしての側面が強く、価格と品質が合わないなどの要因により、ブームは下火に。その中で実力ある本物志向のブルワリーが生き残り、さらに国内外で研鑽を積んだ新たなつくり手が地域ごとの特色を打ち出すことで、2014年頃から醸造所の数は再び拡大に転じました。大手ビールメーカーもクラフトビール業界に参入。「第二次地ビールブーム」が到来し、味や品質は格段に上がったのです。そして、職人が手間ひまかけてつくる工芸品=クラフトのようであることから「クラフトビール」と呼ばれるようになりました。
2018年にはさらなる酒税法改正でビールの定義が変わり、果実やハーブなどの副原料を添加しても、発泡酒ではなくビールと認められるようになりました。それにより、さまざまな素材をビールの味や香りづけに使えるようになり、地域色豊かなビールが誕生。全国各地で小規模醸造所であるマイクロブルワリーが生まれ、現在は「第三次地ビールブーム」として盛り上がりを見せています。
自然豊かでビール造りに適した長野県の環境
長野県には現在19のブルワリーがあり、その数は全国5位。2018年だけでも新たに4つのブルワリーが誕生しました。また、2019年10月には世界五大ビール審査会のひとつに数えられる「International Beer Cup 2019」が松本市で開催。背景のひとつには、長野県で数々のビールイベントが開かれ、クラフトビールに関連する企業が多いことがあったようです。
というのも、長野県は山々からの水に恵まれ、ビール造りには最適な環境。さらに長野県の冷涼な気候もビールの重要な原料であるホップ栽培に適しており、現在、国産ホップ種として一番多く栽培されている「信州早生」は大正時代に長野県で誕生しています。昭和初期まで長野県は日本のホップ生産量の大半を占め、国産ビール醸造の重要拠点とされていました。次第に輸入ホップに押され、長野県でのホップ栽培は一時終息しましたが、いま、クラフトビールの盛り上がりにより、県内で再びホップ生産をはじめる企業が現れています。
長野県発の個性際立つブルワリー4選
クラフトビールシーンを牽引する「ヤッホーブルーイング」
個性的なクラフトビールを造るブルワリーが多くあることでも知られる長野県のなかでも高い知名度と人気を誇るのが、日本のクラフトビール市場を牽引してきた軽井沢町の「ヤッホーブルーイング」。1997年に始動し、ビール市場にバラエティ豊かな味わいを提供して、新たなビール文化を創出してきました。創業時から醸造している看板商品「よなよなエール」はコンビニにも流通し、日本一有名なクラフトビールといっても過言ではありません。このほか、女性向けの「水曜日のネコ」や、苦味が強烈な「インドの青鬼」など、多様な個性派ビールを全国に届けています。醸造所では夏期限定で「よなよなエール 大人の醸造所見学ツアー」も開催(要予約)。クラフトビールの試飲・購入やオリジナルグッズの購入も可能です。
老舗酒蔵が営む「志賀高原ビール」
地ビールブーム低迷期の2004年に醸造を開始し、個性あふれるビール造りで多くのファンを魅了し続けているのが「志賀高原ビール」。ホップの強烈な香りと苦み、高いアルコール度数がクセになるIPA(インディア・ペールエール)という人気カテゴリーのクラフトビールを全国でいち早く醸造し、一気に人気ブルワリーとなりました。自社畑でホップ栽培も行うほか、もともと200年以上続く老舗酒蔵でもあることから、酒米を使ったビールなどユニークなものも醸造。少量多品種の限定ビールも次々とリリースし、大手メーカーとの差別化を図ります。
醸造所に隣接する酒蔵の一部はギャラリー「酒蔵美術館ギャラリー玉村本店」となっています。その入り口では生ビール2種の有料テイスティングや清酒の無料試飲が可能。売店もあり、定番から限定品までボトルを購入できます。さらに、醸造所から徒歩15分ほどの場所にある上林(かんばやし)温泉には、志賀高原ビールの直営のバー&レストラン「THE FARMHOUSE(ファームハウス)」も。志賀高原ゆかりの文人墨客の資料館「志賀山文庫」を改修した建物で、常時、定番・準定番・限定品が13タップつながっていて、地元産の食材にこだわった料理とともに楽しめます。
温泉とビールの「OH! LA! HO BEER」
東御市で1996年からビールを製造している「OH! LA! HO BEER(オラホビール)」は、醸造所に温泉施設「湯楽里館」 や「ワイン&ビアミュージアム」を併設しており、観光とビールの両方を楽しめます。ちなみに「オラホ」とは「私たち」「私たちの地域」という意味の方言。2010年からはホップ栽培にも取り組み、独自のビール造りで地域の魅力向上に貢献しています。
看板商品は通常の倍以上のホップを使用し、強烈なホップアロマとビターな味わいが特徴の「キャプテンクロウ エクストラペールエール」と、勝率9割を誇った江戸時代の東御市出身力士・雷電為右衛門の禁じ手「閂(かんぬき)」の名を冠し、柑橘系の香りが魅力の新定番「雷電カンヌキIPA」。ほかに定番ビールのゴールデンエール、アンバーエール、ケルシュ、ペールエールと、春夏秋冬ごとに仕込みのスタイルが変わる季節仕込みの「ビエール・ド・雷電」を醸造しています。
マイクロブルワリーの「In a daze Brewing」
近年誕生した小資本の後発組も、総じてレベルが高いマイクロブルワリーばかり。2018年に設立した新進ブルワリー「In a daze Brewing(イナデイズ ブルーイング)」は、女性醸造家が大学時代を過ごした長野県南部の伊那市にほれ込み、地元、愛知県のブルワリーでの修業を経てオープンしました。
定番銘柄は、伊那谷の米を使ったスペシャルビターな味わいの「伊那日和ペールエール」と、同じく伊那谷の米を使い飲み応えのある「権兵衛IPA」、三河の塩がアクセントの「三州IPA」、柑橘ですっきり仕上げた「くらしSession Ale」の4種類。伊那路と木曽路を結ぶ米の道「権兵衛峠」や、かつて愛知県から塩や海産物を内陸に運ぶために使われた「三州街道」など、伊那谷にまつわる地名が商品名に由来しています。「くらしSession Ale」の「くらし」とは伊那谷の方言で「おいで」という意味。併設のタップルームでは醸造家自ら焼く石窯ピザも提供し、好評を博しています。
長野県内のクラフトビールイベントに行こう!
県内では各地でクラフトビールのイベントも開催されています。2014年から開催される「クラフトビールフェスティバルin松本」は、国宝松本城と北アルプスの山々を望みながらクラフトビールを楽しめるイベント。この開催をきっかけに「松本産のビールを造ろう」というムードが高まり、2016年には地元の有志により「松本ブルワリー」が設立されました。市内には2軒のタップルームもあります。
北アルプスのふもと、白馬村で6月に開催される「クラフトビアマルシェ白馬」には、長野県内を中心としたクラフトビールのブルワリーが集結。地元からは2014年に立ち上がった「Hakuba Brewing Campany」が参加しています。
さらに、志賀高原ビールはクラフトビールと音楽の祭典「SNOW MONKEY BEER LIVE」を2012年から毎年3月に開催。国内トップレベルのクラフトビールのブルワリーと多彩なジャンルのアーティストが集結します。
次から次へとバラエティ豊かなビールが生まれ、百花繚乱な長野県のクラフトビール市場。ビアフェスで各ブルワリーの味の違いを楽しみ、お気に入りの1杯を見つけてみませんか。
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